カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ストロベリー・パニック10話脚本:笑顔と愛の関係

アニメ・Strawberry Panic(ストロベリー・パニック)は、公野櫻子氏を原作者とした電撃G's magazine読者参加企画のアニメ版(ここでは、アニメ版を扱う)。
女学園でのドラマが展開される。
監督は迫井政行氏で、シリーズ構成は浦畑達彦氏。

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本記事を含めた、ストロベリー・パニックに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

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今回のコンテ・演出は、まつもとよしひさ氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

期末テストに向け、渚砂(なぎさ。主人公)は苦手なフランス語を静馬(しずま。3つの学校の代表“エトワール”を務める)に教えてもらう。渚砂と静馬の距離は縮まり、静馬に笑顔が増えるようになる。

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開幕、静馬(しずま。3つの学校の代表“エトワール”を務める)は木の下で物思いにふけり、渚砂(なぎさ。主人公)への特別な感情を自覚し始める。
おにいさまへ…(脚本)では、木の下にて、思いを込めてバイオリンを弾く場面があり、重なるものがある。

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一方、渚砂はルームメイトの玉青(たまお)、隣室の千早、紀子とランチする。
飯テロは高屋敷氏担当作の定番中の定番。おにいさまへ…(脚本)でも、友達とランチする場面は多かった。

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サマースクール(寮生で行く小旅行)を楽しみにする渚砂だったが、そのためにはテストで及第点を取らねばならない。
渚砂は、苦手なフランス語を玉青に教えてもらう。
ど根性ガエル(演出)など、成績不振ネタは結構ある。

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夜、寮の庭にて静馬は月を見上げて物憂げな表情を浮かべる。
意味深だったり、風流だったりする月の描写は頻出。RAINBOW-二舎六房の七人-・ガンバの冒険(脚本)と比較。

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使いすぎた頭を冷やすため庭に出た渚砂は、木に八つ当たりし、偶然静馬に会う。
キャラの幼い所作は色々な作品に見られる。ガンバの冒険(脚本)、宝島(演出)、チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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フランス語を教えてもいいという静馬の申し出を、一旦玉青のために断った渚砂だったが、当の玉青から、静馬に教えて貰った方がいいと言われる。
手を握る描写は多い。MASTERキートンカイジあんみつ姫(脚本)と比較。

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かくして静馬にフランス語を教えてもらうことになった渚砂だったが、(編入生故に)基本もままならず苦戦。
めぞん一刻(脚本)の、八神(五代を慕う女子高生)が五代に勉強を教わるコメディ展開が思い出される(八神は成績優秀だが)。

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水辺にて、深雪(生徒会長)は静馬と会話する。静馬は、渚砂が困っているから個人授業をしているだけだと語る。
美しい水辺での会話は、あしたのジョー2・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)にもある。

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静馬は、徹夜続きで眠りこむ渚砂を見かけ、優しく対応する。主人公が無邪気に眠りこける展開は結構ある。めぞん一刻(脚本)、宝島(演出)と比較。

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渚砂といると、柔らかな表情を浮かべる静馬を見て、静馬の取り巻きである瞳と水穂は珍しがる。おにいさまへ…ワンナウツ(脚本)、ど根性ガエル(演出)ほか、高屋敷氏は、脇役に存在感を持たせる傾向がある。

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渚砂に勉強を教えながら、静馬は笑顔を浮かべる。キャラが笑い合うシチュエーションは、多くの作品で目を引く。太陽の使者鉄人28号・RAINBOW-二舎六房の七人-・ガンバの冒険(脚本)と比較。

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いよいよフランス語のテストの日を迎え、全力を出した渚砂は、他の教科は一夜漬けで何とかすると玉青に宣言する。
成績不振者の謎の自信は、ど根性ガエル(演出)にも見られた。

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一夜漬け勉強をする渚砂のために、玉青は紅茶を淹れる。
グラゼニ(脚本)では、コーヒーを差し入れるアニメオリジナル場面がある。
食べ物・飲み物を介したコミュニケーションが重視されているのがわかる。

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テストの全日程が終了し、徹夜続きだった渚砂は水辺の木の下で眠り込む。
水辺や木といった、美しい自然がキャラを包む状況は多々描写される。
RAINBOW-二舎六房の七人-・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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渚砂は、自然が織り成す優しい時の中、眠り続ける。眠るキャラと、優しい自然という状況は、めぞん一刻カイジ2期(脚本)にも見られた。

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そんな中、いつしか渚砂は静馬に膝枕されていた。静馬は渚砂の寝顔に惹かれ、渚砂のこめかみ付近にキスする。
無邪気に眠ることで得をする場面は、F-エフ-・めぞん一刻(脚本)にもある。

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夕方、渚砂が目覚めると、静馬の姿は無かった。情緒ある夕暮れ描写は、様々な作品にある。めぞん一刻おにいさまへ…(脚本)と比較。

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その後、渚砂はめでたくフランス語のテストで及第点を取り、玉青と喜び合う。
ハグする場面は多く見られる。おにいさまへ…ガンバの冒険(脚本)と比較。

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静馬へのお礼にと、渚砂は料理部の千早や、たまたま来ていた千華留(ル・リム女学校の生徒会長)らの協力を得てクッキーを焼く。おにいさまへ…コボちゃんマイメロディ赤ずきん(脚本)にも、クッキーを焼く展開がある。

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千華留は、好きな人のためにクッキーを焼いたのだろう、と渚砂にズバリ言うが、冗談だと笑う。
主人公を見守ったり、本心を見抜いたりするキャラは、グラゼニ・F-エフ-(脚本)でも目を引く。

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クッキーを渡すために静馬を探し回るうち、渚砂は転んでクッキーを割ってしまう。飯テロも多いが、食べ物が悲惨な事になる場面も結構印象的。MASTERキートン(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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夕暮れの中、静馬が花を育てている温室に行き着いた渚砂は、やっと静馬に会う。
事情を聞いた静馬は、渚砂の想いを素直に喜ぶ。
おにいさまへ…(脚本)では、奈々子の手作りクッキーを受け取った蕗子(学園の女王的存在)が喜びの言葉を述べる(後に悲惨な事になるが)。

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サマースクールに行ける事を喜ぶあまり、渚砂は盛大に転び、それを助けようとした静馬も倒れ込む。落ちたジョウロの「間」があるが、こういった「物」の意味深描写は要所要所にある。蒼天航路めぞん一刻(脚本)と比較。

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いい雰囲気になる静馬と渚砂だったが、渚砂は、クッキーが更に粉々になったことに気付く。それでも静馬はクッキーを口にして「おいしい」と言い、渚砂にも食べさせる。食べ物で笑顔が広がる場面は、多くの作品で印象的。マイメロディ赤ずきんおにいさまへ…(脚本)と比較。

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クッキーが意外に美味しいので、静馬と渚砂は笑い合う。素直に笑い合う場面は、多くの作品で印象深い。あんみつ姫グラゼニ(脚本)と比較。
あんみつ姫では、「笑うとかわいい」という直球台詞がある。

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一方で、楽しそうにしている二人を偶然見てしまった深雪の心は揺れる(深雪は深雪で、子供の頃から静馬が好き)。失恋場面は、おにいさまへ…(脚本)もインパクトがあった。

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静馬は、(以前に温室の仕事を手伝った)お礼として、渚に花を渡す。
花を介したコミュニケーションもまた、数々の作品に見受けられる。コボちゃんおにいさまへ…(脚本)と比較。

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渚砂が寮に帰ると、千代(渚砂を慕う後輩)が抱きついて、渚砂のテスト結果を祝う。前述の通り、ハグや抱き付きは多い。エースをねらえ!(演出)、おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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深雪は、渚砂が補習にならなくて(学園の面子のためにも)良かったと、静馬に感謝する。静馬は、渚砂自身が頑張ったからだと微笑するのだった。柔らかな微笑は、色々な作品で効果的に使われる。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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  • まとめ

何といっても、「笑顔」がハイライト。今までの話を通しても、静馬がここまでの笑顔を見せるのは初めてで、数多くの作品で「笑顔」を重視してきた高屋敷氏の本領が発揮されている。

あんみつ姫(脚本)では、雪女の娘・小雪(なかなか笑わない)を、あんみつ姫の友情で笑顔にさせる話( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/01/02/132706 )があり、それを思い出さずにはいられない。

あんみつ姫小雪にしろ、今回の静馬にしろ、なかなか満面の笑顔が見られないキャラをどうやって笑顔にするかの過程が、丁寧に描かれているのが凄い。高屋敷氏は話の組み立ての計算が凄まじいが、今回もそれが存分に感じられる。

高屋敷氏の担当作は、やたら「笑顔」が印象に残る。原作つきの場合、アニメオリジナルで笑顔が追加されることもある。
何故なのかは謎だが、並々ならぬこだわりがあるのは確か。人間、笑顔になれば幸せを呼べる…といったようなポリシーが伝わってくる。

先に述べた通り、あんみつ姫(脚本)では「笑うとかわいい」という直球台詞がある。今回は、そういった台詞がなくとも「静馬は笑うとかわいい」が話全体でわかるようになっている。

RAINBOW-二舎六房の七人-(シリーズ構成・脚本)でも、心優しい巨漢・万作の純粋さに、皆が笑顔になる回があり( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/08/18/140046 )、こちらも併せて見ると面白い。

こういった「笑顔」を重視することの根底にあるのは、もしかしたら高屋敷氏の野球経験(球児で、高校野球部監督だった)から来ているのかもしれないと思い始めている(例えば、勝利した時の喜びとか)。

今回含め、あらゆる作品に見られる、心情とリンクする美しい自然描写も気になるところ。こちらも、高屋敷氏自身の実体験に依る所が多いのでは?と思えてきた。
なんにせよ、良いエッセンスになっている。

愛情・友情問わず、「愛ある関係」は「素直に笑い合える」ことが理想だということなのかもしれない。これを踏まえて、高屋敷氏の担当作を見てみても面白そうである。
画像は今回と、めぞん一刻おにいさまへ…グラゼニ(脚本)との比較。

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