カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ストロベリー・パニック25話脚本:驚異的な圧縮技

アニメ・Strawberry Panic(ストロベリー・パニック)は、公野櫻子氏を原作者とした電撃G's magazine読者参加企画のアニメ版(ここでは、アニメ版を扱う)。
女学園でのドラマが展開される。
監督は迫井政行氏で、シリーズ構成は浦畑達彦氏。

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本記事を含めた、ストロベリー・パニックに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

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今回のコンテは高橋丈夫氏で、演出が長村伸治氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

天音(スピカ女学院の王子様的存在)は、記憶を取り戻して光莉(ひかり。天音と両思い)と愛を確かめ合う。一方、渚砂(なぎさ。主人公)は静馬(3つの学校の代表“エトワール”を務める)と最初で最後のダンスをする。

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スピカ女学院の王子様的存在・天音は、落馬して記憶が混乱し、光莉(ひかり。天音と両思い)の事を忘れてしまう。光莉は、天音の回復を祈る。ステンドグラスや礼拝堂を印象づけるのは、おにいさまへ…あしたのジョー2(脚本)にもあった。

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ミアトル女学園では、エトワール(3つの学校の代表)選に向け、渚砂(なぎさ。主人公)と玉青(たまお。渚砂のルームメイト)に厳しい指導をする静馬(しずま。現エトワール)を見て、水穂と瞳(静馬の取り巻き)が会話する。めぞん一刻ワンナウツ(脚本)ほか、高屋敷氏は地味キャラの扱いが上手い。

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天音は更衣室にて、(以前光莉に貰った)スカーフを見つめる。大切な物を持つ「手」のクローズアップは、色々な作品に見られる。F-エフ-・あしたのジョー2・MASTERキートン(脚本)と比較。

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(静馬がよくいる)温室では、深雪(ミアトル女学園生徒会長)と静馬が会話。夕暮れの中、親交を深めるシチュエーションは多い。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)と比較。

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光莉は天音を探すが、姿が見えない。そこへ風が吹く。「意味のある」風の描写は、様々な作品に見られる。めぞん一刻(脚本)、宝島(演出)と比較。

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光莉と天音が寮に帰っていないことを、夜々(光莉のルームメイト)と詩遠(スピカ生徒会長)は心配する。要(スピカ副会長)は、二人の会話を聞き付ける。意外なキャラを動かすため伏線を張るのは、1980年版鉄腕アトム・F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)など数多い。

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天音を探すうち、光莉は森に入り込む。ここでも風が吹く。家なき子(演出)、おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)などでも、風の表現が印象深い。

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(自分があげた)天音のスカーフが落ちているのに気付いた光莉は、それを抱きしめる。大切な物/者を抱きしめる描写は、F-エフ-・ハローキティのおやゆびひめ(脚本)などでも確認できる。

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そこへ天音が現れ、何故かはわからないけど大切なものだから、スカーフを探していたと光莉に言う。ここで、光莉側に月光が当たっているわけだが、「光」による強調は、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、おにいさまへ…グラゼニ(脚本)ほか目を引く。

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光莉と天音を探したが見つけられなかった夜々と詩遠は、寮の入り口で二人を待つ。そこへ、要が毛布を持って現れる。
ワンナウツグラゼニ(脚本)等、高屋敷氏は、キャラの意外な組み合わせをアニメオリジナルを交えて提示することがある。

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詩遠は、スピカからエトワールを出すという夢を、天音に叶えてもらおうとしていた自分を省み、今も、天音を心配することしかできない自分の無力さに涙を流す。キャラの掘り下げは高屋敷氏の十八番で、F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)などでも、それは発揮されている。

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一方、光莉と天音は、小屋で暖を取る。ストーブの炎が映るが、こういった火の表現は要所要所にある。ベルサイユのばら(コンテ)、カイジ2期(脚本)、家なき子(演出)と比較。

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天音を想う切ない気持ちが溢れ、光莉は涙を流す。天音は、その涙を優しく拭う。
手を使った感情表現は、あらゆる作品で頻出。めぞん一刻カイジ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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いつしか雪が降ってきて、色々なキャラがそれを見つめる。
めぞん一刻(脚本)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、雪がドラマを盛り上げる展開は多々ある。

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光莉は、天音と心を通わせる切欠になった歌を口ずさむ。その歌を聞くうち、天音は記憶が戻り、光莉を見つめて頷く。
多くを語らず、頷き等で思いを伝えるのは、F-エフ-(脚本)ほか、記憶に残る場面が多い。

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天音と光莉は抱き合い、そして愛し合う。雪の中愛し合う場面は、めぞん一刻・F-エフ-(脚本)にもあり、どれも情緒がある。
雪の代わりに、雨や雷が使われることもある。

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朝になり、天音は「もう何も怖くない」と光莉に愛を語る。人を愛することで心が晴れやかになるのは、おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)などでも強く描かれている。

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(乗馬部である)天音は、光莉と共に愛馬に乗って寮に帰る。恋人同士で馬に乗る場面は蒼天航路(脚本)でも強調されているほか、並木道は人生の暗喩として、多くの作品に出てくる。

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詩遠と夜々は、天音と光莉を迎える。一歩下がった所から、要はそれを見る(スピカ書記の桃実と関係を持ちながらも、ずっと天音を想っていた経緯がある)。ふられキャラのかっこよさは、めぞん一刻・RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…(脚本)などでも前面に出ている。

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天音は、自分の気持ちを光莉に告げたと皆に宣言する。自分の気持ちをはっきり表明することの重要性は、RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…めぞん一刻(脚本)などでも強調されており、高屋敷氏のポリシーが窺える。

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感極まった夜々(光莉を想っていたが封印した経緯がある)は光莉に抱きつく。
抱きつきやハグは多い。グラゼニおにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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詩遠と天音は、微笑み合う。ここは、先に詩遠を掘り下げていたことで深みが増している。グラゼニ・F-エフ-(脚本)等でも、キャラの意外な組み合わせによって生まれるドラマの面白さが出ている。

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要は、(天音への想いがばれたことで)関係がギクシャクしていた桃実に、自分の行くべき道を再確認できたので、復縁したいと告げる。F-エフ-(脚本)では、自分の思う通りに生きろというアニメオリジナルの名台詞があり、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)では、自分の道を行くことの大切さが強調されている。

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一方ミアトルでは、渚砂と玉青のダンス練習が続いていたが、うまく行かず。静馬は、試しに自分と踊ってみる事を渚砂に提案。二人は手を重ねる。
手と手による感情伝達は実に多く見られる。ワンナウツおにいさまへ…(脚本)と比較。

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静馬と渚砂の、情感あふれるダンスを客席で見ていた深雪・水穂・瞳は感嘆する。
客席への切り替えの上手さは、RAINBOW-二舎六房の七人-・はじめの一歩3期(脚本)などでも(主にボクシング場面で)発揮されている。

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愛した事を忘れないための、最初で最後のダンスだとして、渚砂と静馬は踊る。ベルサイユのばら(コンテ)では禁断の愛が、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)では最初で最後の心身の重なりが、F-エフ-(脚本)では生死を超えた愛情が描かれ、重なるものがある。

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静馬と渚砂の、ただならぬ雰囲気のダンスを、玉青は見つめる(玉青も渚砂が好き)。RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)などでも、失恋による心の機敏がしっかり拾われている。

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ダンスが終わり、深雪・水穂・瞳は立ち上がって拍手する。
ここも、RAINBOW-二舎六房の七人-・はじめの一歩3期(脚本)などの客席描写に通じるものがある。

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翌朝、渚砂と玉青は全校生徒の前で、誇りを持ってエトワール選への出馬を表明する。キャラの成長は、おにいさまへ…(脚本)や宝島(演出)など、前面に出ることが多い。

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この出馬表明を受け、色々なキャラ達が拍手する。最終回またはシリーズ終盤で、今まで出たキャラが次々と映る展開は、グラゼニワンナウツ(脚本)などでも見受けられる。

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深雪は静馬の部屋にて、これで自分達の務めは全て終わったと静馬に語り、「これで良かった…そうよね?」と言うのだった。背中を向けるなど、表情を見せないようにする表現はグラゼニワンナウツ(脚本)など多い。

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  • まとめ

本作における高屋敷氏脚本回は、これで最後となる。最終回手前の回だけに、ありとあらゆるキャラの掘り下げが行われ、数多くのプロットが捌かれており、その手腕の見事さに(毎度)驚かされる。

キャラを動かすための計算も、やはり手堅い。今回の場合は、要の動かし方が上手い。
短い尺の中で、彼女の抱えているものを解きほぐしていくあたりは流石。また、「道」についての概念が出たあたりも重要ポイントと言える。

ここにきて、詩遠のキャラを掘り下げているのにも驚かされる。以前の高屋敷氏脚本回では、詩遠のコメディチックな所作を取り上げていたが、今回はシリアスな一面を見せており、深みが増した。

約22分内に詰まっているのが信じられないと思える程の密度の濃さは、RAINBOW-二舎六房の七人-(シリーズ構成・脚本)にて、3キャラ分のドラマを詰め込んだ17話( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/08/11/140022 )を彷彿とさせる。

高屋敷氏は、1980年版鉄腕アトム(脚本)でも、長い原作エピソードをアニメ用に圧縮するのが上手かったが、年を経るにつれ、その手腕が凄まじいものになっていく。
そのピークの一つが、RAINBOW-二舎六房の七人-17話(脚本)だと思う。

また、1話内のドラマの詰め込み具合の凄さは、おにいさまへ…最終回(脚本)でも発揮されており、複数キャラのドラマを描ききっていて圧巻(詳しくは: https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/06/16/135159 )。

そして、「愛」についても色々な形で描かれている。どうも高屋敷氏は「好きとハッキリ伝える」ことが好みのようで、それは担当作の端々に表れている。オリジナル要素が強い本作では、そのポリシーが色濃く出ており興味深い。

本作は、(同性・異性問わず)人を愛することの素晴らしさが、テーマの一つと考えられ、高屋敷氏もまた、それを表すことに一役買っている。脚本陣が監督やシリーズ構成の意向を確実に汲み取る大切さについても考えさせられる。

百合の王道の一つとも評される本作だが、単に「百合を提供する」だけに終始しているわけではなく、様々なキャラを掘り下げ、綿密なプロットを組むことで作品を成り立たせている。高屋敷氏の手腕が、それを大いに助けているのが感じられる作品だった。

ちなみに最終回について少しネタバレすると、エトワール選の結果発表中に静馬が乱入して渚砂に愛を告白する。