カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ワンダービートS 5話脚本:「一人前」になる過程

ワンダービートSは、手塚治虫氏が企画や監修に携わったオリジナルアニメ。ミクロ化してヒトの体内に侵入し、害をなす異星人に対し、同じくミクロ化して戦う部隊・ホワイトペガサスの活躍を描く。
医学博士でもある手塚治虫氏の、医学解説コーナーもある。
監督は、前半が出崎哲氏、後半が有原誠治氏。
今回は、コンテが網野哲郎氏、演出が南波千浪氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

ある日、海で溺れてしまったススム(主人公)は、イサオ(行方不明中のススムの父)の友人で、海洋生物学者のスコットに助けられる。

後にスコットはススムの家を訪れ、ススムとイサオの思い出の印である、珍しいカニの標本を、研究のために譲って欲しいと申し出る。反発するススムだったが、その時、スコットは体調不良で倒れてしまう。原因は、ビジュール星人による、肺への攻撃だった。
ススム含むホワイトペガサス隊は直ちにミクロ化して出動、色々な策を練りながら、ビジュール星人の放ったモンスターを撃破。
回復したスコットに、ススムは自らカニの標本を差し出し、研究に役立てて欲しいと言うのだった。

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本記事を含めた、ワンダービートSの記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%88S

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ススムの回想にて、ススムとイサオ(ススムの父)が手を握る場面があるが、手から手へ思いを伝えるのは、高屋敷氏の大きな特徴。陽だまりの樹・F-エフ-・ワンナウツ脚本と比較。

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同じくススムの回想内で、珍しいカニを見つけたススムがイサオに抱きつく。喜び方が無邪気で幼い(今回は、実際に幼いが)のも、高屋敷氏の担当作に多い。ど根性ガエル演出、F-エフ-・カイジ2期脚本と比較。

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スコットの気管内に入り込んで、肺を攻撃していたビジュール星人のモンスターと、ホワイトペガサス隊との戦闘では、モンスターの呼吸の隙をついたり、ススムが囮となって、モンスターの弱点をワンダービート号(ホワイトペガサスの出動艇)の方へ向けたりするなど、そこそこ頭を使う。知略を好む高屋敷氏らしい展開。

回復したスコットに、ススムが大事な標本を差し出す場面では、標本が印象的に映る。魂を持つかのような「物」のアップ・間は、高屋敷氏の大きな特徴。あしたのジョー2・MASTERキートンカイジ脚本と比較。どれも、「思い」が込められている。

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終盤では、ススムとスコットを太陽が「見守る」。全てを見ているかのような太陽は、高屋敷氏の担当作に実に多く出てくる。空手バカ一代演出、ベルサイユのばらコンテ、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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  • まとめ

ススムは、父が行方不明であることにナーバスになっている半面、ホワイトペガサス隊に入ったことで、少しずつ成長している。その片鱗として、父との思い出の品を手放す。

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父親または、父親がわりの年上男性との色々なドラマは、高屋敷氏の担当作の数々で描かれており、特にF-エフ-(全話脚本・シリーズ構成)では非常に色濃い。1クールを過ぎたあたりでは(13話)、主人公の軍馬が、忌み嫌う父の幻影を振り切り、ライバル・聖に挑む(アニメオリジナル展開)。

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本作の場合は、ススムは父と親密なわけだが、いずれ父への甘えを捨てなければならない日が来る。その過程の1つとして、今回の話は機能している。少年や青年が「男」に成長する様を描くのが、高屋敷氏は非常に上手く、特にシリーズ構成作では、それが炸裂している。演出作でも、家なき子の最終回は特筆に値する。

そして、高屋敷氏は「自分とは何か」というテーマを投げることが多い。今回は、「まだまだ父に甘えたい盛りの子供としての自分」、「弟・妹を持つ、兄としての自分」、「ホワイトペガサス隊の1員としての自分」、などの「自分」が挙げられる。その中で、いずれ捨てなければならないのが「子供としての自分」。そして、どういう自分になりたいかは、自分で決めなくてはならない。

ススムは13歳だが、家なき子のレミも、最終回(高屋敷氏演出回)では13歳になる。家なき子においては、13歳=一人前になりかかっている年齢として描かれ、レミは、親友のマチヤと共に(大人に依存しない)旅に出る。
ススムもまた、「一人前になりかかっている」状態として、高屋敷氏は描いているのではないだろうか。

高屋敷氏は、本作の最終回の脚本も手がけている。ススムが最後にどういった成長を遂げるのかも、注目していきたい。