カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

アンパンマン526A話脚本:アニメにおける食育

それいけ!アンパンマン』は、やなせたかし氏の絵本を原作とした国民的アニメ。
監督は(基本的に)永丘昭典氏。
今回のコンテ/演出は阿部司氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、当ブログのアンパンマンに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

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  • 今回の話:

けんちん寺の、けんちん和尚は、さといもちゃんが育てた里芋を使ってけんちん汁を作るが、それをばいきんまん(アンパンマンの宿敵)に強奪されてしまう。アンパンマンは、けんちん汁を取り戻すべく戦う。

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開幕に太陽が出る。このパターンは頻出。
ジャムおじさん(パン職人)と、その助手のバタコは快晴を喜ぶ。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)では、開幕に、快晴を天に感謝する場面がある。
高屋敷氏は太陽や月など“天”を神聖なものと捉える傾向がある。

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一方、収穫どきを迎えた里芋畑が映る。美しい自然で「間」を作るのは、色々な作品で見られる。めぞん一刻(脚本)、家なき子(演出)と比較。

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里芋を育てた、さといもちゃんと、けんちん寺の、けんちん和尚は、里芋の収穫にとりかかることにする。太陽の使者鉄人28号(脚本)、宝島(演出)、はだしのゲン2(脚本)ほか、中高年キャラと子供/若者の微笑ましい組み合わせは印象に残る。

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町の子供達やアンパンマンも、里芋の収穫を手伝う。一通り収穫が進むと、子供達は木陰で休憩する。木漏れ日描写は、RAINBOW-二舎六房の七人-・カイジ2期・めぞん一刻ストロベリーパニック(脚本)などでも見られ、やはり美しい自然による「間」が形成されている。

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けんちん和尚は、けんちん寺拳法を使い、里芋の茎部分と芋部分を鮮やかに分ける。
宝島・空手バカ一代(演出)ほか、何らかの特技がある中高年キャラは目立つ。

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けんちん和尚は、収穫した里芋を使って、けんちん汁を作る。それを陰で見ていた、ばいきんまん(アンパンマンの宿敵)と、相棒のドキンちゃんは、けんちん汁を無性に食べたくなる。飯テロは頻出で、作る過程をじっくり見せる飯テロは、チエちゃん奮戦記(脚本)でも炸裂。

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ばいきんまんは、けんちん汁を強奪する。
そして、けんちん汁を食べた、ドキンちゃんは感激する。ここも飯テロ。
グラゼニカイジ2期(脚本)、宝島(演出)と比較。とにかく美味しそうな表現が多い。

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そして、追いかけてきたアンパンマンを、ばいきんまんドキンちゃんは巧みなコンビネーション技で戦闘不能にする。
忍者マン一平(監督・脚本・コンテ)やルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか、ギミック多めの作戦は色々な作品で見られる。

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アンパンマンに同行していた、メロンパンナ(女性ヒーロー)はジャムおじさんに状況を報告しに行き、けんちん和尚は拳法を駆使して、ばいきんまんと戦う。空手バカ一代(演出)やカイジ(脚本)など、強い老人は印象深い。

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ばいきんまんは、けんちん和尚の強さに圧倒されるも、なんとか網で、けんちん和尚を拘束する。するとチーズ(アンパンマン達の飼い犬)が助太刀。強い動物は、チエちゃん奮戦記・ガンバの冒険(脚本)などもインパクトがある。

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そこに、(ジャムおじさん提供の)アンパンマンの新しい顔を携えたメロンパンナが駆けつけ、アンパンマンは復活。そして挟撃に失敗した、ばいきんまんドキンちゃんを倒す。隙を見逃さず、頭を使って敵を倒す事は、カイジ2期(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)でも強調されている。

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けんちん汁を取り戻した、けんちん和尚は、あらためて皆にけんちん汁をふるまう。カバオ(町の子供達の一人)は熱がりながらも、美味しそうにけんちん汁を平らげる。ここも飯テロ。グラゼニ(脚本)の、熱々の唐揚げを食べる場面と比較。

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皆は思う存分、けんちん汁を堪能する。皆で美味しいものを食べる大切さは、ど根性ガエル家なき子(演出)、カイジ2期・グラゼニ(脚本)でも強く出ている。

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ラストに太陽が映る。太陽で締め括るパターンは結構ある。グラゼニ(脚本)、ガイキング空手バカ一代(演出)と比較。

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  • まとめ

とにかく、食べ物を美味しそうに見せることに非常にこだわっているのがわかる。
先述の通り、作る過程をじっくり見せることで、視聴者に「食べたい!」と思わせるのが上手い(作中でドキンちゃんも「食べたい!」を連発)。

更に、食べ物の匂いや熱さまで伝わる表現も凄い。これも視聴者の「食べたい!」という感情をかきたてる。また、状況も美味しさを増幅させるエッセンスになっている(今回で言えば、里芋の収穫直後だったり、皆で食べたり)。

例えば、カイジ2期(脚本)のビールは、労働の後の1ヶ月ぶりのビール。グラゼニ(脚本)の場合は、怪我から復帰後のビールと焼き肉。はだしのゲン2(脚本)の場合は、戦後の過酷な状況での餅。こういう背景も、視聴者の、美味しそうだという感情をかきたてていく。

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色々な作品で、高屋敷氏は「食べる」ことの重要さ、素晴らしさを訴えているわけであるが、国民的キッズアニメである本作でこれを訴えることは、アニメを通しての「食育」とも言えるのではないだろうか。

早いうちから、何か精を出した後で食べる物や、皆で食べる物が美味しいということを知っておけば、情緒が豊かになったり、食欲が出たりするわけで、かなり重要なことに思える。

高屋敷氏自身、純粋に食べる事が好きということが窺える。20年も、食べたものを記録している程である(スタジオディーンの、グラゼニのミニコラムより)。そこから発展して、数十年にわたり「食」の重要性を説いている姿勢は、かなり凄い。

カイジ2期(脚本)の、ビール、焼き鳥、ポテチ、肉じゃが…の「豪遊」シーンが美味しそうで悶絶した人は多いと思うが、これもまた、高屋敷氏の「飯テロの歴史」の1ページとも言える。アニメ史に残る飯テロに多く関わっていると言っても過言ではない。

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今回は、「食」や「友情」の大切さと共に、お年寄りの存在の大切さも説かれていると思う。けんちん和尚の優しさと強さ、知識の豊富さは、印象に残る。
とにかく高屋敷氏は、中高年キャラを目立たせる。

ともあれ今回は、どう飯テロを行うかの技術が炸裂しており、高屋敷氏の並々ならぬ「食」へのこだわりが窺える。同氏の話の構成は、計算が緻密なのだが、それを活かし巧妙に、本作を見る子供達への食育が成されていると言える。