カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

あんみつ姫38話脚本:三蔵法師の男気

あんみつ姫は、倉金章介氏の漫画のアニメ化作品で、お転婆なお姫様・あんみつをヒロインとした、和風ファンタジーコメディ。監督は案納正美氏で、今回のコンテ・演出は中村隆太郎氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、あんみつ姫の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%BF%E3%81%A4%E5%A7%AB

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  • 今回の話:

ひょんな事から世界を巡ることになったあんみつ姫は中国に降り立ち、そこで孫悟空をはじめとした西遊記の面々に出会う。
妖怪女王に毒を盛られた孫悟空達を救うため、あんみつ姫は妖怪女王と対峙。
おっとっと(あんみつ姫と行動を共にしている猫)の機転により、女王から奪取した解毒剤で復活した孫悟空達と共に、あんみつ姫は妖怪女王と戦って勝つ。
孫悟空達と別れ、妖怪女王から得た扇で日本へ向かうあんみつ姫と、おっとっとだったが、些細な事で扇から落ちる。まだまだ冒険は続くのだった。

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今回の舞台となる中国にて、あんみつ姫孫悟空達と出会うわけだが、高屋敷氏は西遊記もの・『孫悟空シルクロードをとぶ!!』の監督をしており、その経験が活きていると考えられる。

序盤、空腹のあんみつ姫がラーメンを何杯も食べるシーンがある。飯テロは、高屋敷氏の定番の特徴。F-エフ-・グラゼニコボちゃん(脚本)と比較。

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三蔵法師達の目的地・天竺(インド)についての説明にて、地図が出てくる。地図も頻出。空手バカ一代(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。

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沙悟浄が、関西弁のお調子者という設定なのだが、高屋敷氏が演出参加した宝島の登場人物・パピー(イギリス人だが、関西弁のお調子者)に似た感じがする。宝島の経験は、高屋敷氏の中で大きいようだ。

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孫悟空達が、妖怪女王の手下に騙されて、ご馳走を振る舞われる場面も飯テロ。
カイジ2期・MASTERキートン(脚本)と比較。

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孫悟空猪八戒沙悟浄は、妖怪女王の手下が酒に盛った毒にやられ、酒を飲まなかった三蔵法師は妖怪女王のもとへ拐われてしまう。残されたあんみつ姫と、おっとっと(猫)は、孫悟空に如意棒と金斗雲を託され、妖怪女王の持つ解毒剤を取りに行く。

一方妖怪女王は、皇帝が三蔵法師に天竺へ行くよう命令したのは厄介払いのためで、妖怪を差し向けているのも皇帝だと話し、三蔵法師はショックを受ける。
この、皇帝の策略は中々綿密で、頭を使う策を好む高屋敷氏らしい。

妖怪女王の居城に乗り込んだ、あんみつ姫とおっとっとであったが、おっとっとを、以前飼っていたペット・アレキサンダーと見間違えた妖怪女王は、おっとっとを猫可愛がりする。
このへんは、彼女に可愛げがある。
高屋敷氏は、善悪の区別を明確にしない特徴があり、立派だったり、悲しい過去があったり、憎めなかったり、かっこよかったりする敵役を出す。
ワンダービートS(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)、MASTERキートン蒼天航路(脚本)も、そういった要素を持つ敵役やゲストが出る。

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妖怪女王は、おっとっとを溺愛し、あんみつ姫三蔵法師を投獄する。
おっとっとは、妖怪女王を上手く騙して隙を作り、解毒剤と、(どんな物も吹き飛ばせる)扇を盗む。こういった機転と知恵を働かせるキャラを、高屋敷氏は重用する。
カイジ(脚本)のカイジをはじめ、蒼天航路(脚本・シリーズ構成)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)でも、知恵を働かせるキャラにスポットが当たっている。

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おっとっとから解毒剤と扇を受け取ったあんみつ姫は、如意棒を使って脱獄し、孫悟空沙悟浄猪八戒に解毒剤を飲ませる。

そして、追って来た妖怪女王や妖怪達と、孫悟空達・あんみつ姫はバトルを繰り広げる。
その最中、三蔵法師は、自分はどうなっても構わないから、孫悟空達や、あんみつ姫の命は取らないで欲しいと言う。
それを聞いた孫悟空は、自分達と三蔵法師は一心同体なのだと、三蔵法師を諭す。
一心同体の関係は、F-エフ-(シリーズ構成・脚本)、ど根性ガエル(演出)、蒼天航路(脚本・シリーズ構成)などなどで、強調されている。

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結束を高めた孫悟空達や、あんみつ姫の活躍で、妖怪女王は敗退する。

三蔵法師は、(皇帝の命令として)天竺に行く意味は無くなったけれど、それでも自分の意志で、天竺に経典を取りに行き、その後ヨーロッパに行きたいと語る。「自分の道は自分で決めろ」は、高屋敷氏が掲げる、大きなテーマの一つ。グラゼニ・はじめの一歩3期・蒼天航路(脚本)などでも、そのメッセージは強烈に打ち出されている。

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孫悟空達と別れ、妖怪女王の扇に乗って日本を目指す、あんみつ姫とおっとっとは、皆への土産を確認する。心のこもった贈り物は、よく出てくる。ワンダービートS(脚本)と比較。

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(他の人の為の)お土産を欲しがったおっとっとは、あんみつ姫と小競り合いになる。このような幼いやりとりも色々な作品で見られる。元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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この小競り合いの結果、あんみつ姫とおっとっとは転落し、まだまだ冒険は続くのだった。

  • まとめ

アクション作画が凄い回であるのだが、それと同時に注目したいのは、三蔵法師の成長と男気。
人気ドラマの影響で、日本では三蔵法師は中性的なイメージだが、今回の三蔵法師は、見た目は中性的でも、最終的には天竺に行く意志を自分自身で示し、そしてその次はヨーロッパに行きたいと宣言する男気を見せる。

また、彼のこういった悟りは、前述の通り「自分の道は自分で決めろ」という、高屋敷氏の大きなテーマの一つを体現しており、1話内で、絶望・逆境・不屈・成長を描ききっている点でも見事だと思う。

そして、そんな三蔵法師と一心同体だという、孫悟空沙悟浄猪八戒の、仲間愛も描かれた。「仲間がいるから自分がいる、自分がいるから仲間がいる」というのも、高屋敷氏が強く前面に押し出す要素である。

三蔵法師達はラスト近くで、再び天竺へ旅立つわけであるが、旅立ちエンドは多い。このルーツは、高屋敷氏が好きらしき、山田洋次監督作品の一つ「男はつらいよ」の、しょっちゅう旅をしている寅さんではないだろうか。

とにかく、この短い尺の中でも「男の成長と旅立ち」を表現しきっていることに、高屋敷氏の、一貫した強いメッセージを感じた回だった。