カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

飛べ!イサミ7話脚本:織り込まれた感情

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

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本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

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  • 今回の話:

サブタイトル:「ねらわれたピアニスト」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ:千明孝一氏、演出:根岸宏樹氏。

イサミの父母の友人で世界的ピアニストの、十島みどりが、何者かから脅迫を受ける。イサミ達は、みどりを守るため奔走する。

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闇仕事を引き受ける「仕事師」は、ある女から、帰国した世界的ピアニスト・十島みどりのリサイタルを妨害するよう依頼される。
冒頭で怪しい会話を見せておく手法は、ルパン三世2nd(脚本)でも使われている。

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みどりはイサミの父母の友人。イサミは玲子(イサミの母)と一緒に、みどりに会いに行くことに。
トシ、ソウシ(ともにイサミの同級生で新撰組の子孫)は様々な反応を見せる。
キャラの個性づけは、ガンバの冒険(脚本)でも光る。

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みどりはリサイタルに向け、自宅でピアノの練習をする。
光溢れる窓辺でピアノを弾く場面は、おにいさまへ…(脚本)にもあり、比較すると面白い。

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そこに、玲子とイサミが訪ねてくる。みどりは、イサミの成長を喜ぶ。
「(みどりから見て)友人の子供」という関係性は、じゃりン子チエ(脚本)の、ミツル(チエの父・テツの親友)とチエのそれに重なる。どちらも描写が丁寧。

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みどりは、自分のリサイタルのチケットを複数枚、イサミにあげる。
色々と伏線や導線を設置し話をサクサク進めるのは、グラゼニ(脚本)でも巧みで、アニメオリジナル部分も秀逸。

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すると、みどり宅のステンドグラスが割られ、実行した仕事師はバイクで逃走する。
ステンドグラスが割れるのは、おにいさまへ…(脚本)にもあり、セルフオマージュっぽい。

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みどりは、最近脅迫や嫌がらせを受けていると、イサミと玲子に話す。
イサミは、(送りつけられた)藁人形はよく見ると可愛いと評す。
場を和ませる子供の無邪気さ・明るさは、ガイキング(演出)でも強調されている。

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みどりは昔、魁(イサミの父。失踪中)から「自分を信じて、諦めるな」と助言を貰ったと回想する。
夕暮れの中での心の交流は、結構見られる。おにいさまへ…(脚本)と比較。

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玲子もみどりに、応援するから諦めないでとエールを送り、みどりは、その言葉が魁にそっくりだと笑う。
複雑な女性の心の機微は、ストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)でも鋭く描写されている。

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玲子は、数馬(イサミの叔父で刑事)に相談すると、みどりに約束し、イサミもまた、みどりを励ます。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)やF-エフ-(脚本)ほか、仲間愛は強く描かれる。

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その後、トシとソウシは、イサミから、みどりのリサイタルの特等席チケットを貰い喜ぶ。イサミ達は、みどりを守ろうと行動を開始する。
チームの団結力は、ルパン三世2nd・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)ほか、前面に出される。

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夜、イサミ達は、みどり宅付近を見張る。
荷物を確認したところ、ケイ(トシの弟)が紛れており、皆は驚く。
はだしのゲン2(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏は小さな子供の出番を作るのが上手い。

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すると仕事師が、みどりの自宅に忍び込みに来る。
寝惚けておしっこに行こうとするケイを、イサミ達は慌てて止める。
子供のおしっこ関連では、コボちゃん(脚本)に、おねしょをごまかす話がある。

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仕事師を追い、イサミ達も、みどり宅に塀から入るが、トシが、ケイやイサミの下敷きになる。
ルパン三世2nd(演出/コンテ)や宝島(演出)など、コミカルなアクションは割と挟まれる。

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ケイは、だるまさんが転んだの要領で仕事師に近付き、彼の顔写真を撮ることに成功する。
あしたのジョー2(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、小さな子供の活躍はクローズアップされる。

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仕事師は、ゴミ箱に火をつけたつもりが、自分の服にも火がつき、慌てて逃げ出す。イサミ達は、まずは火を消すことにする。
火事の描写は、F-エフ-(脚本)や、(夢オチだが)ど根性ガエル(演出)など結構ある。

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みどり宅の様子を見に行けと、玲子や上司の命を受けた数馬は、火がついたままバイクで逃げる仕事師とすれ違い驚く。
すれ違いネタは、ルパン三世2nd(脚本)にも見られる。

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みどり宅に着いた数馬は、火を見て慌てる。イサミは、なんでもっと早く来れなかったのかと数馬に抗議する。
子供にタジタジの大人の図式は、新ど根性ガエル(脚本)などでも色濃い。

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イサミらの消火活動で火は消え、イサミらは翌日、みどりにケーキをご馳走になる。また、ケイもリサイタルに招待されることに。
飯テロは実に多い。アンパンマンRIDEBACK(脚本)と比較。

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そこに、さやか(みどりのライバル)がやってきて、警備中の警官に、自分は有名なピアニストだと誇る。
自信満々なライバルキャラの描写は、F-エフ-・カイジ2期(脚本)など豊か。

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さやかは心配を装って、みどりの手を取り、その手が震えているのを確認すると一瞬ニヤリとする。
手による感情表現は頻出。RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-(脚本)と比較。

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夜、さやかは仕事師に電話し、更にみどりを追い詰めてリサイタルを中止にさせろと命じ、ほくそ笑む。
鏡描写は、色々な作品に見られる。ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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後日、さやかにギャラ追加を提示され張り切る仕事師は、みどりからのピザの差し入れだと、みどりのスタッフを騙し、ピアノの下に爆弾を取り付ける。
アンパンマンストロベリーパニック(脚本)ほか、食べることが大好きなキャラは多い。

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一方、新撰組の宿敵である黒天狗党の下部組織・カラス天狗の平助と重助は、リサイタル会場前に魁が来ていないかどうか見張るが、顔を隠した魁に気付けない。
少しバカな二人組描写は、おにいさまへ…ワンナウツ(脚本)でも目立つ。

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数馬は、警備も万全だし、ケイが撮った写真のおかげで仕事師の捜索も楽だろうと踏む。
油断して痛い目を見る描写は、ルパン三世2nd(脚本)にもある。

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すると、リサイタル会場の垂れ幕が破壊され、それを見たみどりは動揺する。
F-エフ-・ストロベリーパニック(脚本)ほか、台詞に頼らず表情で多くを語る描写は多々ある。

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仕事師は、(リサイタル会場とは別の場所に)爆弾があると虚偽の通報をし、警察を煙に巻くが、乗っ取った元々のピザ配達員に見つかり、イサミ達にも気付かれる。
太陽の使者鉄人28号(脚本)、家なき子(演出)ほか、お手柄モブは多い。

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さやかは楽屋を訪ね、みどりに花束を渡そうとするが、代わりに数馬が受け取り、数馬はバラの棘で指を怪我するが平静を装う。
バラの棘で傷がつく描写は、おにいさまへ…(脚本)もインパクトがある。

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さやかは客席で、みどりのリサイタルが滅茶苦茶になると確信。一方仕事師は、イサミ達に追われてリサイタル会場内に逃げ込む。
切り替わりのテンポの良さは、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)などでも見事。

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イサミ達に見つかり、追い詰められた仕事師は、会場に向かって「爆弾がある」と叫び、客席はパニックに。
土壇場で知恵を発揮する敵役や憎まれキャラの描写は、忍者戦士飛影・まんが世界昔ばなし(脚本)ほか、数々ある。

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リサイタルを台無しにされ怒りに燃えるイサミは、新撰組が遺した光る剣で、仕事師を痺れさせ倒すも、爆弾は止められず、警察に後を任せる。
爆弾騒ぎは、ルパン三世2nd(脚本)も印象的。

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爆弾処理班は、仕事師の虚偽通報のせいで間に合わず、数馬は全員を退避させるが、密かに会場に入った魁は、爆弾を解体する。
視聴者がわかりきっている真実を丁寧に見せていく手法は、あしたのジョー2・F-エフ-(脚本)でも上手い。

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後日、あらためて開催されたリサイタルで、みどりは見事な演奏を披露する。
ピアノの譜面台には、みどりを励ます魁の書き置きがあった。
手紙は、重要アイテムとして扱われる。ストロベリーパニック(脚本)、宝島(演出)と比較。

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さやかは、プライドだけの自分のピアノでは、みどりにかなわないとわかっていた、と寂しげな表情で、みどりの姿を見届ける。
過ちを悔いるキャラの侘び寂びは、ワンナウツルパン三世3期(脚本)などでも見られる。

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会場を出たさやかは、数馬に両手を差し出す。数馬は、さやかの手を取って、償いはしなければならないが、さやかならピアノでやり直せると言う。
ここも、手による感情表現。MASTERキートンワンナウツ(脚本)と比較。

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演奏後、イサミ達から花束を受け取ったみどりは、実は魁が好きだったと話す。
単純明快な反応をしたトシはイサミにどつかれ、ソウシはみどりを口説く。
密かに失恋するキャラの描写は、ストロベリーパニック(脚本)でも見事。

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みどりは、魁と玲子の二人が大好きだと語り、イサミと微笑み合うのだった。
DAYS・グラゼニ(脚本)ほか、高屋敷氏は「笑顔」を重視する。原作つき作品でも、アニメオリジナルで笑顔を追加することが多く、興味深い。

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  • まとめ

 今回も、色々な要素が捌かれ、見事な手腕が発揮されている。
一見、勧善懲悪の痛快活劇だが、敵は毎度、人間臭さ全開で、今回はそれに加えて恋愛ドラマが織り成され、本作は多面的だ。

 本作は、新撰組と黒天狗党の因縁や、魁の動向、イサミ達の活躍などを軸としながら、毎回の騒動をバリエーション豊かに設定し、展開も割と複雑で二転三転する。相当な構成・脚本の技術が必要だと思う。

 高屋敷氏は本作の頃(90年代半ば)には膨大な経験を積んでいるので、色々な手腕が求められても対応できるのではないだろうか。もともと複雑で凝った脚本を練る傾向のある同氏だが、本作でも本領が発揮されている。

 アニメオリジナル作品は、アニメにしやすい話運びをするものだと思っていたが、本作は、まるで漫画原作つきアニメのような詰め込み具合だ。これはコンテや演出、作画も大変になる。

 高屋敷氏は、漫画原作アニメの経験も豊富なため、漫画のストーリーテリングのノウハウ、およびそれをどうアニメに落とし込むかが頭に叩き込まれていると推察できる。そう思うと、アニメの限界も伸び代も計算しているかもしれない。

 できないことを考慮して、引き算ばかりしていても、内容の薄い作品になってしまう。そこは、中身の濃い作品を作り上げようという、本作スタッフの気概が感じられる。

 今回驚いたのは、活劇のストーリーラインに切ない恋愛ドラマ要素を入れ込んだ点だ。しかも、子供の視聴者にもわかりやすく描かれている。
また、この恋愛要素により、ラストに余韻が残る。

 また、敵側(さやか)にもドラマがあるわけだが、くどくはなく、ちょっとした場面場面、独白や台詞ですんなり視聴者の頭の中に入ってくる。このあたりも流石だ。

 さやかの、みどりに対する「女の情念」は、女のドロドロの愛憎だらけの、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)で培われたものが大きい。一見子供対象の本作に、このエッセンスを入れるのも大胆だ。

 みどりの、魁に対する密かな想いは、ストロベリーパニック(高屋敷氏脚本陣)で、「カップル成立の裏で密やかに失恋するキャラ」が細やかに描写されていることにも繋がっている。それもまた面白い。

 高屋敷氏は恋愛アニメも多く取り扱っており、めぞん一刻(最終シリーズ構成・脚本)が、その代表例だ。アニメのキャラに「感情」を入れ込む技術や構成もまた、大変な腕が必要となるわけだが、同氏はそこも抜かりがない。

 あと、「包帯男=魁」については、見せ方や構成が上手いので、視聴者は容易にその真実を受け容れることができる。
そのあたりは、結末を知る人が多い、あしたのジョー2(高屋敷氏脚本陣)でも使われている技術だ。

 本作は、大筋の話・各回の話・細かいキャラの感情や行動などが、きちんと交通整理されており、やはりその技術と手腕は驚異的だ。
オリジナル作品であっても、複雑なプロットから逃げない姿勢にも唸らされた。