カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RAINBOW-二舎六房の七人14話脚本:風に乗る魂

アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテ/演出は矢嶋哲生氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

殺された六郎太(少年院の二舎六房の古株でリーダー)の仇を討つため、真理雄(二舎六房の熱血漢)は沼津にて石原(少年院の元看守)と対峙。他の5人は、市長選挙に出馬した佐々木(少年院の嘱託医師)を失脚させるべく動く。

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市長選挙に出馬した佐々木(少年院の嘱託医師)は、少年院の二舎六房にいた面々(出所済)の罠にはまり、丈(二舎六房の一人。美形)に銃で脅される。丈がウインクするが(アニメオリジナル)、ウインクはしばしば見られる。宝島(演出)、グラゼニ(脚本)と比較。

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二舎六房の5人は、佐々木を砂浜に埋め、満潮になると溺れ死ぬことになる、と脅す。佐々木は必死に命乞いをする。

一方沼津では、石原(少年院の元看守)との
対決を終えた真理雄(二舎六房の熱血漢)が海を見ていた。

双方の地で満月が映る。全てを見るものとしての月は頻出。陽だまりの樹(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、はじめの一歩3期(脚本)、宝島(演出)と比較。

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溺死寸前まで追い詰められて失神した佐々木だったが、目を覚ますと、拉致される前にいた旅館の布団の中だった。佐々木は手を見つめる。手による感情表現は多い。はじめの一歩3期・F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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その後、天気雨が降る中、節子(二舎六房の面々を手助けした看護婦)の前に真理雄が姿を現す。雨を強く印象づける状況は、色々な作品に見られる。おにいさまへ…(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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節子は真理雄を、アパートの自室に入れる。流しで皿を拭く「間」があるが、流しまわりの「間」は、結構見られる。おにいさまへ…・F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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真理雄は、石原と対峙した結果を節子に話す。
重度のヒロポン中毒の石原は、夕焼けの中、真理雄を六郎太(死亡した、二舎六房の古株でリーダー)と勘違いし、殺してくれと言う。夕焼け(アニメならではの表現)を強調する状況作りは数多い。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)、宝島(演出)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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もはや人間とは言えない「ゴミ」となっている石原を殺しては、六郎太の魂が穢れるとして、真理雄は石原を殺すのをやめ、突き放す。

既に六郎太は、石原との決着をつけていたと真理雄は節子に語り、晴れた空を見上げる。光を使って心情や状況を表す描写は、数々の作品で印象に残る。グラゼニ(脚本)、宝島(演出)、はじめの一歩3期(脚本)と比較。

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六郎太が真理雄を守ってくれたのだ…と節子は思う。空に虹がかかる。
虹がかかるのはアニメオリジナル。
虹は、特に高屋敷氏の演出作に色々見られ、脚本作だと意味が重くなる。
F-エフ-(脚本)、宝島(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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二舎六房の残りの5人は、佐々木が演説する会場の放送室を占拠し、(砂浜に埋められた際に)自らの悪事をぶちまけた佐々木の言葉を収録したテープを流す。
ど根性ガエル(演出)にて、復讐の一環として放送室を占拠する場面が重なる。

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会場じゅうに流れる、自分の恥ずかしい告白(少年院の少年を犯していたこと等)を耳にしながら、佐々木は手もとに汗をたらす。ここも、「手」による感情表現。おにいさまへ…グラゼニカイジ(脚本)と比較。

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佐々木は完全にノックアウト。二舎六房の面々は満足する。
憎たらしい敵を知略で倒すカタルシスは、ど根性ガエル(演出)やカイジ2期(脚本)でも、上手く描かれている。

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結局佐々木は落選し、富も名誉も失う。破れた選挙ポスターが風ではためく。風が吹くのはアニメオリジナル。風は多くの作品で「活躍」する。チエちゃん奮戦記・めぞん一刻グラゼニ(脚本)と比較。

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節子は六郎太の墓に手を合わせる。
彼女は墓に優しく触れ、前に進む決意をする。墓に触れるのはアニメオリジナル。
魂のこもった物に優しく触れる場面は多々ある。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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少年院時、将来の夢を刻んだ木(5話参照)の下に集った6人は、互いの戦果を確認し、節子から貰った、六郎太の体に入っていた銃弾を手にする。
「木」もまた、様々な作品で存在感を発揮している。じゃりン子チエ(脚本)、宝島(演出)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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これからどうするかを語りながら6人が歩いていると、風が吹く。木の方を振り返った真理雄は、そこに六郎太の幻影を見る。
風が吹くのはアニメオリジナル。ここもまた、風の「活躍」。おにいさまへ…めぞん一刻・F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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復讐を果たした二舎六房の6人は、まだ見ぬ未来へと進むのだった。
それぞれに色々な夢があるが、ど根性ガエル(演出)の、将来の夢を語る回が思い出される。

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  • まとめ

月や風、雨、虹、木といった「自然」の活躍が目立つ。特に、アニメオリジナルを交えてでも発生させた「風」は印象深い。
ラスト近く、「風」の吹く先に六郎太の姿が見えるのは上手いアレンジ。

こういった「自然」を使った表現が高屋敷氏の担当作に多いのは、同氏が「花鳥風月」を大切にしているからなのでは?と思えてきた。思い起こせば、この要素は頻出。また、季節の移ろいを表す言葉を、アニメオリジナルで追加することも多い。
これらは、作品世界に奥行きを与えている。

高屋敷氏の担当作を見ていると、「原作つきアニメは、ただただ原作をなぞっても原作通りにならない」のではないか…と思うことがある。原作のテンポをアニメ用のテンポにするとか、台詞を映像作品用に改変するとか、そういった工夫が必要なのではないだろうか。同氏は、それが非常に上手い。

あと、ど根性ガエル(演出)にしろ、カイジ(シリーズ構成・脚本)にしろ、今回にしろ、「知略による痛快な復讐」の組み立てが秀逸。これはやはり、ど根性ガエル19B話(演出)の、カタルシス満載の復讐劇が根幹にありそうな気がする。
とにもかくにも、ど根性ガエル19B話は重要回かつ、傑作回。

シリーズ構成としても、1クールの節目(13話が総集編なので、今回が実質13話)に復讐完遂話を持ってきている手腕が光る。そのために、どこを削って、どこを足すのかといった工夫が随所に見られる。相変わらず、高屋敷氏はそういった計算が凄い。

今回(またはシリーズ全体?)のテーマの一つとして、「前に進め」がある。これは、高屋敷氏が演出参加した家なき子の主要テーマであり、F-エフ-・カイジ(シリーズ構成・脚本)でも前面に出ている。同氏のこだわりが感じられる。

そして気になるのは、しばしばアニメオリジナルを交えてでも強調される、「夢を持つことの大切さ」。こちらもまた、「未来」と絡んでおり、あらゆる作品を通して高屋敷氏が何を訴えたいのかが見えてくる。カイジ2期最終回(脚本)のラストシーンの通り、「未来は僕らの手の中」なのだ。

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