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カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

めぞん一刻脚本67話:梅酒がもたらす愛情

#めぞん一刻 めぞん一刻 エースをねらえ! カイジ コボちゃん 家なき子 高屋敷英夫

めぞん一刻は、アパート「一刻館」に住む青年・五代と、一刻館管理人で未亡人・響子との、山あり谷ありのラブコメ(原作・高橋留美子先生)。高屋敷氏は最終シリーズ構成と脚本を担当している。監督(最終シリーズ)は吉永尚之氏。

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開幕から美味しそうな飲食物(特徴)。五代の祖母、ゆかり婆ちゃん手製の梅酒。丁寧な描写でとても美味しそう。また、特徴である、意味深な梅酒のアップが入り、梅酒=重要キャラ(特徴)であることを示している。

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ゆかり婆ちゃんは、そろそろ就職活動をしなければならない五代(婆ちゃんにとっては裕作だが、五代と表記する)が気になっていた。

一方、五代と友達は、喫茶店で就職活動について話していた。ここでも意味深な吸い殻のアップが出てきて、半端ない煙草描写(特徴)。カイジ脚本と比較。しかもこの煙草描写はアニオリである。こういった場面で、絵面で高屋敷氏脚本とわかるのが毎度面白い。

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ところで、五代の友達の一人を、カイジのナレーション役である立木文彦氏が演じている。また、五代=カイジのおっちゃん役である二又一成氏と合わせると、カイジの声優が揃い踏み。

話を戻すと、五代達の通う大学はいわゆるFランであるため、五代の友達は就職活動に苦戦。まだ就職活動を始めていない五代に、友達は呆れる。ここのやりとり、原作より時間を割いており、五代と友達の、男同士の微笑ましい会話になっている(特徴)。

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自分も就職活動に本腰を入れねばと決意した五代は、保育園のバイトを辞める、と園長に言うが、園長は、園児達に人気のある五代を手離しがたく、9月になったら、また来て欲しいと頼みこむ。五代は園長の熱意に負け、承諾する。園長がやさしい(特徴:やさしい中高年)。

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帰宅した五代は惣一郎(犬)と戯れるが、それが原作より幼く可愛い(特徴)。また、何かをペロペロ舐める描写は、同氏作品によく出てくる。はだしのゲン2脚本と比較。

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響子は、五代宛に就職案内が沢山来ていることを告げる。五代は、就職活動を本格的に始めると響子に力強く宣言。

自室で就職案内をチェックする五代は、就職が決まった場合の、響子との夫婦生活を妄想。だが、四谷がやって来て妄想は中断となる。

四谷は、一流企業は現実的に無理だと言うが、五代は反発する。四谷にからかわれる五代が幼い(特徴)。五代はなんとか四谷を追い出す。ここでも蚊取り線香の意味深なアップが映る(特徴)。

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四谷が、現実を直視せよと言った直後にこれが映るので、蚊取り線香は、これから五代が直面する現実を予告するキャラとなっている?

翌日、大学で求人票を見た五代は、希望する大企業が全然無い事に落胆する。

一方八神(五代に惚れている女子高生)は、今日も今日とて五代を家庭教師として扱い、一刻館に向かっていた。

そんな折、八神はゆかり婆ちゃんと鉢合わせする。ゆかり婆ちゃんは、八神に荷物を持って欲しいと一方的に頼み、一刻館に向かう。文句を言いつつも、八神は方向が同じなため、荷物を持ってあげる(特徴:お年寄りに優しい)。

一刻館にて、出勤(夜勤)しようとしていた朱美は、ゆかり婆ちゃんを見つけ、再会を喜ぶ(ゆかり婆ちゃんは、以前訪問済)。ここも特徴で、朱美がお年寄りに優しく、手を握る。

手を握るのは同氏の特徴の中でも重要。様々な親愛の情を表す。ど根性ガエル演出と比較。

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ゆかり婆ちゃん=五代の祖母と知った八神は、態度が急変し、へりくだる。一刻館の面々は、それを見て呆れる。

五代の部屋には四谷(四谷も、八神の家庭教師)がスタンバイしており、結局、ゆかり婆ちゃんを囲んで、いつもの面々が五代の部屋で駄弁ることになる。朱美も店を休んで参加(一応、八神は四谷から授業を受ける)。

その頃、五代は親友の坂本と飲んでいた。ここでも、高屋敷氏特徴の煙草描写&物のアップが出てくる。

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そして、またしても高屋敷氏十八番のビールテロ。挙げればキリがないが、カイジ2期脚本と比較。

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坂本は、情熱が認められて一流企業に入った、同じ大学の学生の話をする。大事なのは情熱だと、二人も希望を持ち、酒が進むのだった。ここでも、男同士の気さくな会話が上手い(特徴)。

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ルーツはエースをねらえ!演出での、ひろみとマキの気さくな関係からだろうか。

本作は、恋愛ドラマより、こういった友情や仲間愛、疑似家族愛が目立つように感じる。もともと、高屋敷氏はそういった博愛の表現に長けているためだと思うし、それを利用して、恋愛よりも義理人情溢れるホームドラマの側面を強く出しているように見受けられる。これも、「(最終シーズンの)シリーズ構成」としての個性を感じる。

一刻館では、八神が、五代の帰りを待たずに大人しく帰宅する。いい子を演じて、ゆかり婆ちゃんに取り入る腹づもりであった。しばらくは、ゆかり婆ちゃんを口実に五代と会えるので、八神は内心喜ぶ。その一方で、ゆかり婆ちゃんは鋭く、八神・響子・五代の三角関係を見抜いていた。

夜、五代は泥酔状態で帰宅。五代は、ゆかり婆ちゃんが来ていることに驚くも、ゆかり婆ちゃんの歓迎会に加わる。

ゆかり婆ちゃんが、就職活動について五代に尋ねると、五代は坂本との話を思い出し、「情熱さえあれば一流企業も夢じゃない」と宣言する。ハイテンションの五代を見て、一刻館一同も盛り上がり、宴は夜更けまで続いたのだった。

翌朝、五代は、ゆかり婆ちゃんに叩き起こされる。就職活動における会社回りの初日ということで、ゆかり婆ちゃんはご馳走を作ってくれていた(特徴:飯テロ・ご馳走のアップ)。

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大げさだと五代は言うも、五代とゆかり婆ちゃんの会話が、気さくで和む。五代の「男の子らしさ」が、良く表現されており、高屋敷氏らしさが出ている。

皆に万歳三唱で送り出された五代は、気合いを入れて会社回りに挑む。

しかし現実は厳しく、どこに行っても、まともに相手にされなかった。

その頃、ゆかり婆ちゃんは、第六感で五代を心配していた。響子は、就職活動はまだ始まったばかりだと励ます。そこへ、ゆかり婆ちゃんが作った梅酒が宅配便で届く。”これがないと夏が過ごせない”と、ゆかり婆ちゃんが取り寄せたのだ。

響子とゆかり婆ちゃんは、美味しい梅酒を飲んで涼む。

その頃五代は、現実の厳しさを噛み締めていた。そんな折、五代は、こずえ(五代に好意を寄せていた、序盤の響子のライバル)とバッタリ会う。喫茶店にて、こずえが銀行に内定したと聞き、五代は益々ダメージを受けるのだった。

その夜、一刻館の面々は相変わらず、ゆかり婆ちゃんを囲んで酒盛りをしていた。帰宅した五代は呆れつつも、ゆかり婆ちゃん手製の梅酒の美味しさに感動する。

時間経過とともに梅酒は減っていくのだが、ここでも、高屋敷氏特徴の、意味深な梅酒のアップが入り、梅酒は、ゆかり婆ちゃんや五代の不安を和らげる、重要な役割を担っていることがわかる。

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飲みまくった五代は酔っ払い、気が大きくなる。「五代裕作は元気印の男の子なのです」とクダを巻く五代が幼い(特徴)。

その様子を見た一刻館の面々は、会社回りが上手く行かなかったことを悟り、彼らなりに慰める(特徴:疑似家族愛)。だが、あまりに大げさな慰め方なため、響子は皆をたしなめる。酔っ払った五代は響子の手を握り、立派な会社に入ってみせる、と、プロポーズまがいの事を言う。響子が戸惑いながらも励ますと、五代は泣き上戸となり、響子の膝の上で泣くのだった。

ここで明らかになったのが、以前も述べた、アニメ版五代の「”男“の幼さ・可愛さ」。響子の母性本能をくすぐるよう設定されている。現に、膝枕をしてあげる響子の表情は優しい。同氏脚本コボちゃんでも、膝枕シーンがあるが、この場面も、いつも背伸びしている水ノ江(コボの友達)の素の幼さを表現していた。下記画像は、今回とコボちゃん脚本。

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  • まとめ

大人(社会人)になろうとする話なのに、いつもながら五代が原作と比べ幼く可愛い。回を追う毎に、それが母性本能をくすぐるためのものだと確信できる。高屋敷氏は、演出であろうと脚本であろうと、こういった、幼さの表現が非常に上手い。

あと、物=キャラという特徴も、特に梅酒という形で表れている。梅酒は、ゆかり婆ちゃんが五代を心配した途端に届くし、落ち込んで帰宅した五代を酔わせ、慰めてくれたりする。極めつけは、響子の膝枕。梅酒が作ってくれたシチュエーションとも言える。このように、冒頭~終わりまで、梅酒が話運びのキーキャラクターとして活躍している。そのため、梅酒のアップが印象的なのだろう。

また、五代を取り巻く一刻館の面々の、疑似家族愛もクローズアップされている。特に、的確なアドバイスをしたり、五代の空元気を見抜いたりする四谷が渋い。これも、恋愛というより疑似家族を含めたファミリーものとしたい高屋敷氏の意向が窺え、原作通りであろうとも、シリーズ構成・脚本の個性は、作品を左右するほど強いことがわかる。

私は、子供の頃から原作を読み親しんでいたが、この、高屋敷氏の解釈は新鮮に映る。原作の五代は、妄想癖のある愛すべきバカという感じだが、高屋敷氏担当シリーズ・脚本の五代は幼く可愛い。母性本能をくすぐる存在として見事に機能していると思う。同氏シリーズ構成・脚本のカイジでも、女性視聴者の母性本能をくすぐるように、所々設定されている。

こういった、男性が描く男性キャラの可愛さは、あざとさがあまり無く、また、高屋敷氏はそれに長けている。同時に、カイジ(脚本・シリーズ構成)や「家なき子」(演出)のレミのように、突如大人の男としての豹変を見せるのも高屋敷氏の真骨頂。五代の場合、響子との仲が親密になる終盤の、男としての成長をどう書くのか、益々興味深くなった。