カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

怪物王女17話脚本:大人数を捌く妙技

アニメ・怪物王女は、光永康則氏の漫画をアニメ化した作品。怪物達の王の娘(通称“姫”)を中心に巻き起こる騒動を描く。監督は迫井政行氏で、シリーズ構成はふでやすかずゆき氏。
今回のコンテは藤澤俊幸氏で、演出は横山広実・岩本美香氏。脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、怪物王女に関する記事一覧(本記事含む):

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E6%80%AA%E7%89%A9%E7%8E%8B%E5%A5%B3

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  • 今回の話:

全編アニメオリジナルエピソード。

ある日、目の小じわに気付いた魔女は、色々な者に命を与える能力がある姫(怪物達の王の娘)の生気を吸い取り、若さを得ようとする。

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ある日、目の小じわに気付いた魔女は、あることを思いつく。その際、食事に夢中な手下の怪物に一喝するのだが、F-エフ-・ルパン三世3期(脚本)などなど、とにかく食いしん坊キャラは多い(原作より食い意地が張っている事もある)。

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一方、姫(怪物達の王の娘)の屋敷では、フランドル(姫の家来。人造人間)が化粧水のCMに興味を持ち、紗和々(姫が蘇生させ、半不死にした少年・ヒロの姉)は理解を示す。これは、後に起こる騒動の伏線になっている。高屋敷氏は細かく筋道を立てる傾向がある。

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そして、ヒロは遅刻しそうになり、急いで登校するが、シャーウッド(姫の妹)に捕まる。
ど根性ガエル(脚本)では、ひろし(主人公)の遅刻は日常茶飯事で、「遅刻の帝王」と呼ばれている。重ねている節があるかもしれない。

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高い化粧水をつけたので、シャーウッドはヒロに肌を褒めてもらいたかったのだが、急いでいたヒロは気付かず。
その後、シャーウッドは紗和々愛用の化粧水を買おうと思いつく。女性の化粧については、おにいさまへ…(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)など描写が細かい。

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一方魔女は、手下に姫を探させる。その最中、手下の一人が空腹を訴える。ここも、RAINBOW-二舎六房の七人-・ガンバの冒険(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)などなどにも見られる食いしん坊描写。

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その後、結局遅刻してしまい先生に叱られ、挙げ句宿題を沢山出されてしまったことを嘆きながら、ヒロは下校する。
ど根性ガエル(脚本)でも、先生に遅刻を叱られて、ひろしが落ち込む展開がある。

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そんな折、たこ焼き屋を見かけたヒロは、「もう我慢できない!」とたこ焼きを買う(屋敷の皆の分も購入)。飯テロは実に多い。グラゼニ・チエちゃん奮戦記・F-エフ-・コボちゃん(脚本)と比較。

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だがヒロは、腹をすかせた魔女の手下に、たこ焼きを全部食べられてしまう。
食べ物にまつわる嫌がらせや争いは、宝島・ど根性ガエル(演出)など、強く描写される。

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魔女の手下を通りすがりに見かけた令裡(吸血鬼)は、面白い事が起こりそうだと興味を持つ。ここまでで、魔女、ヒロ、シャーウッド、令裡の動向が平行で進行することになる。
高屋敷氏は、平行するキャラの行動を上手く捌く。

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一方シャーウッドは、紗和々が使っている化粧水をドラッグストアでやっと買えて喜ぶが、魔女の手下にぶつかられて化粧水は台無しになってしまう。
ところで、おにいさまへ…(脚本)でも、少女が背伸びして化粧してみる描写がある(アニメオリジナル)。

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その頃、紗和々は行きつけの喫茶店でパフェを美味しそうに食べていた。ここも飯テロ。怪物くん・おにいさまへ…ストロベリーパニック・F-エフ-(脚本)と比較。

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また、ここで紗和々はマスターから福引券をもらい、彼女の動向も話に絡む。

姫の屋敷にて、シャーウッドが魔女の手下に受けた被害を訴えているのを聞いたヒロは、自分も同じような輩にたこ焼きを食べられたと話す。すると、姫とリザ(狼女)は、たこ焼きに反応。マイメロディ赤ずきんストロベリーパニック(脚本)等と同じく、ここも食いしん坊描写。

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一方、紗和々は福引に挑戦。六等のトイレットペーパーが目当てだったが、上の等級ばかり当たる結果に。宝島(演出)やカイジ2期(脚本・シリーズ構成)などなど、高屋敷氏はギャンブル要素に縁がある。

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そして魔女は、「たこ焼きがおいしかった」という手下の要らぬ報告に怒るも、ついに姫の居所を掴む。ここも、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)や、ど根性ガエル(演出)、おにいさまへ…(脚本)など、数多の作品に見られる食いしん坊要素。

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夜、姫の屋敷に乱入した魔女は、自分の小じわについて話し、姫の生気を貰いに来たと言うも、リザに小じわの事をからかわれ怒る。手足をバタバタさせる子供っぽい所作は、ど根性ガエル・宝島など演出時によく見られる(今回は脚本なので不思議だが)。

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(生気を吸うのは)吸血鬼と同じ類かとリザに言われた魔女は怒り、いつしか窓に降りたった令裡も、一緒にしないで欲しいと抗議。
魔女は魔法のコンパクトを取り出し、姫の生気を吸うと宣言。
ところで、F-エフ-・おにいさまへ…(脚本)など、鏡は要所要所で使われる。

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魔女は帽子から、手下を出現させる(手下は帽子で出し入れ可能)。
ヒロはそれを見て「たこ焼き泥棒!」と言うが、ここも食いしん坊描写。
ストロベリーパニック(脚本)やエースをねらえ!(演出)ほか、言動や行動に食いしん坊っぽさが表れるキャラは多い。

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リザは魔女を「おばさん」と罵り、魔女を怒らせる。「何べんでも言ってやるぜ。1万回でも、100万回でもな!」という台詞まわしがF-エフ-(脚本)と似ている。
(F-エフ-では「俺はF3に乗りてえんだよ。1日でも、1時間でも、1秒でも早くな」。)

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そこへ、福引で30人分の餃子が当たったと、紗和々が大量の餃子を運んでくる。
ニンニクの匂いに魔女は悶絶し退散するが、ここも飯テロ。MASTERキートングラゼニ(脚本)・ルパン三世2nd(演出/コンテ)、カイジ2期(脚本)と比較。

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令裡もまた、ニンニクの匂いを嫌がるが、後にガスマスクを装備して舞い戻り、魔女がシャーウッドの屋敷に向かったと姫に報告。今回は全編ギャグだが、宝島(演出)やベルサイユのばら(コンテ)ほか、どんな作品でもコメディ要素が入る傾向がある。

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魔女はシャーウッドの屋敷に乱入し、コンパクトをシャーウッドに向け追い込むが、令裡にフライパンでどつかれて失敗。
フライパンでどつかれる場面は、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)でも見られる。

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シャーウッドの屋敷に駆けつけた姫達と魔女は戦闘になるが、その最中に姫の屋敷まで吹っ飛ばされたヒロは、餃子を見て一計を思いつく。ギャグではあるが、こういった所も辻褄合わせや伏線回収がキッチリしている。

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ヒロは餃子を抱えてシャーウッドの屋敷に戻り、餃子を食べれば魔女は近付けないからと、姫に餃子を食べるよう進言する。
姫は最初は躊躇するも、食べると「いけるな」と言う。おにいさまへ…ストロベリーパニック(脚本)ほか、食べ物が物事を好転させる事もよくある。

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餃子の効果は抜群で、魔女は姫に近付けなくなる。ヒロはシャーウッドにも餃子を食べさせようとするが、途中で魔女の手下に食べられてしまう。ここもやはり、カイジ2期(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、あしたのジョー2(脚本)などなどに見られる食いしん坊要素。

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戦闘の最中、またも吹っ飛ばされたヒロは、寝ていた劉劉(パンダ。シャーウッドの家来)の腹の上に着地。目覚めた劉劉も戦闘に参加する。パンダの扱いについては、らんま1/2(脚本)を思わせる。

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そして、魔女のコンパクトに吸い込まれるシャーウッドを助けようとしたヒロ達は、シャーウッドごと吸われてしまうが、コンパクトはキャパオーバーで壊れ、皆助かる。大人数でのドタバタは、あんみつ姫(脚本)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)でも印象的。

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戦意喪失の魔女に対し、紗和々が福引で当てた大量の化粧水を持って帰れと、姫は慈悲を与える。魔女は感謝し去る。
姫は、自分もこの化粧水を愛用していると魔女に言ったものの、実はそれは嘘。ウィットに富んだペテンは、カイジ2期・ワンナウツ(脚本)ほか結構見られる。

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一件落着したことだし、肌のためにも早く寝ると言うリザに対し、肌ではなく毛並みでは?と令裡は嫌味を言う。ライバル関係にあるキャラ達の上手いやりとりは、F-エフ-(脚本)ほか色々な作品にある。

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令裡は、自分は夜の方が調子がいいので散歩すると言い、飛び立つ。はじめの一歩3期(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)ほか、月の描写は多い。

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シャーウッドはヒロの服を引っ張り、(魔女に襲撃される前、パックをしていたので)何か変わったことはないかと訴える。
手による感情表現は頻出。おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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全くもってシャーウッドの意向がわからないヒロは、フランシスカ(シャーウッドの家来。人造人間)に吹っ飛ばされるのだった。
こういったノリも、らんま1/2(脚本)を思わせる。

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  • まとめ

本作のシリーズ構成の、ふでやすかずゆき氏が本作の公式サイトにて「うる星やつら的なものを想像していただければ」と言及している通り、ノリが高橋留美子氏のドタバタギャグを思わせる。高屋敷氏が、高橋留美子氏原作アニメに色々携わった効果も出ていると思う。

話のコンセプトは、監督やシリーズ構成とのディスカッションの結果決まったものだと考えられるが、色々なキャラの食い意地が張っていたり、飯テロの嵐だったりは、非常に(飯テロが得意な)高屋敷氏っぽさを感じる。

特に、リザと姫が、たこ焼きに反応するくだりは笑ってしまった。話のメインストリームは、肌のお手入れの筈なのだが、とにかく全編、食べ物にばかり目が行くのは流石(?)。食べることが好きな事が十二分に伝わってくる。

全編ギャグではあるものの、4W1Hがキッチリしていて、数々の伏線を回収し、複数キャラの動向・言動を上手く捌いているのは、システマチックな構成をする高屋敷氏の傾向が出ている。これについては、カイジワンナウツのシリーズ構成・脚本でも、熟練した技が見られる。

今回は、結果的に大人数が話に加わっていくわけだが、大人数でのドタバタは、ど根性ガエル(演出)や元祖天才バカボン(演出/コンテ/脚本参加)の頃から見られ、高屋敷氏の得意分野の一つかもしれない。

大人数といっても、十把一絡げにするのではなく、各キャラが何故話に絡むのか丁寧に描写しているのもポイント。とにかく高屋敷氏の脚本作は計算が緻密で、シリーズ構成作では規模の大きな「計算」があり、驚かされる。

一方で、女性キャラの化粧やスキンケアへの拘りは、結構リアル。ルパン三世2nd(演出/コンテ)での口紅の塗り方や、おにいさまへ…(脚本)の化粧水やマニキュアなどが印象深い。元夫人の金春智子氏(脚本家)の影響もあるのかもしれない。

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今回はギャグに全振りしているわけだが、端々に丁寧さが出ており、ギャグにもきっちりした構成が大切なのだと感心させられた。また、飯テロが全編に炸裂しているのは高屋敷氏らしさ全開で楽しい。

ちなみに今回が、本作における高屋敷氏脚本回の最後となる。全体的には、12話でのヒロの掘り下げが印象深く、作品に色々貢献したと言えるのではないだろうか。今回についても、様々なキャラが食いしん坊なのは、掘り下げと言えるかもしれないと思えた。