カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ストロベリー・パニック2話脚本:世界観の構築

アニメ・Strawberry Panic(ストロベリー・パニック)は、公野櫻子氏を原作者とした電撃G's magazine読者参加企画のアニメ版(ここでは、アニメ版を扱う)。
女学園でのドラマが展開される。
監督は迫井政行氏で、シリーズ構成は浦畑達彦氏。

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本記事を含めた、ストロベリー・パニックに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

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今回のコンテは迫井監督で、演出が布川真英氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

聖ミアトル女学園に編入してきた渚砂(なぎさ)は、ミアトル、スピカ、ル・リムの3校を代表する役職“エトワール”を務める上級生・静馬(しずま)に翻弄される。静馬は静馬で、何らかの闇を抱えていることが示唆される。

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開幕、虹が映る。虹は様々な作品の要所要所で出る。ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-(脚本)、宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。
特にRAINBOW-二舎六房の七人-の虹は非常に重要。

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ヒロイン・渚砂(なぎさ)のルームメイトである玉青(たまお)は水辺の木の下で、自作の詩を口ずさむ。木の印象深い描写は多々ある。
RAINBOW-二舎六房の七人-・チエちゃん奮戦記・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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玉青は、虹についての詩を考え中で、最後に良いフレーズを思いつく。
おにいさまへ…(脚本)のアニメオリジナルストーリーでは、シェイクスピアの詩が朗読される重要場面がある。

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その後、玉青は渚砂の寝顔を「かわいい」と眺め、頬をつつく。
F-エフ-(脚本)でも、屈託ない寝顔の軍馬(主人公)を見て純子(ヒロイン)微笑む場面(アニメオリジナル)がある。

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起床した渚砂は、新しく届いた聖ミアトル女学園の制服に袖を通し、鏡を見る。
おにいさまへ…(脚本)では、奈々子(ヒロイン)が入学初日に着て行く服に迷った挙句、結局制服にする場面があり、こちらも鏡が目を引く。

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朝食の時間に遅れそうになり急ぐ渚砂は、3つの学園を代表する役職“エトワール”を務める静馬(しずま)にぶつかる。主人公が謎めいた上級生と偶然接触するのは、おにいさまへ…(脚本)でも強調されている。

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静馬は、渚砂のネクタイを直す。コーディネートを通じた親愛の情は、おにいさまへ…(脚本)、家なき子(演出)、じゃりン子チエ(脚本)にも見られた。

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さらに静馬は、渚砂の額にキスをしようとするが、深雪(生徒会長)に止められる。
同性同士で顔を近付けるのは、おにいさまへ…グラゼニ・F-エフ-にもある。
同性同士の密着は、どの担当作にも結構見受けられ興味深い。

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渚砂は、何故静馬があんなことをしたのか疑問を持つが、玉青に「(渚砂が)可愛いから」だと言われる。
聖母像の「間」があるが、像の醸し出す「間」は、しばしば見られる。空手バカ一代(演出)、カイジ(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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玉青と共に教室に入った渚砂はクラスメイトに囲まれ、静馬にキスされそうになった感想を聞かれる。渚砂は静馬の人気を実感するのだった。
高屋敷氏の担当作は、モブが生き生きしていることが多い。おにいさまへ…(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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昼、学園のカフェテリアで渚砂と玉青はランチする。飯テロ表現は、ありとあらゆる作品に出てくる。グラゼニカイジ2期・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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渚砂は、玉青にプリンを食べさせてもらう。友達に「あーんして」されるのは、ど根性ガエル(演出)と重なる。この場面のルーツかもしれない。

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昼食をペロリと食べた渚砂に、玉青は自分の昼食を半分与える。
飯テロだけでなく、食いしん坊描写も多い。
ど根性ガエル(演出)では、母ちゃんが自分の分の朝食を、ひろし(主人公)に分けようとする場面がある。

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玉青から文芸部に誘われた渚砂は、ひとまず文芸部を見学することに。
会話中、カップの「間」がある。似た描写はしばしば確認できる。めぞん一刻・F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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一方、静馬を交えた3校合同のランチミーティングをする予定だった深雪は、静馬が何処かへ脱け出したことに気づく。
空席描写は、家なき子(演出)、グラゼニMASTERキートン(脚本)でもインパクトがあった。

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スピカ女学院やル・リム女学校の生徒会長らは、ひとまず静馬を待つ。
ところで会議といえば、忍者戦士飛影(脚本)でも会議場面が多かった。

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深雪は、手違いが起こったとして、静馬がいないことをスピカとル・リム代表に詫びる。腹心的立場のキャラの気苦労は、カイジ2期・忍者戦士飛影ワンナウツ(脚本)でも前面に出ていた。

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文芸部では、玉青が自作の詩を発表する。詩の内容は、結ばれぬと知りながら愛を追い求めることと虹を絡めたもの。
ベルサイユのばら(コンテ)の禁断の愛、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)の、愛し合うも結婚できなかった話が思い出される。

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玉青の詩に感銘を受けながら、渚砂は並木道を歩く。並木道は、しばしば重要なものの暗喩として描写される(「人生」の暗喩が多い)。グラゼニめぞん一刻(脚本)、家なき子(演出)、蒼天航路・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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木漏れ日を浴びながら、渚砂は玉青のように詩をひねろうとするが、うまくいかない。
美しい木漏れ日の描写は、めぞん一刻カイジ2期(脚本)にもある。高屋敷氏が好むものなのかもしれない。

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そんな中渚砂は、静馬と、見知らぬ女子の逢瀬を目撃する。ただならぬ仲の二人を主人公が目撃してしまう場面はグラゼニ(脚本)にもあり、比較すると面白い(グラゼニの方は恋愛ではないが、かなりBL的ではある)。

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覗いたのがばれそうになった渚砂は、その場を急いで離れる。水辺と木が映るが、輝く水面の描写は(高屋敷氏が長年一緒に仕事した)出崎統氏がよく使い、高屋敷氏もよく出す。
RAINBOW-二舎六房の七人-・あしたのジョー2(脚本)、エースをねらえ!(演出)と比較。

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一方ランチミーティングでは、静馬が来ないなら先に食事をしようと、ル・リム生徒会長の千華留(ちかる)が提案し、「お腹がぺこぺこ」と言う。
ど根性ガエル(演出)、あんみつ姫・RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(脚本)ほか、食いしん坊描写は多い。

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その頃、渚砂は図書館らしき古風な建物の中に入り、ステンドグラスに見入っていた。
ステンドグラス描写は、おにいさまへ…あしたのジョー2(脚本)でも意味深だった。

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ステンドグラスから、光が射し込む。こうした光の表現は、演出作・脚本作ともによくある。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、おにいさまへ…(脚本)、家なき子(演出)と比較。

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そこへ現れた静馬は、顔を近付けて渚砂を口説く。やはりこういった同性同士のベタベタや、同性キャラに惚れ込む描写は、グラゼニおにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)などなどに見られる。

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渚砂は脱力して手をおろす。手による感情表現は頻出。ワンナウツグラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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いよいよキスかという寸前で物音がしたので、渚砂は本に埋もれた生徒(千代)に駆け寄り、その間に静馬は消える。
この千代ほか、所作が幼いキャラは多い。宝島(演出)、F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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その夜、ミーティングをすっぽかした事を咎める深雪に対し、「言いたい事はそれだけ?」と静馬は言う。
背中で語る描写は結構ある。ベルサイユのばら(コンテ)、RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニワンナウツ(脚本)と比較。

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一方、渚砂は玉青に(クリアの)ネイルカラーを塗ってもらう。おにいさまへ…(脚本)にも、奈々子が背伸びして真っ赤なネイルカラーを塗る場面がある。

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静馬は窓辺に佇み、風にあたる。風の意味深描写は、他の作品でも確認できる。
ハローキティのおやゆびひめ(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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月光の下、静馬が心に闇を抱えている事が示唆される。全てを見ているような月は頻出。シリーズやエピソードのラストを飾る事も多い。はじめの一歩3期・F-エフ-・マイメロディ赤ずきん(脚本)と比較。

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  • まとめ

やはりというか、予想通りというか、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)*1の経験をフル活用している感じがする。
おにいさまへ…は、華麗な女学園ものの王道とも言えるので、自然な流れ。

担当話の初っぱなから、飯テロが飛び出してくるのも楽しい。
単なる食道楽というだけでなく、食べるという行為が、心身を支える非常に重要なものであると主張されている作品もある。

興味深いのは「虹」。今回の場合は、悲恋と絡めた詩の題材として出てきたわけだが、他の作品でも、人と人をつなぐ架け橋として使われる場合が多い。何故「虹」が出るのかの舞台裏を見る事ができた気がする。

本作は百合カテゴリに入っているのだが、女性同士にしろ男性同士にしろ、高屋敷氏は同性間の密接な繋がりを表す事に長けているし、ホモソーシャル的世界観の構築も上手い。

こういった同性同士のイチャイチャや、ホモソーシャル描写の上手さは、高屋敷氏の野球経験(元球児で、高校野球部の監督だった)から来ているのかもしれない。少なくとも野球は選手間の絆が大事であるし、スキンシップやアイコンタクトも多い。

昨今「男同士の百合」「女同士のBL」というフレーズが聞かれるようになったが、高屋敷氏はどちらも上手いし、見る側としても、そう見えてくる。ベースとしては男同士の絆の表現の上手さあり、それを百合にもBLにも応用している気がする。

キャラの掘り下げは高屋敷氏の十八番だが、詩人としての玉青の才能を際立たせることに成功しており、彼女が単なる百合こじらせキャラではないことがわかる。
ちなみに、同氏が脚本参加したガンバの冒険にも詩人がいる。

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虹に始まり、光、木、水、風などの「自然」が重要な役割を担っているのも、実に高屋敷氏らしいと言えると思う。特に「光」の描写は、(絵を管理できない)脚本作なのに、同氏の演出作とシンクロしていてゾクッとくる。

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話の構成としても、色々なキャラの動向を捌く技術の見事さや、密度の濃さが出ている。この才は特に、高畑勲監督作のじゃりン子チエで磨かれたと思う。高屋敷氏の「演出の師」が出崎統氏なら、「脚本の師」は高畑勲氏なのではないだろうか。

本作の放映は2006年で、おにいさまへ…の放映年(1991)から大分経っている。時代に合わせて変える所と、変えない所の塩梅もまた、高屋敷氏は絶妙。本作も、色々な同氏担当作と比較しながら見て行きたい。

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こちらも紹介:

当ブログの、

グラゼニ(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)に関する記事一覧↓

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RAINBOW-二舎六房の七人-(同氏シリーズ構成・脚本)に関する記事一覧↓

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