カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

アンパンマン498B話脚本:食で世を乗り切れ

それいけ!アンパンマン』は、やなせたかし氏の絵本を原作とした国民的アニメ。
監督は(基本的に)永丘昭典氏。
今回のコンテは矢野博之氏で、演出は秦義人氏。脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、当ブログのアンパンマンに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

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  • 今回の話:

ばいきんまん(アンパンマンの宿敵)は、ケーキが食べたいと駄々をこねるドキンちゃん(ばいきんまんの相棒)のため、ケーキコンクールを開催して皆の作ったケーキを盗む作戦を立てる。

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冒頭、ドキンちゃん(アンパンマンの宿敵・ばいきんまんの相棒)の部屋の花瓶が映る。花で間を置くのは、しばしば見られる。おにいさまへ…コボちゃんストロベリーパニック(脚本)と比較。

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続いて、ぬいぐるみが映る。こういった「物」の「間」も、色々な作品にある。
おにいさまへ…(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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雑誌でケーキの写真を見たドキンちゃんは、ケーキが無性に食べたくなる。飯テロは定番だが、コボちゃんMASTERキートン(脚本)など、雑誌やレシピが発端でスイーツを作る“劇中飯テロ”にも、高屋敷氏は色々と縁がある。

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ドキンちゃんは、ばいきんまんの部屋に乱入し、ケーキを沢山食べたいと駄々をこねる。おにいさまへ…(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ストロベリーパニックワンダービートS(脚本)などなど、食いしん坊描写は多い。

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困惑するばいきんまんだったが、ある計画を思い付く。忍者戦士飛影・トンデケマン(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、カイジ2期(脚本)ほか、凝っていて回りくどい作戦を立てるキャラは、数々の作品で目立つ。

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ばいきんまんは、ケーキ大王なる人物に変装し、ケーキコンクールを開くからと、ジャムおじさん(パン屋)と、その助手のバタコに監修を依頼する(ケーキの味が保証される)。騙すために変装するのは、ルパン三世2nd(脚本/演出/コンテ参加)でもおなじみ。

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そしてケーキコンクール当日、ケーキ大王に扮したばいきんまんは、出来上がりが待ちきれず、皆に迷惑ばかりかける。
人に迷惑をかけまくるあたりは、元祖天才バカボン(脚本/演出/コンテ参加)の、バカボンのパパを彷彿とさせる。

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あらためて、皆はケーキを作る。ケーキを作る工程が具体的で、非常においしそうである。
チエちゃん奮戦記(脚本)でも、お好み焼きを作る過程をじっくりと見せる、強烈な飯テロ場面がある。

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そして皆のケーキが出来上がる。こちらも頻出の飯テロ。おにいさまへ…・怪物くん(脚本)、家なき子ど根性ガエル(演出)と比較。特に、ど根性ガエルのケーキについては、高屋敷氏の飯テロのルーツ的なものを感じる。

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ここで、ばいきんまんは正体を明かし、皆のケーキをごっそり奪う。たかだかケーキのために、ここまで凝った事をやる心意気と執念に関しては、ルパン三世2nd(脚本/演出/コンテ参加)のルパンや、宝島(演出参加)のシルバーに通じるものがある。

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チーズ(ジャムおじさんの飼い犬)の嗅覚を使い、ばいきんまんに追いついたアンパンマンは、ばいきんまんと戦闘に。
ばいきんまんがグローブを使うので、なんとなくボクシング的。ボクシングといえば、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)など、高屋敷氏は関わりが深い。

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ばいきんまんは、手下のかびるんるんを使いアンパンマンを戦闘不能にする。
そしてフォローに入ったクリームパンダ(ルーキーのヒーロー)も、「騙される方が悪い」と、腹痛を装った隙に投げ飛ばす。
こういったシビアさは、カイジ(脚本)でも強調されている。

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そこをアンパンマン号(ジャムおじさん達の特殊車輌)が助太刀。メロンパンナ(女性ヒーロー)の協力で、バタコはアンパンマンに新しい顔を供給。好チームプレーは、ワンナウツカイジ2期・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)でも印象深い。

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追い詰められた、ばいきんまんは再び腹痛のふりをしようとするが、クリームパンダにそれを見破られ、アンパンマンの必殺アンパンチを食らい退場する(ドキンちゃんも退散)。
騙された側のリベンジは、カイジ2期(脚本)でも強調されている。

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取り戻したケーキで、皆はケーキパーティーをする。ジャムおじさんは、皆で一緒にケーキを食べ、お茶を飲む大切さを説くのだった。皆で美味しいものを食べる重要性は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ど根性ガエル(演出)、はだしのゲン2・カイジ2期(脚本)ほか、前面に出ることが多い。

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  • まとめ

まず、敵側が凝った作戦を立てるあたりは高屋敷氏担当作では定番。敵役ながら、なかなか感心させられる作戦も多い。勧善懲悪の話でも、複雑な話でも、このあたりは強調され、同氏のこだわりが見られる。

先述の通り、ケーキ作りで(変装した)ばいきんまんが皆に迷惑をかけるのは、元祖天才バカボン(脚本/演出/コンテ参加)の、バカボンのパパ的。悪意が無い所も共通。悪意のない迷惑行為こそ悪質ということかもしれない。

ばいきんまんが「騙される方が悪い」とクリームパンダを騙すあたりは、あんみつ姫(脚本)で、あんみつ姫がライバルに騙される場面と共通するものがある。キッズアニメでもシビアなあたり、心理戦が展開されるカイジ(シリーズ構成・脚本)に繋がる。

あんみつ姫が騙される場面がある回に関しては、以前書いたこちらを参照:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/02/20/191235

騙される方が悪いといっても、騙されたら同じ手は二度と食わず、リベンジをしていけというスピリッツも強調されている。これに関しても、カイジ1・2期(シリーズ構成・脚本)のシリーズを通して強く前面に押し出されている要素。

また、連発される飯テロに関しては流石。演出作にしろ脚本作にしろ、高屋敷氏の「食」へのこだわりは本当に凄い。これは数多の作品に見られる、同氏の大きな特徴であり、出てくる度に面白い。

そして、皆で美味しいものを食べることの重要性も、数々の作品で感じ取れる。これは、孤独を万病の元と取る高屋敷氏のポリシーと深い関わりがあると思う。心の不調には「食」が効き、皆で食べること(=孤独ではない)で、その効果は強まるといった強い主張が見られる。

皆で美味しいものを食べることの大切さについては、以前書いた、元祖天才バカボン13B話(演出/コンテ)についてのブログ記事も紹介したい:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2017/05/08/183707

こう見ていくと、食べることは生きること、生きることは食べること―というシンプルな考えに行き着く。
はだしのゲン2(脚本)では、終戦直後の広島という過酷な環境で、皆で餅を食べて笑顔になる場面がある。これも、その考えが如実に表れている。

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この世は騙し騙されのシビアな面もあれど、騙されたならリベンジすればいいし、仲間や家族と一緒に美味しいものを食べることでシビアな世界を乗り切れ、といったメッセージが、今回含め多くの作品に込められていると感じられた。