カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ストロベリー・パニック6話脚本:「話」の重要性

アニメ・Strawberry Panic(ストロベリー・パニック)は、公野櫻子氏を原作者とした電撃G's magazine読者参加企画のアニメ版(ここでは、アニメ版を扱う)。
女学園でのドラマが展開される。
監督は迫井政行氏で、シリーズ構成は浦畑達彦氏。

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本記事を含めた、ストロベリー・パニックに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

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今回のコンテ・演出は、しのだよしの(篠幸裕)氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

渚砂(なぎさ。主人公)は、静馬(しずま。3つの学校の代表“エトワール”を務める)と温室や音楽室で交流する。
だが静馬は、孤独な面があることが描かれる。

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開幕、部活が生きがいであるという千華留(ル・リム女学校の生徒会長)の独白がある。グラゼニ(脚本)でも、野球が生きがい(「好きで選んだ道」「僕には野球しかありませんから」)である夏之介の独白がある。おにいさまへ…(脚本)でも、バスケに全てを懸ける薫が描かれた。

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一方、隣室の千早が、部活でクッキーを焼くと聞いた渚砂達は、皆で食べるのを楽しみにする。食いしん坊描写は定番。
マイメロディ赤ずきん(脚本)でもクッキーをつまむ場面がある。
また、カイジ2期(脚本)の、カイジがポテチを貪る場面もインパクト大。

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編入したばかりで、どの部にも所属していない渚砂は、色々な部活動を覗く。
美術部を見た彼女は、自分には絵心が無いと自嘲する。じゃりン子チエ(脚本)にて、天才的に絵が上手いヒラメを見て、チエが自分の絵心の無さを嘆く場面が思い出される。

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演劇部を見た渚砂は、自分に芝居は向かないと考える。
おにいさまへ…(脚本)では、演劇部に助っ人として招かれた、れいが印象的だった。劇中劇(アニメオリジナル)の台詞も凝っていた。

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そしてクッキング部で千早達がクッキーを焼いているのを見た渚砂は、「いい匂い」と感嘆する。飯テロは、高屋敷氏の大きな特徴。
クッキーを焼く場面は、マイメロディ赤ずきんコボちゃん(脚本)にもある。

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いつしか隣接するル・リム女学校に足を踏み入れた渚砂は、コスプレを楽しむ「変身部」(千華留が部長)部員、檸檬(れもん)と絆奈(きずな)に出会う。
高屋敷氏は、ダンクーガ(脚本)の亮や忍者戦士飛影(脚本)のダミアンなど、キャラの初登場回を担当することも多い。

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千華留が絆奈の世話を焼くのを見て、渚砂は「お母さんみたい」と笑う。
高屋敷氏担当作は、F-エフ-(脚本)や、ど根性ガエル(演出)など、母性の強調が見られる。

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千華留から、いつでも変身部への参加を歓迎すると言われた渚砂だったが、一先ずミアトル女学園に戻り、そして温室に行き着く。
温室といえば、あしたのジョー2(脚本)の、温室で蝶を追う(廃人化した)カーロスの場面が強烈。

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温室に入った渚砂は、倒れている花を立たせる。花を手入れする場面は、あしたのジョー2(脚本)でも印象に残る。

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花を直した後、手を洗っていた渚砂は、温室に来た静馬(しずま。3つの学校の代表“エトワール”を務める)からハンカチを渡される。手による感情伝達は頻出。ワンダービートSMASTERキートングラゼニ(脚本)と比較。

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静馬が園芸部だと思い込む渚砂を見て、静馬の取り巻きの瞳と水穂は吹き出す(実際は、行事などで使う花を静馬達が温室で育てている)。
高屋敷氏は脇役への愛が深い。めぞん一刻ワンナウツおにいさまへ…(脚本)でも脇役が目立っていた。

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その夜、渚砂は静馬が貸してくれたハンカチを見つめる。
大切なものを持つ手のクローズアップは、様々な作品に見られる。
めぞん一刻・F-エフ-・カイジ(脚本)と比較。

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そこへ、隣室の千早と紀子がクッキーを持って訪ねてきて、渚砂は大喜びする。ここも食いしん坊描写。
グラゼニ(脚本)や宝島(演出)などなど、食べることを心底喜ぶ描写は本当に多い。

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翌日、ハンカチを静馬に返すため温室を訪れた渚砂は、花の手入れをする静馬を手伝う。おにいさまへ…(脚本)でも、花を活ける場でのドラマが展開された。

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心をこめて育てれば美しく咲くから、花はいいものだ…と静馬は語る。
花を絡めた意味深場面は、要所要所で見られる。あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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静馬は、渚砂の顔についた泥を拭く。
憧れの人との交流は、グラゼニおにいさまへ…(脚本)でも濃厚に表現された。

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渚砂は、静馬の瞳の色の濃さに気づく。おにいさまへ…(脚本)では、奈々子が「おにいさま」と慕う武彦の瞳が「暗褐色」であることが再三強調された。

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静馬は渚砂を伴って、正門に花を飾る。
花を愛でたり、花を贈ったりする場面は、色々な作品にある。おにいさまへ…ダンクーガミラクル☆ガールズ(脚本)と比較。

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更に静馬は、渚砂を連れて音楽室に入り、ピアノを弾く(正門に花を飾った後のルーティーン)。
おにいさまへ…(脚本)でも、学園中の憧れの存在・れいがピアノを弾く場面(アニメオリジナル)が強調された。

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静馬は、渚砂を連弾に誘う。人と人の心の交流は、多くの作品で強く描かれる。あしたのジョー2(脚本)、宝島(演出)、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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一方、瞳と水穂は、深雪(生徒会長)に、渚砂と静馬の事を報告する。幼稚園から静馬と一緒だった瞳と水穂は、静馬と渚砂の雰囲気がただならないと主張。ワンナウツ(脚本)同様、ここも脇役のキャラが立っている。

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温室で、静馬とお茶を飲む約束をした渚砂は、寂しそうな顔をしている静馬を目撃する。万病の元としての孤独描写は、前面に出される。MASTERキートンおにいさまへ…(脚本)と比較。

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いざお茶会が始まると、渚砂と静馬は楽しくお茶を飲む。食べたり飲んだりして情愛を深めることもまた、強く描かれる。
おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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お茶会の後、ハンカチを返し忘れた事に気付いた渚砂が温室に戻ると、静馬が一人で泣いていた。ここも孤独描写。
ど根性ガエル(演出)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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こっそりハンカチをテーブルの上に置いて、渚砂は寮に帰る。心配していた玉青(たまお。渚砂のルームメイト)は、渚砂に抱きつく。抱きつきやハグの場面は多い。おにいさまへ…グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。

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夜、深雪は静馬に、(渚砂との事は)本気なのかと問うが、静馬ははぐらかす。不思議と、窓の方を向く絵面は多い。おにいさまへ…(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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本作2話(脚本)と同じく、月が映る。全知全能的な月の描写は頻出。
F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-・ガンバの冒険(脚本)と比較。

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  • まとめ

二人で濃厚な時間を過ごす場面は様々な作品にあり、人と人との心の交流を表現する技量の高さが窺える。年齢や、同性間・異性間を問わない情愛を描いたりする場合が多い。

ピアノの場面では、おにいさまへ…(脚本)、温室の場面では、あしたのジョー2(脚本)が重なってきて面白い。(脚本作なのに)絵面まで似通うのは、シチュエーションが共通するからだと思うが、それにしても(いい意味で)恐ろしい。

花の意味深描写は、70年代から現代に至るまで見受けられるが、今回の静馬の言動や行動を見ると、高屋敷氏自身が花を好むのかもしれない。少なくとも同氏の担当作は、花や木といった自然が多くを「語る」。

「孤独」の表現にも注目したい。救済されるにしろ、されないにしろ、孤独を抱えるキャラは強く描写される。何故なのかはわからないが、こちらも「人と人との繋がり」を描くための大事な要素として機能しているのかもしれない。

また、謎めいたキャラである静馬の掘り下げが、徐々にではあるが進んでいく。
おにいさまへ…・アカギ・ワンナウツ(脚本)ほか、高屋敷氏は、ミステリアスなキャラの内面を紐解いて見せるのが上手い。本作でも、その技術が発揮されている。

メインキャラの掘り下げが進む一方、サブキャラもしっかり掘り下げている。幼稚園の頃から静馬と馴染みであると判明した、瞳と水穂の存在も、今回で重みが増している。

今回渚砂は、静馬といても緊張せずに済み、静馬もやわらかで自然な姿を見せる。
めぞん一刻・F-エフ-(脚本)では、人と心を通わすには、素直でいることが大切という主張が見られたのだが、今回も静馬と渚砂が「素直」。高屋敷氏のポリシーが窺える。

本作は、超能力や冒険といった「アニメ映え」する要素がない分、脚本力やキャラの魅力が大きなウェイトを占める。
シリーズ構成の浦畑氏はじめ、ふでやす氏も高屋敷氏も、しっかりとした脚本力の持ち主。脚本陣の実力と技術が大いに発揮されており、脚本の重要さを実感できる。