カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

怪物王女12話脚本:少年を描く筋道

アニメ・怪物王女は、光永康則氏の漫画をアニメ化した作品。怪物達の王の娘(通称“姫”)を中心に巻き起こる騒動を描く。監督は迫井政行氏で、シリーズ構成はふでやすかずゆき氏。
今回のコンテは、きみやしげる氏で、演出は浅見松雄氏。脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、怪物王女に関する記事一覧(本記事含む):

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E6%80%AA%E7%89%A9%E7%8E%8B%E5%A5%B3

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  • 今回の話:

雨に濡れたせいで、姫(怪物達の王の娘)は風邪をひく。また、ヒロ(姫が蘇生させた少年。半不死)の姉である紗和々も風邪。
そんな中、ミイラを従えたファラオが襲撃してくる。

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開幕、月が映り、(今回襲撃してくる)ファラオがそれを横切っていく。月を印象づける描写は多い。RAINBOW-二舎六房の七人-・ガンバの冒険ワンダービートS(脚本)と比較。

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曇り空の下、ヒロ(怪物達の王の娘・姫が蘇生させた少年。半不死)は謎の大男にぶつかる。そして雨が降ってきて、ヒロはずぶ濡れになる。このくだりはアニメオリジナルであり、伏線。高屋敷氏は、誰が何をしてどういう結果になるかを、理詰めで攻める構成をする傾向がある。

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帰宅したヒロは、風邪をひいた紗和々(ヒロの姉)から、駅前で雨宿りしている姫を迎えに行き、風邪薬と、行きつけの喫茶店のパフェを買ってくるよう頼まれる(アニメオリジナル)。コボちゃん・チエちゃん奮戦記(脚本)ほか、食いしん坊描写は数々の作品にある。

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紗和々の頼みを快諾したヒロだったが、途中でシャーウッド(姫の妹)とフランシスカ(シャーウッドの家来。人造人間)に会う。
シャーウッドは、強引にヒロをゲームセンターに誘う。これもアニメオリジナルで、後の展開の伏線。とにかく高屋敷氏の構成はシステマチック。

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一方、姫とフランドル(姫の家来。人造人間)は、雨の中待ちぼうけをくらう。
ここもアニメオリジナルで、こういった要素要素が繋がっていく。
また、雨の中で人を待つシチュエーションは、めぞん一刻あしたのジョー2(脚本)でも印象的。

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シャーウッドは、フランシスカとヒロを従え、ゲームセンターで遊びまくる。
ゲームセンター描写は、F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)でも出てくる。どれもアニメオリジナル。

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ヒロがシャーウッドから解放された頃には雨が上がっており、待ち合わせ場所に姫はいなかった。そんな彼を、冒頭に出た大男(ミイラ)が尾行。それを見かけた令裡(吸血鬼)は面白がる。これもアニメオリジナルで、エピソードを織り成していく。こういった所も計算が細かい。

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ヒロが屋敷に帰ると、雨の中を歩いたせいで、姫が風邪をひいていた。あらためてヒロは風邪薬を買いに行くが、薬局は休み。
原作では、姫は最初から風邪をひいているのだが、アニメでは細かい伏線を重ね、何故姫が風邪をひいたかを描いている。
このあたりも構成が丁寧。

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ヒロが途方に暮れていると、ゲームセンターから出たシャーウッドとフランシスカが通りかかる。事情を聞いたシャーウッドは、幼少の頃から飲み慣れている薬をくれる。これもアニメオリジナル。薬の件は少々強引だが、シャーウッドがヒロに会う流れは自然。高屋敷氏は、複数のキャラの行動を上手く捌く。

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ようやく、ヒロはおつかいを達成。紗和々はヒロが買ってきてくれたパフェを食べ感涙する(アニメオリジナル)。食べ物を美味しそうに食べる場面は頻出。グラゼニカイジ2期・MASTERキートン(脚本)、宝島(演出)と比較。

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薬を飲んだ姫は、この薬には眠くなる副作用があると話す。これも後の伏線。
そこへ令裡が現れ、もうすぐファラオとミイラ軍団が攻めてくると知らせる。また、犬猿の仲のリザ(狼女)に嫌味を言う。ここのやりとりは軽妙(脚本家ごとに、令裡の嫌味は練られている)。

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ファラオとミイラ達が屋敷に攻めてくるのは、話の序盤にミイラ男がヒロにぶつかったことが皮切り。その後ミイラ男はヒロを尾行し、それに気付いた令裡が傍観を決め込んだため、この事態に。アニメオリジナル要素を重ね、行動の筋道を立てているのが巧み。

ファラオは、他者に不死の力を与えられる姫の能力で、自身が現世に復活することを望む。原作は喋らないが、アニメでは喋る。ちなみにグラゼニ(脚本)では、古代エジプト風のコスプレをする場面があり(原作と異なる)、少しエジプトに拘りがあるのかもしれない。

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リザ、フランドル、ヒロがミイラ達を迎撃する中、姫が強烈な眠気に襲われる。アニメでは、これは薬の副作用となっていて、先の伏線が回収されている。
姫はヒロに命の炎を補充し、後を託して眠る。ヒロは姫を守ろうと奮起する。高屋敷氏は少年の成長を描写するのに長ける。

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自室で寝込んでいる紗和々も守るため、ヒロは紗和々に包帯を巻いてミイラ達の目をごまかし、自身が囮となる(アニメオリジナル)。高屋敷氏は知略を好むが、少しその片鱗が出ている。

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令裡はシャーウッドの屋敷に飛び、ギャラリーが多い方が面白いからという理由で、姫の屋敷が襲撃されていることをシャーウッドに知らせる。これもアニメオリジナルで、キャラの行動を上手く整理している。

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ヒロはミイラの足にしがみつき、眠り続ける姫を必死に守る(アニメオリジナル)。
まだまだ非力ながらも、自分のできる事で精一杯頑張る少年の姿は、宝島(演出)はじめ、様々な作品で強調されている。

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そんな中、シャーウッドとフランシスカが助太刀に入り、令裡はそれを面白がる(アニメオリジナル)。これも、キャラの行動や言動を積み重ねた結果であり、やはり構成の妙が感じられる。

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明け方になっても戦闘は続き、ヒロは疲労困憊しながらも頑張る。(今回はわずかながらだが)普段の姿から一転して男気や成長を見せるのは、カイジ(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)ほか、数多の作品で印象深い。

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疲労が限界のヒロはピンチになるが、そこへチェーンソーを2つ構えた姫が現れ、ファラオを倒す。事の次第を見届けた令裡は眠くなって帰る。令裡のくだりはアニメオリジナル。おにいさまへ…忍者戦士飛影(脚本)ほか、キャラのコミカルさは良いスパイスになっている。

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姫は、頑張ったヒロを褒め、勲章を握らせる。原作では、姫が密かにヒロの机に勲章を置くので、大きな改変。手から手へ思いを伝えるのは、実に多くの作品で前面に出ている。MASTERキートンあしたのジョー2・カイジ(脚本)、エースをねらえ!(演出)と比較。

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その後、包帯を巻かれたまま目覚めた紗和々は、ヒロを驚かせる。
シャーウッドの薬のおかげで、紗和々も姫も、風邪がすっかり治る。原作ではヒロに風邪がうつる(そして姫が机に置いた勲章に気付く)のだが、アニメはアニメで、辻褄合わせが細かい。

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事態を理解していない紗和々をごまかして登校したヒロは手を見つめ、姫がくれた勲章のことを思い出す。
ヒロは、初めて姫の役に立てた気がする…と嬉しく思うのだった。
手による感情表現は頻出。はじめの一歩3期・おにいさまへ…カイジ2期・グラゼニ(脚本)と比較。

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  • まとめ

とにかく、「どこで誰が何をしたから、こうなった」といった要素の組み上げが上手い。何度か書いているが、高屋敷氏のこの「計算力」は、じゃりン子チエ(脚本)で凄まじいものになった。
「チエ前・チエ後」で大別出来るといっても過言ではない。

本作のwikiによると、原作にある残酷描写または性的描写は、局の都合でアニメにできなかったとあるが、なかなかどうして、代替のアニメオリジナルが上手くはまっている(全話に言える)。原作者了承の上、高屋敷氏含め、脚本陣も技巧派揃いだからかもしれない。

連載ページ制限がある原作に比べ、比較的に尺の自由度があるアニメでは、アニメオリジナルによる情報補完が見られる。
高屋敷氏はルパン三世2nd(演出/コンテ/脚本参加)でも、(原作つきエピソードの場合)短い原作を上手く膨らませていた。

原作を膨らませつつ、「何が言いたいか」を固めるのにもぬかりがない。
今回の場合は、ヒロの頑張りと、少しばかりの成長が肝になっている。少年や青年の成長を描くのが抜群に上手い、高屋敷氏らしい強調が見られる。

今回のアニメオリジナル要素の肝は何といっても、姫がヒロに勲章を持たせる場面と、ヒロが手を見つめるラスト。
高屋敷氏担当作は「手」による感情表現が実に多いわけで、今回もそれが見られたのが嬉しい。

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ヒロが僅かながら男気を見せ、奮闘する件に関しては、ヒロと年齢が近い(ローティーン)、宝島(演出)のジムと比べると面白い。両者とも、非力ながらに、やれるだけの事はやる姿が熱い。やはり「男」を描くのが凄く上手いし、相当な拘りがあると考えられる。

シリーズ構成作の場合、少年/青年が成長していく過程はじっくり描かれるが、今回のような1話構成でも、それが上手く前面に出ているし、ヒロという少年を結構掘り下げていて(高屋敷氏はキャラの掘り下げが上手い)、今回も技巧に唸らせられた。

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以前書いた、こちらも紹介:

宝島(高屋敷氏演出参加)に関する、当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6