カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

怪物王女2話脚本:改変の匙加減

アニメ・怪物王女は、光永康則氏の漫画をアニメ化した作品。怪物達の王の娘(通称“姫”)を中心に巻き起こる騒動を描く。監督は迫井政行氏で、シリーズ構成はふでやすかずゆき氏。
今回のコンテは、いわもとやすお氏で、演出は、しのだよしの氏。脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、怪物王女に関する記事一覧(本記事含む):

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E6%80%AA%E7%89%A9%E7%8E%8B%E5%A5%B3

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  • 今回の話:

姫(怪物達の王の娘)はヒロ(姫が蘇生させた少年。半不死)と、ヒロの姉・紗和々(姫の家政婦)を屋敷に住まわせる。そんな折、透明人間が襲撃してくる。

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朝、姫(怪物達の王の娘)はヒロ(姫が蘇生させた少年。半不死)を探すが、紗和々(ヒロの姉。姫の家政婦)から、ヒロが学校に行ったと告げられる(アニメオリジナル)。原作が怪物くんのオマージュ多用なため自然だが、紗和々は怪物くん(脚本)のヒロシの姉・歌子を思わせる。

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姫の“命の炎”(原作では血)により蘇生したヒロは、姫なしでは生きられない体になったのだから、学校など行く必要無いのに、と姫は思う。このくだりもアニメオリジナル。
これは話を順序立てて組み立てるための布石になっている。高屋敷氏は話の計算が巧み。

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一方ヒロは学校にて、自己紹介のジョークが滑り、クラスの皆は呆れる。ヒロ含め、皆の雰囲気が原作より幼く、ど根性ガエル(演出)やワンナウツ(脚本)などでも醸し出されていた無邪気さ・幼さに共通するものがある。

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さらに教壇から足を踏み外してヒロは転倒。かくしてヒロの転校デビューは散々なものに。原作通りだが、転倒ギャグがルパン三世2nd(演出/コンテ)や宝島(演出)と重なってくる。また、(ジョークを)「徹夜で考えたのに」というアニメオリジナル台詞が幼い。

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姫の屋敷では、紗和々が姫を探していた(アニメオリジナル)。姫がよく座る椅子が映るが、こういった、空席を印象づける描写は結構出てくる。家なき子(演出)、MASTERキートングラゼニ(脚本)と比較。
また、姫が不在で、紗和々が買い物に行くのは、話の構成要素として活き、やはり計算が細かい。

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下校するヒロの場面で信号機が映るが(アニメオリジナル)、状況や心情と連動した信号機は結構出る。F-エフ-・カイジ2期・グラゼニ(脚本)と比較。

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女の子が風船を追いかけているのを見かけたヒロは、自分が風船を取ってあげようとする(アニメオリジナル)。赤い風船は色々な作品で出るので気になる。
F-エフ-(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、怪物くん・ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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木にひっかかった風船を取っている最中、ヒロは意識を失い木から転落。女児とその母は怖くなって逃げる。
その間に姫が現れ、自分の命の炎を与えてヒロを復活させる。風船が意味深に映るが、キャラを象徴する「物」の「間」は多い。F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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その後、姫は姿の見えない何者かの攻撃を受ける。その前(ヒロが風船を追っている間)には、ヒロが見えない何かにぶつかり転んでおり、伏線になっている。大幅なアニメオリジナルを交えて、色々と細かく話を組み立てていっており、やはり緻密な計算が感じられる。

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そこへ、女児とその母が警官を連れて戻って来たので、姫は姿を消す。
意識が回復したヒロは記憶が混乱していたが、女児に風船を渡す。キャラの心優しさを強調するアニメオリジナル要素は、F-エフ-(脚本)にも見られた。

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(少年がぐったりしていると聞いていた)警官は、ヒロがピンピンしているので驚く。味のあるモブは、めぞん一刻・F-エフ-・太陽の使者鉄人28号(脚本)ほか、あらゆる作品で目立つ。

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ヒロが屋敷に帰ると、門に何かが挟まる描写がある(アニメオリジナル)。そして屋敷内では姫がチェーンソーを振り回しており、ヒロは驚く。これも話を順序立てるための、アニメオリジナル要素が凝っている。

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チェーンソーが不運にも当たったヒロは倒れるが、意識が戻ると傷が治っていた。姫は改めて、ヒロが半不死身であること、屋敷に透明人間が入り込んだことをヒロに告げる。先の、門に何かが挟まったアニメオリジナル表現により、侵入のタイミングがわかりやすくなっている。

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そこへ、紗和々が買い物から帰ってくる。安全のため、ヒロは紗和々に、屋敷に入らないよう告げる。また、彼がそうできるように、姫が透明人間を引き付ける。ここの姫の行動はアニメオリジナルで、やはり色々と調整が細かい。

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ヒロ・フランドル(姫の家来。人造人間)・姫は三手に分かれ、屋敷じゅうに糸を張り巡らせた透明人間を探すことに。ここでヒロは、透明人間相手にどうやって戦うのかと嘆くが、原作より気弱さが軽減されている。ここも、アニメのキャラ改変が見られる。

そして透明人間がヒロを襲ってきて、フランドルが彼を助ける。駆けつけた姫は、ヒロごと透明人間を切ろうとするが、(透明人間が既に逃げていた為)フランドルに阻止される。
ヒロは、姫が自分を切ろうとしたことにショックを受ける。ショックを受けた内容が原作と異なり、ここもキャラ改変が見られる。

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逃げた透明人間を探し、三人は再び分かれる。電気が消えたため(姫がブレーカーを切ったため)、ヒロはライターを探して明かりを灯す。ライターはアニメオリジナル。意味深な火の描写は多い。カイジ2期・MASTERキートン・F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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そこへ姫が来てライターの火を消し、透明人間の視界を遮るためブレーカーを切ったと説明する。
そしてヒロは、姫が死ぬと自分も死ぬ事を知る。背を向けながら話す場面は結構見られる。ストロベリーパニック(脚本)と比較。ここもまた、アニメはヒロの気弱さが軽減されている。

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続けて姫は、透明人間により、自分の三番目の兄が仕留められた事を語る。途中、チェーンソーのイメージが出るが、ここも意味深な「物」の「間」。グラゼニ・F-エフ-・カイジ二期(脚本)と比較。

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ヒロは、姫が「たおすか、たおされるか」の過酷な世界に生きていることを感じる。
ここも、「背中で語る」。グラゼニ(脚本)と比較。

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そこを、透明人間の糸が襲う。ヒロは咄嗟にそれを掴んで姫を助けるが、自身が糸に縛られ苦しむ。手がクローズアップされているが、手による感情表現は頻出。カイジワンナウツグラゼニおにいさまへ…(脚本)と比較。

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途中チェーンソーの調子が悪くなってピンチになるも、姫は透明人間に一撃をくわえる。今回は原作通りだが、高屋敷氏はノコギリに縁があり、太陽の使者鉄人28号(脚本)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、ノコギリが印象的な回を担当している。

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あらかじめガソリンが撒いてある地下室に逃げた透明人間を見て、姫はライターを地下室めがけ投げる。
ライターは、先にヒロから取ったものと考えられ、アニメオリジナルのくだりが原作の補完になっている。やはりここも調整が細かい。

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姫達は屋敷から脱出。燃え上がる屋敷から出てきた透明人間を、姫は一刀両断する。
F-エフ-(脚本)、ど根性ガエル(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏は火事や大火にも縁があり、かつまた、火への拘りが感じられる。

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ヒロは、兄の仇を討てたのかと姫に問うが、彼女はそれにハッキリと答えず、透明人間を差し向けたのも自分の兄弟の一人かもしれないと話す。ここも「背中で語る」。ワンナウツグラゼニストロベリーパニック(脚本)と比較。

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後日、ヒロやフランドル、紗和々は屋敷の再建を手伝う。ヒロは、姫にかかわらずに安寧に生きる事は不可能であることを痛感するのだった。アニメでは「姫にはまだ、僕の知らない秘密が沢山ありそうだ」というヒロの独白が追加されており、次回へのヒキを強化している。

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  • まとめ

先に書いた通り、本作は原作からして、『怪物くん』のオマージュを多用している。姫→怪物くん、ヒロ→ヒロシ、紗和々→歌子、フランドル→フランケンと当てはめていくと面白いし、高屋敷氏が『怪物くん(第2作)』に脚本参加していたのにも縁を感じる。

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怪物くん22A話(脚本)にて赤い風船が出ていて、今回も赤い風船が出るのも面白い(ともにアニメオリジナル)。
高屋敷氏自身、『怪物くん』を思い出しながら書いているのではないだろうか?
何故、赤い風船に拘るのかは謎だが。

あと、大幅なアニメオリジナルの追加により、(女児の為に風船を取ってあげるなど)ヒロの心優しさに焦点を当てている。
F-エフ-(脚本)では原作を180度変えてまで、軍馬(主人公)の人情を表した場面があり、高屋敷氏の強い主張が窺える。

人情を忘れるなかれといったメッセージは、カイジカイジ2期(シリーズ構成・脚本)、じゃりン子チエ・チエちゃん奮戦記(脚本)などでも強調されている。これは高屋敷氏が、(義理人情を深く描く)山田洋次監督を好んでいるっぽいことと関係しているかもしれない。

また、話の順序立てというか、「このキャラがこう動くから物事がこう動く」といった辻褄合わせが、アニメオリジナルを交えて上手くできている。こういった緻密な計算は高屋敷氏の十八番で、とにかく「技術」が冴え渡っている。

あと、大胆または細かい改変により、ヒロの性格が、原作より若干強めになっている。逃げようとするヒロの台詞を、原作からバッサリカットしているのも、送り手の強い意志が感じられる。

こういった「キャラの改変」はグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも見られ、夏之介(主人公)の性格が、若干原作より熱くなっている。グラゼニでは、この匙加減が絶妙だった。

今回の場合、ヒロが(透明人間の攻撃から)姫を咄嗟に守ったのは、彼が心優しく、自らの危険をかえりみないからであることが、わかりやすくなっている。
アニメオリジナルのプロット(風船のくだり)や、細かいキャラ改変が上手く機能している。

高屋敷氏はキャラの掘り下げが上手く、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)では、アニメオリジナルエピソード3本を費やしてまで、レギュラーキャラ(蕗子)を掘り下げている。また、必要であれば1話以内でもキャラを掘り下げる。この手腕にはいつも驚かされる。

怪物くん(脚本)は30分内2話構成で、尺が非常にタイト(実質10分前後)なのに、内容がよく詰まっていた。今回は30分(実質22分前後)なので、更に話の密度が濃い。あらためて高屋敷氏の、尺の使い方やプロットの捌き方の巧みさを確認できた。

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以前書いた、こちらも紹介:

怪物くんに関するブログ記事一覧:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E6%80%AA%E7%89%A9%E3%81%8F%E3%82%93

おにいさまへ…に関するブログ記事一覧:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%8A%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%BE%E3%81%B8%E2%80%A6

グラゼニに関するブログ記事一覧:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BC%E3%83%8B