カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

F-エフ-14話脚本:新たなる目標

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテ/演出が古川順康氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

FJ1600レースで優勝した聖(軍馬のライバル)の祝勝パーティーに招待されたタモツ(軍馬の親友で、メカニック)と軍馬。軍馬は、招待を断固拒否するが、タモツは行くことに。
結局、軍馬も気になってパーティーに乗り込むが、軍馬の目の前で、聖はF3へのステップアップを宣言。軍馬は衝撃を受ける。また、タモツの才能を欲する聖は、タモツを口説くことも継続する。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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聖(軍馬のライバル)の祝勝パーティーに行くと言うタモツ(軍馬の親友で、メカニック)に、いい気分がしない軍馬は、土手に寝そべって考え事をする(アニメオリジナル)。
太陽のアップ・間が出てくるが、このような場面は、高屋敷氏の担当作に実に多く出てくる。空手バカ一代演出/コンテ、あしたのジョー2脚本、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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また、自然が形成する「間」も、多くの高屋敷氏担当作に見受けられる。特に今回のは、めぞん一刻脚本と似たような「間」が形成されている。脚本は画の管理はできないはずだが、完成映像の「間」が似てくるのは、いつも不思議。

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森岡(軍馬やタモツのバイト先の社長で、軍馬達のレース活動を援助)は、軍馬との仲を一番に考えた方がいいと、タモツに助言。

一方軍馬は、レース予選で大怪我をした岸田(軍馬を慕うインテリ青年)を見舞う(アニメオリジナル)。置いてあったリンゴを、軍馬がすぐさま食べるあたり、食いしん坊描写が多い高屋敷氏の特徴が出ている。陽だまりの樹・チエちゃん奮戦記脚本、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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また、照れくさそうに岸田を気遣う軍馬の態度は、ど根性ガエル演出にて、町田先生を見舞うのを恥ずかしがる、ひろしと被ってくる。岸田まわりのドラマ(アニメオリジナルが多い)はどれも、ど根性ガエル(高屋敷氏は演出で参加)を思わせる。

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その頃タモツは、迎えに来た聖の車に乗り、パーティーに向かっていた。
それを見た森岡は、軍馬に電話し、タモツは心配事があるみたいだから、一度よく話し合った方がいいと言う。

夕方、いつも夕飯を作ってくれる、さゆり(アパートの大家)が所用で不在なので、軍馬はトマトをつまみ食い。つまみ食いはアニメオリジナルで、ここも、高屋敷氏の食いしん坊描写が炸裂。カイジ2期・キャッツアイ・新ど根性ガエル脚本と比較。

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続いて帰宅した純子(軍馬と同じアパートの住人で、ヒロインの1人)は、他の住人もいないので、軍馬を外食に誘う。軍馬は大喜びして純子を口説こうとするが、殴られた上、ドアに激突(アニメ追加シーン)。ここも、ルパン三世2nd(演出/コンテ)のルパンと不二子っぽい。基本、純子と軍馬のドタバタは、ルパン三世っぽさがある。

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見栄を張って、純子に食事を奢ると言ってしまった軍馬は、金を探して、タモツの部屋を漁る。
偶然、タモツが床下に隠していた通帳を発見した軍馬は、預金が殆ど無い事を知り、衝撃を受ける(原作より、預金残高が1桁少ない)。

その時電話がかかってきて、純子が電話に出る。だが、電話はすぐに切れる。電話の主はユキ(軍馬を慕う、赤木家の使用人)であった(アニメオリジナル)。ユキは雰囲気が変わっており、煙草を吸う。高屋敷氏は、喫煙場面をじっくり描写する。めぞん一刻カイジ脚本と比較。

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結局、軍馬と純子は、屋台のラーメンを食べる(原作ではファミレス)。ここも、ラーメンをがっつく軍馬が食いしん坊。
麺類つながりで、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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軍馬と純子は、食後にファミレスで話す。
コーヒーのアップ・間が出てくるが、こういった「間」も、高屋敷氏の担当作に頻出。カイジ2期・めぞん一刻・DAYS脚本と比較。

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軍馬は、純子の恋人で、F3ドライバーだった龍二(事故死している)の資金繰りについて、純子に尋ねる。
純子は、彼がバイト三昧で苦労していたと答え、グラスをいじる。グラスをいじるのはアニメオリジナル。「手が語る」シーンも、高屋敷氏はよく出す。グラゼニめぞん一刻MASTERキートン脚本と比較。

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話を変えたい純子は、今からでも聖のパーティーに行くよう、軍馬に進言。結局軍馬は、改造トラクターを駆って聖のパーティーに行くことに(アニメオリジナル)。

一方タモツは聖に、メカニックのバイトを紹介して欲しいと頼みこんでいた。
聖は快諾するが、本当は自分のメカニックをやってほしいと、タモツを口説く。

パーティー会場に乗り込んだ軍馬は、砂井(軍馬と確執のある上位ランカー)と対峙、砂井をプールに突き落とす。騒ぎを聞き、駆けつけたタモツに、軍馬は「迎えに来た」と言う。そこへ聖が現れ、まだタモツに用があると、タモツを引き止める(アニメオリジナル)。まるで恋愛ドラマのようなゴタゴタは、めぞん一刻の脚本経験が生かされていると思う。

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軍馬は聖を煽るが、聖は、これからF3に上がるので、もう軍馬とレースする機会が無いことを告げる(原作では、F3に上がるタイミングはここではない)。また、「すぐ追い抜いて見せる」と言う軍馬に、そういう事は完走してから言え、と一喝。

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軍馬はタモツに、「お前は俺の相棒だ」と念押しして、その場を去る。ここは、軍馬の友情が強調された、高屋敷氏らしいアニメオリジナル。

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軍馬は、外で待機していた純子と共に、改造トラクターで帰路につく(アニメオリジナル)。坂道遠近が、エースをねらえ!演出と重なってくる。出崎統氏がよく使うものだが、何故か高屋敷氏は、演出やコンテだけでなく、「脚本」からでも、これを「出力」する。そもそも「港町」「丘の上」というロケーション設定があるからだろうか。

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軍馬は純子に、F3にステップアップする方法を尋ねる。純子は、FJ1600での年間ポイントや優勝経験、そして資金が要ることを説明。思い詰めた顔で、軍馬はそれを聞く。

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このように、聖まわりのアニメオリジナルは、軍馬のモチベーションを上げるよう機能している。

パーティーに居残ったタモツは、聖にF3マシンを見せられる。その際、ランプがアニメオリジナルで映るが、高屋敷氏は、演出作・脚本作ともに、本当にランプをよく出す。挙げればキリが無いが、らんま・アカギ・RIDEBACK脚本と比較。

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聖は、マシンを好きに触っていいと言って、ルイ子(聖の恋人)とタモツを二人きりにする。ルイ子はタモツを誘惑するが、タモツは困惑して拒否し、後ずさった拍子に機材に頭をぶつけて気絶する(原作では、逆ギレしたルイ子に追い出される)。

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その後タモツは、「見損なった」と聖を責めるが、聖は、メカニックに軽蔑されてこそドライバーである、と満足気に語る。

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原作通りだが、この台詞の伏線が、以前(11話)に、アニメオリジナルで出ている(「レーサーは、マシンとメカニックに惚れられたらおしまい」)。原作とアニメの連携が面白い。

聖は、気が向いたらいつでも自分の所に来て欲しい、とタモツに告げる。
その場を去りながら、タモツはマシンを見つめる。「もの言わぬもの」の意味深な「間」に、高屋敷氏の特徴が出ている。1980年版鉄腕アトムワンダービートS蒼天航路脚本と比較。

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  • まとめ

アニメでは、1話からずっと、軍馬が聖を追いかける構図になっている。軍馬が敗北を知ったのも、レーサーになろうと決意するのも、(アニメでは)聖が絡んでいる。
そして、やっと聖と同じ土俵(FJ1600)に上がったと思ったら、聖はF3に上がってしまう…。今までの積み重ねによって、軍馬の焦燥が視聴者にもわかるようになっている。

聖に刺激されてレーサーを目指してきた軍馬は、前回にて、自分はレーサーであると覚醒した。ある意味、目標の1つを達成したとも言える。
今回の聖のF3進出は、そんな軍馬に、新たな目標を与えたことになる。この構成も上手い。

しかし聖は、(現時点では)軍馬ではなくタモツに注目しており、その点でも、軍馬の苛立ちは募る。恋愛ではないのだが、矢印が乱れ飛ぶ人間関係は、恋愛ドラマのような様相で、前も書いたが、高屋敷氏の、めぞん一刻最終シリーズ構成・脚本経験が大いに生きていると思う。

また、パーティーに乗り込んで、「お前はオレの相棒だ」とタモツに宣言する軍馬が熱い。男の友情を長年描いてきた、高屋敷氏らしいアニメオリジナル。忍者戦士飛影脚本でも、敵に利用された親友に対し、主人公のジョウが、「お前は俺のかけがえのない親友だ」と言うシーンがあり、それを彷彿とさせる。高屋敷氏は、直球を投げる時は直球。

軍馬とタモツの絆を強調したアニメオリジナル部分(軍馬がタモツを迎えに、パーティーに乗り込む)は、後の展開を考えると、ドラマチックだと思う。アニメオリジナル部分は、いつもドラマを盛り上げる役割を果たしており、感心させられる。

他にも、アニメオリジナル場面と原作通りの場面が連携を取っている箇所がいくつも見られる。近年の高屋敷氏のシリーズ構成作・脚本作に比べて、本作は大胆なアニメオリジナル展開が多い割に、その作りが丁寧。高屋敷氏の筆が乗っているのが、毎度確認できる。

あと、1話あたりの密度が濃いのに、情感があったり、意味深だったりする「間」があるのも凄い。新ど根性ガエル(殆どが2話構成)脚本にて、実質10分ちょっとしかない尺に、情感ある「間」を入れたりしているのを踏まえると、高屋敷氏は、密度や尺の使い方が巧みだと感じる。

そして、軍馬と会話させることで、聖の激情を引き出したアニメオリジナル部分も、意義がある。1話でも、アニメオリジナルで、聖が軍馬に躍起になるシーンがあり、軍馬と聖は、剥き出しの感情をぶつけ合える関係でもある事が強調されている。

今回は、シリーズを通した、軍馬と聖の関係を再確認できる回でもあった。同時に、高屋敷氏の構成の、数々の計算高さも感じられる。本作は、シリーズ構成作としても、高屋敷氏の並々ならぬ熱意が感じられ、見ている側も熱くなる。今後も楽しみである。