カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

ストロベリー・パニック16話脚本:技巧の特盛

アニメ・Strawberry Panic(ストロベリー・パニック)は、公野櫻子氏を原作者とした電撃G's magazine読者参加企画のアニメ版(ここでは、アニメ版を扱う)。
女学園でのドラマが展開される。
監督は迫井政行氏で、シリーズ構成は浦畑達彦氏。

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本記事を含めた、ストロベリー・パニックに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

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今回のコンテは高橋丈夫氏で、演出がまつもとよしひさ氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

色々なトラブルを乗り越え、ミアトル、スピカ、ル・リムの3校合同文化祭の劇・カルメンが上演される。

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冒頭は、ミアトル、スピカ、ル・リムの3校合同文化祭の劇の主演および衣装係で奮闘する千華留(ル・リム女学校生徒会長)のナレーション。グラゼニ(脚本)も、主人公である夏之介のナレーションが活用されている。

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文化祭の劇・カルメンの準備は着々と進む。普段、静馬(しずま。3校の代表“エトワール”を務める)のサポートをしている薫と水穂も大道具・小道具係として頑張る。脇役にスポットを当てる姿勢はよく見られ、らんま1/2(脚本)にも、それは表れていた。

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劇の演出をする深雪(ミアトル女学園生徒会長)は色々なチェックに奔走しており、通し稽古の時間に遅れてしまう。要(スピカ女学院副会長)と桃実(同・書記)は、その事を意地悪く咎める。なんとなく、カイジ2期(脚本)の沼川・石和(カイジ達をいじめる一味)と並べると面白い。

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小道具係の水穂や、音響・照明係の千早と紀子(渚砂の隣室)も、要と桃実に振り回されて困惑する。ここも脇役がクローズアップされている。こういった脇役への愛情は、ワンナウツ(脚本)でもありありと感じられる。

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さらに要と桃実のワガママは続き、深雪も困惑。中間管理職的な苦労人の描写は、カイジ忍者戦士飛影(脚本)でも印象に残る。

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勝手に場を去ろうとする要と桃実を、渚砂(なぎさ。主人公)は懸命に止める。
主人公が仲間の重要性を説くのは、カイジ2期(脚本)でも強調された。

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渚砂は、感情的になった桃実に突き飛ばされ、その拍子に背景セットが倒れる。その下敷きになりそうだった渚砂を、静馬が咄嗟に助ける。体を張って主人公を助ける気概は、忍者戦士飛影(脚本)のダミアンを彷彿とさせる。

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静馬は、要と桃実の台詞を削ってもいいから、やる気のある者だけで立て直すと宣言。カイジ2期(脚本)で、意地悪な大槻達に、リーダーとして毅然と歯向かうカイジと重なる部分がある。

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皆は静馬に賛同し、壊れたセットを協力して直すことに。「皆がいるから自分がいる」的な仲間愛の描写は多くの作品に見受けられる。元祖天才バカボン(演出/コンテ)でも、それは色濃い。

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詩遠(スピカ女学院生徒会長)は、要と桃実にも、セットの修繕への協力を命令し、二人はそれに素直に従う。対立する側の矜持は、ワンナウツおにいさまへ…(脚本)でも強く描かれた。

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皆が懸命に協力する流れになり、渚砂を見る静馬の表情が柔らかくなる。
影のあるキャラが、心を許している者に対し笑顔になるのは、おにいさまへ…(脚本)でも心に残る。

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皆は徹夜し、ついにセットの修繕を完了させる。ここも温かい仲間愛が描かれている。ど根性ガエル(演出)や、チエちゃん奮戦記(脚本)などなど、こういった温かい雰囲気は色々な作品にある。

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喜びも束の間、リハーサルをあらためて行うことになり、皆は悲鳴を上げる。
深雪は笑顔を見せる。キャラが(意外な)満面の笑みを見せる場面は結構あり、高屋敷氏が笑顔を重視しているのがわかる。
あしたのジョー2・ダンクーガ蒼天航路(脚本)と比較。

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そして文化祭が始まる。高屋敷氏は、原作通りにしろアニメオリジナルにしろ、祭り描写に縁がある(特に夏祭りが多い)。F-エフ-・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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赤い風船が飛んで行く場面があるが、赤い風船はF-エフ-(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、怪物くん(脚本)にもあり、気になるところ。
特にF-エフ-とのシンクロは興味深い。

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中等部は、15話( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/04/05/135059 )で決定した通りの配役で、ロミオとジュリエットを上演。コメディ調なのは、おにいさまへ…(脚本)の劇中劇が悲劇なのと対比すると面白い。

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いよいよ渚砂達の劇・カルメンが始まり、照明・音響係の千早と紀子は、緊張してスタンバイする。この二人は地味ながらも目立ち、立ち位置的には、原作より目立つこともあったワンナウツ(脚本)の名脇役・今井と藤田に通じるものがある。

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照明のタイミングも成功し、千華留演じるカルメンが登場。その麗しさに観客は魅了される。
今までの、彼女の朗らかなイメージとは一変しており、こういった豹変はカイジ2期(脚本)の覚醒カイジにも適用されている感じがする。

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カルメン(千華留)に出会い恋に落ちたホセ(静馬)は、バラを拾う。意味深な花の描写は多々ある。おにいさまへ…(脚本)と比較。

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一方、音響のタイミングがバッチリ合って、千早と紀子が喜び合う。
やはりこの二人は地味ながらも目を引き、ワンナウツ(脚本)で地味ながらもファインプレーを決める今井・藤田と重なってくる。

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カルメン(千華留)とホセ(静馬)のラブシーンでは、二人が手を握り合う。また、舞台裏では(実際に恋愛関係の)要と桃実も手を握り合う。
手と手による感情伝達は頻出。おにいさまへ…ワンナウツ(脚本)と比較。

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照明が大事な場面も、千早と紀子はドンピシャで成功させ、舞台裏は盛り上がる。やはり彼女達は、そのファインプレーぶりも含めてワンナウツ(脚本)の今井・藤田を思わせる。

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舞台では、天音(スピカ女学院の王子様的スター)演じるエスカミーリョが、客席に登場したカルメン(千華留)に向かってリボンを投げる。
おにいさまへ…(脚本)にも、学園の憧れの存在(れい)がバラを投げる場面がある。

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舞台は順調に進むかのように見えたが、天音が次期エトワール選に出ないよう画策している要・桃実の策略によって、天音の靴の踵が折れ、天音と千華留は転倒。
カイジ2期(脚本)にて、陰湿な嫌がらせをする大槻達と比較すると面白い。

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なんとか天音と千華留はアドリブでその場をしのぐが、千華留は負傷。
時間稼ぎのため、静馬と天音は決闘を即興で演じる。殺陣はベルサイユのばら(コンテ)にもあり、脚本作といえど、その経験も活きている気がする。

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脚本担当の玉青(渚砂のルームメイト)は、渚砂が静馬の練習相手をしていたのを思い出し、渚砂に千華留の代役を頼む。
これは前回15話( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/04/05/135059 )に伏線がある。丁寧な伏線設置・回収は、カイジ2期(脚本)でも巧み。

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そして代役として、渚砂が舞台に上がる。
実際に心を通わせつつある静馬と渚砂は、迫真の演技を見せる。
劇中劇が本編とリンクしている描写は、おにいさまへ…(脚本)にも見られる。

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そして劇はフィナーレを迎え、観客は拍手喝采。力をくれる温かいモブは、ワンナウツ・はじめの一歩3期(脚本)でも強調された。

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舞台裏でも、皆が舞台の成功を喜ぶ。ワンナウツあんみつ姫(脚本)はじめ、皆で何かを達成することは喜ばしいことなのだというメッセージは、数々の作品に込められている。

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夜、文化祭の終わりを告げる焚き火を、皆それぞれに眺める。やはりここも、仲間愛が感じられる。こういった温かな人情は、めぞん一刻おにいさまへ…(脚本)など、色々な作品で目を引く。

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そんな中、渚砂の姿が無い事を、玉青は密かに憂う(どこにいるのかは察しがついている)。失恋していく者を静かにクローズアップする描写は、おにいさまへ…(脚本)にもあった。

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静馬と渚砂は、温室にいた。二人を見守るような月が映る。全知全能のような存在としての月は頻出。F-エフ-・はじめの一歩3期・マイメロディ赤ずきん(脚本)と比較。

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静馬と渚砂は、劇の興奮冷めやらぬまま、手を握り合う。ここも、手と手による感情表現。恋愛感情に使われることも多い。F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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様々な者の感情を乗せ、焚き火が燃え上がるのだった。火の意味深な描写は、高屋敷氏の初期担当作から見られるもの。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、あしたのジョー2(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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  • まとめ

文化祭というビッグイベントだけあり、高屋敷氏の持てる(当時の)技術をふんだんに盛り込んでいる感がある。

サブタイトル『舞台裏』の通り、まさに舞台裏のドラマを描いており、皆で作品を作り上げる楽しさや興奮が伝わってくるコンセプトになっている。高屋敷氏自身の演出・監督・脚本経験も活かされているのではないだろうか。

長所である、キャラの掘り下げもぬかりがない。特に千早・紀子コンビの活躍が印象深い。また、普段目立たない水穂と瞳にもスポットが当たっているのも特筆に値する。

サブキャラに目を配りながら、メインキャラの動向や感情も、ありったけ詰め込んでいる。静馬や渚砂はもちろんのこと、深雪や玉青の感情も、しっかり拾っている。

もともと高屋敷氏は、複数の複雑なプロットを捌くのに長ける。それをフル活用し、劇中劇と本編を巧みにリンクさせていく技術には目を見張るものがある。

こういった凄まじい技術は、ラジオスタジオで喋っているだけなのに面白い、グラゼニ17話( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/04/10/095344 )にも繋がっている。どちらも軸はシンプルなのに、使われている技巧が半端ない。

また、「火」の描写も興味深い。高屋敷氏は、まんが世界昔ばなしの『動物たちと火』(演出/コンテ)にて、人類がいかにして火を使うようになったかの話を扱っている。これを含め、色々な作品に火の表現があるわけで、同氏が火に拘っているのは確か。

あらゆる作品に見られる「皆がいるから自分がいる、自分がいるから皆がいる」といった仲間愛・博愛も、今回強めに出ている。シリーズの都合上、未解決な案件はあるものの、皆で劇を成功させていく展開は感慨深いものがある。

そして、どこか八方美人なところがある渚砂と、意外に嫉妬深い面もある静馬を、カルメンとホセに被せていく展開も上手い。複雑に絡む要素を解きほぐしながら、渚砂と静馬のドラマに収束させていく手腕も見事。

今回は、サブキャラ・メインキャラともに掘り下げが行われ、複雑かつ複数のプロットが捌かれ、劇中劇と本編がリンクされ、博愛・恋愛のメッセージが発せられており、高屋敷氏の器用で巧みな技術が堪能できる回だった。

ストロベリー・パニック15話脚本:コメディの挿入

アニメ・Strawberry Panic(ストロベリー・パニック)は、公野櫻子氏を原作者とした電撃G's magazine読者参加企画のアニメ版(ここでは、アニメ版を扱う)。
女学園でのドラマが展開される。
監督は迫井政行氏で、シリーズ構成は浦畑達彦氏。

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本記事を含めた、ストロベリー・パニックに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

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今回のコンテは高橋丈夫氏で、演出が谷田部勝義氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

文化祭の演目が玉青(たまお。渚砂のルームメイト)が企画したカルメンに決定。そして脚本も玉青が担当。一方、劇を巡って様々な人物の思いが錯綜する。

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開幕、文化祭の説明が玉青(たまお。主人公・渚砂のルームメイト)のナレーションで成される。季節を感じさせる表現を差し挟むのは、グラゼニ(脚本)ほか、色々な作品で見受けられる。

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玉青は、文化祭で行われる、ミアトル、スピカ、ル・リム3校合同の劇の企画書を書き上げる。
キャラを体現する物を映すのは、グラゼニ(脚本)ほか多々ある。

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一方、ミアトル、スピカ、ル・リム3校の生徒会員および静馬(しずま。3校の代表“エトワール”を務める)は、演劇祭の演目について会議する。話し合うだけで緊迫した雰囲気を出し、飽きさせない技術はグラゼニ(脚本)にも見られた。

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3校の色々な思惑が錯綜したものの、演目は玉青が企画したカルメンに決まり、玉青と渚砂(なぎさ。主人公)らは喜ぶ。だが、渚砂はカルメンが何か知らず。子供っぽい態度は、宝島(演出)や、めぞん一刻(脚本)ほか多い。

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玉青は、カルメンについて手短に説明する。高屋敷氏は話をまとめるのが上手く、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ/脚本で参加)や太陽の使者鉄人28号(脚本)でも、その手腕が遺憾なく発揮されていた。

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カルメンの筋の説明の最後に、バラのアップがあるのだが、花に意味を持たせるのは数々の作品にある。
おにいさまへ…あしたのジョー2(脚本)、空手バカ一代(演出)と比較。

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脚本も書く事になった玉青の部屋に、スピカ生徒会長・詩遠がクッキー持参で尋ねてきて、ホセ役に天音(スピカ女学院のボーイッシュな人気者)を推す。
クッキーを贈る展開は結構ある。おにいさまへ…マイメロディ赤ずきん(脚本)と比較。

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その後、玉青は脚本執筆に没頭。
クッキーの袋が開けられていない事で、玉青が詩遠のゴリ推しに屈していないのがわかる。
こういった「物」による表現は頻出。蒼天航路めぞん一刻グラゼニ(脚本)と比較。

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演目がカルメンに決まったことで、3校の生徒達は配役の話で持ちきりになる。
あんみつ姫カイジ2期(脚本)などなど、高屋敷氏は、生き生きとしたモブの会話を作るのに長ける。おにいさまへ…(脚本)では、モブの間で流行る怪談の話もあった。

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学校内のカフェで、渚砂や、隣室の千早・紀子とお茶する玉青は、配役は深雪(生徒会長)が決める事だと話す。千早と紀子は地味ながら目立ち、こういう立ち位置のキャラは、ワンナウツ・F-エフ-(脚本)など他作品でも目立つ。

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何としてもスピカから来期エトワールを出したい詩遠は、その足がかりとして天音をホセ役にしたい意向があり、天音本人にもホセ役をしてほしいと迫る。
高慢だがコミカルさを持つ彼女は、どこかカイジ2期(脚本)の一条を思わせる。

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一方、夜通し脚本を執筆する玉青を気遣い、渚砂はメッセージと共に温かい飲み物を置いておく。
物言わぬ「物」が語るのは、多くの作品にある。めぞん一刻・F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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ル・リムでは、衣装係を買って出た千華留(ちかる。ル・リム生徒会長)がデザイン画を起こすのに熱中。花瓶が映るが、花関連の「間」はしばしばある。めぞん一刻おにいさまへ…コボちゃん(脚本)と比較。

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千華留とつるんでいる後輩・絆奈(きずな)と檸檬(れもん)は、千華留こそ主演にふさわしいと言いながら指相撲する。宝島(演出)やガンバの冒険(脚本)など、高屋敷氏はキャラの幼さを引き出すのに秀でる。

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配役の行方はさておき、衣装係としてこれから忙しくなる、と千華留は絆奈と檸檬に宣言。
コミカルさで話を和ませるキャラ達は、グラゼニじゃりン子チエ(脚本)などでも上手く配置されていた。

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月の美しい夜、玉青に気を遣って庭に出た渚砂は、偶然静馬と会う。
静馬は、何らかの役に選ばれたら、渚砂に練習相手になって欲しいと言い、渚砂は快諾。
意味を持つ月は頻出。はじめの一歩3期・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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ついに脚本を書き上げた玉青は、その素晴らしい出来を深雪に褒められる。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)では、「お芝居を作る人」が出て来たりと、このあたりは創作者としての高屋敷氏の経験が活きている感じがする。

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配役は、大方の予想を裏切り、千華留がカルメン(衣装係も兼ねる)、静馬がホセ、天音がエスカミーリョとなった。この結果に喜ぶ絆奈と檸檬は抱き合う。ハグもよく出る。グラゼニ(脚本)、ど根性ガエル(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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この結果に、詩遠は悔しがる。ちなみにスピカ生徒会は一枚岩ではなく、副会長の要と書記の桃実は、天音をエトワール選に出馬させないよう暗躍している。学校のトップグループの複雑なドラマは、おにいさまへ…(脚本)でも描かれた。

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早速、詩遠は深雪に抗議するが、メインキャストをスピカから3人も選んで調整したと、深雪にあしらわれる。
内に色々秘めた、緊迫した駆け引きは、カイジ2期(脚本)ほか、高屋敷氏の得意とするところ。

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一方、演劇祭における中等部の演目はロミオとジュリエットに決まる。そして早速、主演への立候補が多数出る。ど根性ガエル(演出)、ワンナウツ(脚本)ほか、集団での幼さを描写するのにも、高屋敷氏は長ける。

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配役をアミダやジャンケンで決めよう…と生徒達は「アミダ」や「ジャンケン」を連呼する。モブ達が団結して言葉の連呼を行うのは、カイジ2期(脚本)などでも目立つ。

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結局、指相撲トーナメントで配役を決めることになり、ロミオ役をかけて籠女(ル・リムの不思議系)と夜々(渚砂達と仲が良い、スピカの生徒)の一騎討ちとなる。
手による感情表現は頻出であり、宝島最終回(演出)の腕相撲を彷彿とさせる。

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結果、籠女の勝利となって夜々は崩れ落ちる。なんとなく、カイジ2期(脚本)にて、敗北して卒倒するカイジと比較すると面白い。

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一方、ジュリエット役はスピカの蕾(つぼみ。渚砂達と仲が良いツンデレ少女)に決まり、彼女は周りに拍手を強制する。一人対多人数のボケツッコミは、あんみつ姫(脚本)でも、よく見られた。

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夜になり、夜々は同室の光莉(ひかり。天音と両思い)が天音に会いに行ったことを察して憂う(夜々も光莉に恋しているが封印した)。
一人ぼっち描写は、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、印象深い場面が多い。

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光莉は天音に、手伝いを買って出る。
要と桃実は、今後の策略を練る(二人は恋愛関係)。
渚砂は、静馬の演技の練習相手をする。渚砂達を見守る、とある人物の影があるが、見守りキャラの活躍はカイジ2期・ワンナウツグラゼニ(脚本)でも目立つ。

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渚砂の演技があまりに棒なので、静馬は堪えきれず笑い出す。
満面の笑顔は、あらゆる作品で印象深く、高屋敷氏が笑顔を重視しているのがわかる。
忍者戦士飛影あしたのジョー2(脚本)と比較。

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あらためて静馬は渚砂に礼を言い、二人は見つめ合うのだった。
二人単位での濃厚な心の触れ合いは、グラゼニワンナウツ(脚本)でも描かれ、高屋敷氏の、こういった表現の上手さが窺える。

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  • まとめ

政治的駆け引き、キャラの掘り下げ、コメディ要素の挿入、キャラの幼い所作など、高屋敷氏の得意とするものがバランスよく盛り込まれており、話の密度が濃い。

軸でシリアスなドラマを展開しつつ、コメディ要素で話を和らげるのは、演出作・脚本作ともに目を引く。コメディパートは、話のオアシス的な機能があり、これは高屋敷氏の初期作品でも強く出ている特徴。

幼い所作もまた、数々の作品で(初期から)突出しており、作品の面白さに貢献している。アカギやカイジワンナウツといった、グッと大人向けで大人が多い作品のシリーズ構成・脚本でも、これが発揮されているのも面白い。

10話(脚本)同様(詳細:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/03/29/135016 )、影のある静馬が満面の笑顔を渚砂の前で見せており、笑顔の重要性が感じられる。高屋敷氏がギャグやコメディも精力的にやるのは、この「笑顔重視」からかもしれないと思えてきた。

また、玉青の舞台企画についてだが、高屋敷氏は、飛べ!イサミ(脚本・シリーズ構成陣)の企画も起こしており、そういった経験も活きているのではないだろうか。

同じく、玉青の脚本執筆の苦労や、褒められた時の喜びなども、同氏の実体験を活かした可能性が大いにあり、興味深いところである。

2話(脚本)では、詩人としての玉青の一面が描かれており(詳細: https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/03/15/135232 )、今回の脚本の才も併せると、大分キャラの掘り下げが成されている。

千華留についても、キャラを一層掘り下げている。こちらも、コメディエンヌである一方で多才な人物として描かれ、6話(脚本)では裁縫の才を披露していた(詳細: https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/03/22/135618 )。

スピカ生徒会の政治劇を描きながら、詩遠のキャラを立てて少しコメディチックにしている手腕も光る。今までの話と比較しても、今回は彼女の奔走が目立っている。

色々なキャラを立たせながら、主軸の二人である渚砂と静馬のドラマもビシッと締めている。10話(脚本)に引き続き、愛情=笑顔を見せ合える事だという強いメッセージが感じられた回だった。