カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RAINBOW-二舎六房の七人15話脚本:仲間の存在

アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテは笹木信作氏で、演出が米田和博氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

節子(看護婦)に秘めた想いを抱く真理雄(元・少年院の二舎六房の一人。熱血漢)だったが、節子は見合い結婚することに。
そんな折、勤務先にて乱暴な客を殴った罪で、真理雄は逮捕されてしまう。
元・二舎六房の面々は、真理雄を救うべく動く。

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開幕、節子(少年院の二舎六房の面々を助けた看護婦)の住むアパートと、花が映る。
花による「間」は、多々見られる。
めぞん一刻・F-エフ-(脚本)、家なき子(演出)と比較。
このうちF-エフ-も、開幕に花が映る。

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(少年院を脱走したため)節子の親戚の空き家を隠れ家にしている真理雄(元・二舎六房の熱血漢)は、節子に家賃を払いに来たついでに、映画に誘う。
節子は、誘いを受ける。
じれったい恋愛模様は、めぞん一刻(脚本・最終シリーズ構成)を彷彿とさせる。

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日増しに、亡き六郎太(節子と相思相愛だった、二舎六房の古株でリーダー)に似てくる真理雄に、節子の心は揺れる。
風が吹くが、感情や状況と連動する風の描写は多い。めぞん一刻おにいさまへ…(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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その後節子は、(親の都合で)お見合いをする。(ベタではあるが)鹿威しの演出など諸々、めぞん一刻(脚本)とシンクロ気味。

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夜、元・二舎六房のメンバーである昇(小柄)や丈(美形)が、真理雄の勤めるバーに遊びに来る。仲睦まじい様子の3人に、マスターの早川は目を細める。
優しい中高年キャラは、あらゆる作品で印象に残る。宝島(演出)、F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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バーの看板が消灯する描写があるが、ランプの意味深な点灯・消灯描写は数多い。めぞん一刻グラゼニ(脚本)と比較。

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また、ランプの醸し出す「間」も頻出。アカギ・カイジ2期・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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真理雄は、煙草に火をつける。煙草描写は強めに表現され、心情と連動する重要な小道具として扱われる。アカギ・カイジ・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。

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真理雄は、丈と昇に、節子との事を散々からかわれるのだった。

後日、風鈴屋の風鈴が鳴るなか、節子は電話で両親と話す。親の事情を汲み、節子は縁談を進めることにする。
風鈴はアニメオリジナル。しばしば、風鈴による「間」は出てくる。めぞん一刻コボちゃん(脚本)と比較。

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約束通り、映画を見に行った真理雄と節子は楽しい時を過ごし、土手で語らう。ここでも、花が映る(アニメオリジナル)。F-エフ-・めぞん一刻(脚本)、空手バカ一代(演出)と比較。

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(見合いの事を言い出せないままだが)いい雰囲気の真理雄と節子の視線の先に、夕陽がある(アニメオリジナル)。いい雰囲気の男女が夕陽を眺めるシチュエーションは結構ある。
マッドハウス版XMEN・蒼天航路(脚本)と比較。

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その後、心が弾む真理雄は、夢中でサンドバッグを叩く(六郎太からボクシングを教わった経験がある)。
昇は、デートの結果を察してからかう。アニメオリジナルの台詞が幾つか追加されており、幼い。幼く微笑ましい友情表現は、高屋敷氏の真骨頂。

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真理雄は、節子が六郎太を想っていることを承知しており、節子の笑顔が見ることができれば満足だった…という旨のナレーションが入る。この内容はアニメの追加。高屋敷氏は「笑顔」に強いこだわりを持っていると考えられるのであるが、それが如実に出ている。

偶然、節子の結婚話を知った丈は、それを真理雄に伝えるが、少年院から逃亡中の自分には何もできない…と真理雄は答える。
電車が通るが、こういった(長年一緒に仕事した)出崎統氏的表現は効果的に使われる。めぞん一刻あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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真理雄がバーに戻ると、酔った客が暴れており、早川が困っていた。
真理雄は、客を締め上げる。
ピンチの中高年キャラを助ける状況は、多くの作品で強調されており、中高年の人に優しくあれという、同氏のポリシーが感じられる。宝島(演出)と比較。

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2発先に殴っていいと真理雄は客を煽り、きっちり2発殴られた後、客を吹っ飛ばす。若さ故の暴力沙汰は、F-エフ-(脚本)や空手バカ一代(演出/コンテ)が思い出される。

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客が逃げた後、早川は、何故あんな事をしたのか真理雄に問う。客に非があると、真理雄は答える。
グラスの「間」があるが、こういった表現は、沢山見られる。ワンナウツグラゼニカイジ2期(脚本)と比較。

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「そういうのは、嫌いなんだ」(アニメオリジナル台詞)と、早川は真理雄にクビを言い渡し、真理雄はショックを受ける。
空手バカ一代(演出/コンテ)で、飛鳥から、若さ故の私闘を強く諌められた高津が思い出される。

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翌日、真理雄は早川に、昨夜の過ちを詫び、今までの礼を言う。
早川は、優しい笑みを浮かべる(アニメオリジナル)。高屋敷氏は、アニメオリジナルで笑顔を追加する傾向がある。グラゼニおにいさまへ…(脚本)と比較。

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そこへ、昨夜の客が警官と共に現れ、真理雄は逮捕されてしまう。
それを知り、早川のバーに集った二舎六房の面々は、真理雄を助けるため動くことにする。
仲間同士の絆は、カイジ2期(脚本・シリーズ構成)でも強く描かれた。

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君達は何者なのだ…と早川に問われ、昇は「二舎六房の七人」と答える。原作通りだが、高屋敷氏の大きなテーマの一つ「自分とは何か」に繋がり、今回の肝の一つとなっている。

二舎六房の面々は早川に頭を下げ、真理雄が戻ったら温かく迎えてやって欲しい、彼は自分達の大切な仲間だから…と頼む。
彼等を見て、早川は微笑む。ここも、アニメオリジナルで笑顔が追加されている。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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忠義(二舎六房の一人。いかつい自衛官)は真理雄に面会しようとするが、接見禁止のため叶わず(原作では1回面会する)。
アニメオリジナルで雨が降っている。色々な作品で、雨はドラマを盛り立てる。ワンナウツ(脚本)、空手バカ一代エースをねらえ!(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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忠義は、真理雄を必ず救い出す…と改めて決意する(起訴されて有罪となれば、少年刑務所行きで、7年は出てこれない)。
原作では、1回面会できているので、忠義はこれを真理雄に直接言う。
アニメでは、以心伝心に重点を置いている。台詞→以心伝心の改変は、他の脚本作にも見られる。

早川のバーに集った二舎六房の5人は、龍次(頭脳派)の立案した作戦をもとに真理雄を救うべく、誓いの乾杯をする(全員での乾杯はアニメオリジナル)。
グラゼニ(脚本)の場合は友情の証として、ルパン三世2nd(脚本)では作戦成功を祈って、乾杯が強調されている。

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一方、真理雄は検事から酷い締め上げを食らうのだった。豹変して激しい言葉をぶつける検事は、カイジ(脚本)の、豹変してギャラリーを叱咤する利根川が思い出される。

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  • まとめ

まず、「花」について。
前述の通り、花は要所要所で使われており、特に、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)では多用された。
「自然」や「物」に重要な役を振る、高屋敷氏の姿勢が感じられる。

前半にて、真理雄と節子の恋模様が描かれるが、めぞん一刻(脚本・最終シリーズ構成)を思い出さずにはいられない。
偶然にも、女性側が、愛する人と死別した経験を持つのも、男性側が年下なのも同じ。

中盤の、真理雄の暴力沙汰は、空手バカ一代45話(演出/コンテ)と重なっていく。
どちらも、若さ故の正義感と激情が暴力となって表れ、それを大人から諌められる。
今回の早川のアニメオリジナル台詞「そういうのは、嫌いなんだ」が重い。

警察に捕まった真理雄を救うべく、仲間が行動を開始するが、カイジ2期(シリーズ構成・脚本)やF-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)でも、仲間愛が前面に出ている。
「仲間がいるから自分がいる、自分がいるから仲間がいる」は、高屋敷氏が強く打ち出すテーマの一つ。

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昇が、「俺達は(略)二舎六房の七人!」と胸を張って言うのは、「かけがえのない仲間の存在による自我の確立」も表しており、高屋敷氏の掲げる重要なテーマ「自分とは何か」と絡まる。
原作に忠実ながら、自身の長年のテーマと上手く合わせる同氏の技が見られる。

そして、「笑顔」も印象深い。アニメオリジナルで笑顔を追加するのは、グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも顕著。
台詞やモノローグ、ナレーションでも「笑顔」について語る箇所が目を引く。
笑顔による感情表現を、大切にしているのかもしれない。

シリーズ構成としても、仲間一人のために皆が尽力することが、原作もアニメも肝なのだということを、段階的に視聴者にわからせる作りになっている。
それを二舎六房の6人に教えたのは、亡き六郎太。だからこそ「二舎六房の“七人”」なのではないか…と、考えさせられる。

16話は(高屋敷氏脚本ではないため)特集しないので少しネタバレするが、仲間達の奔走によって、証人による上申書が提出され、龍次の必死の言動/行動もあり、真理雄は罰金のみで済む。詳しくは視聴をおすすめする(色々配信やレンタルあり)。