カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫15話脚本:計算高い話作り

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ・演出は立場良氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧: http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB 

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  • 今回の話:

おはぎの局(女中頭)の入浴を覗いた不審者を、城の皆で捕まえた所、その正体は写楽という浮世絵師だった。
彼は芸術の為の刺激を欲しており、あんみつ姫達は、それに協力することに。
だが写楽は遊び人で金使いが荒く、おまけに嘘つき。城の皆に懲らしめられる写楽だったが、その最中にアイディアが閃き、素晴らしい襖絵を描く。それからというもの、写楽は次々と名作を世に出す。
一方、城は写楽の襖絵を十両という破格で買ったが、その分、あべかわ(家老)は城の皆から給料をさっぴくのだった。

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冒頭、入浴中のおはぎの局(女中頭)が、お月様が綺麗だと言うが、月が綺麗と言ったり、月にまつわる話をしたりする場面は、他の高屋敷氏担当作に結構ある。
めぞん一刻・F-エフ-・蒼天航路(脚本)と比較。

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めぞん一刻・F-エフ-では、月が綺麗という会話(アニメオリジナル)、蒼天航路では、月にまつわる会話(月の満ち欠けや、次の日の天候が読める話など)をする。
とにかく高屋敷氏は、月や太陽に重要な役割を与える。

翌日、洗濯物がはためくカットがあるが、出崎統氏がよく出す演出であり、出崎統氏と長年仕事した高屋敷氏も、よく出す。(絵に関与できない)脚本上から出してくるのが、同氏の不思議なところ。
チエちゃん奮戦記・あしたのジョー2・F-エフ-(脚本)と比較。この中で、あしたのジョー2は出崎統氏のコンテ。

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おはぎの局の入浴を覗いた者が出たということで、腰元達は城の男性陣を疑う。高屋敷氏は、モブによく喋らせ、個性を与える傾向がある。らんま(脚本)でも、アニメオリジナルでモブ達の会話が大幅に追加されていた。

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おとり捜査や張り込みを行い、城の皆で不審者を捕まえた所、その正体は浮世絵師の写楽ということが判明。
ルパン三世2ndの高屋敷氏脚本回の一つに、写楽三世なる人物が出て、ルパン達が写楽の絵を盗む話がある。関連性が面白い。

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芸術の為の刺激が欲しかったと弁明する写楽に、あべかわ(家老)は刺激のある辛い食べ物を次々と食べさせる折檻をする。
ルパン三世2nd(脚本)では、毒入りリンゴを無理矢理ルパンの口に突っ込む拷問が出てくる。

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折檻の仕上げに、写楽は水をぶっかけられる。原作つき・オリジナルともども、高屋敷氏は水ぶっかけに縁がある。F-エフ-・らんま・カイジ2期(脚本)と比較。

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写楽に対する折檻がやりすぎだとして、あんみつ姫写楽を保護するが、そこへ蔦屋という者が来て、写楽を引き渡して欲しいと、あんみつ姫に金貨を握らせる。
見損なうなと言って、彼女は蔦屋の手を払いのける。手と手によるコミュニケーションは頻出。F-エフ-(脚本)と比較。どちらも敵意を表す。

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あんみつ姫に甘やかされた写楽は調子に乗り、派手な宴会を開く。ご馳走が映るが、飯テロは数多い。グラゼニ・F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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散々遊んだ写楽は、酔っ払って眠りこける。同じような描写は、しばしばある。ど根性ガエル(演出)、陽だまりの樹カイジ2期(脚本)と比較。

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そして写楽は、嘘つきで金使いが荒く、おまけに妻子を泣かせる最低男であることが、城の皆にバレる。
怒ったあんみつ姫は、写楽を投げ飛ばす。スイング系の技は、多々見られる。忍者戦士飛影じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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ちなみに忍者戦士飛影も本作も、案納正美氏が監督。

てんやわんやの騒動の最中、写楽は芸術のアイディアが爆発(元ネタは芸術家・岡本太郎氏の「芸術は爆発だ」)、火山のイメージが出る。忍者戦士飛影・太陽の使者鉄人28号に出た(本物の)火山と比較。

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城の襖に素晴らしい絵を描いた後、城を出た写楽は名作を次々と世に出す。前述のルパン三世2nd(脚本)の、写楽の絵を盗む話でも、写楽の作品が出てくる。

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城の総意として、写楽の襖絵は十両で買い上げられたのだが、あべかわは皆の給料から、代金分をさっぴいていくと宣言するのだった。
給料をさっぴくネタは、高屋敷氏が演出参加した、ど根性ガエルによく出ていたほか、キャッツアイの同氏脚本にも出ている。

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また、こういった多段オチは、コボちゃんの脚本等によく見られるし、多数のプロットを器用にさばく脚本技術は、高屋敷氏の得意とするところ。

  • まとめ

高屋敷氏の(当時の)経験が色々使われているのがわかる。

特に、ルパン三世2nd(脚本)の写楽ネタとの繋がりは驚かされた。
話は全然違うのだが、ルパン三世2ndでは、写楽三世と不二子がルパンを騙そうとし、今回は写楽が城の皆に大嘘をつく。
そして、ルパン三世2ndではルパンが写楽三世と不二子を騙し返し、今回の場合は、あんみつ姫写楽を投げ飛ばす。
この共通点も面白い。

あと、色々なプロットや伏線が出ているのだが、それぞれに緻密な計算が見られるのも見所。
これは、複雑かつ多数のプロットを動かす必要があった、じゃりン子チエの脚本経験が大いに生きていると思う。

多段オチについては、コボちゃんの脚本や、監督作の忍者マン一平に多く見られる。こちらも、高屋敷氏の「計算高さ」が見られる。

F-エフ-やワンナウツカイジといったシリーズ構成作では、各話内の構成も、シリーズ全体の構成も、非常に巧妙な計算が成されており、まさに高屋敷氏の才が爆発している。
(F-エフ-のシリーズ構成については、こちらを参照→ http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/12/23/134341 )

また、写楽のつく嘘が割と具体的で巧妙なあたりは、頭を使ったり、悪知恵を働かせるキャラクターを好む高屋敷氏らしい。

そしてつくづく、同氏の経験の豊富さ、計算高さに感心させられる回だった。