カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ31話脚本:キャラメイキングの確かさ

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:三家本泰美氏、脚本:高屋敷英夫氏。

レイモンド飛田を組長とするヤクザ・地獄組は、大規模な花札の賭場“大阪カブの会”を開帳。そこにテツ(チエの父)と百合根(お好み焼き屋)が入り込み、大騒動に。

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ヤクザ・地獄組が開帳した一大賭場“大阪カブの会”に入り込んだテツ(チエの父)と百合根(お好み焼き屋)を案じつつ、チエとおバァはん(チエの祖母)はラーメンを食べる。飯テロは実に多い。怪物王女カイジ2期・アンパンマングラゼニ(脚本)と比較。

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おバァはんは、人間は孤独でひもじくて寒いと不幸になるから、ご飯はしっかり食べるべきと語る。それを聞いたラーメン屋は感銘を受ける。背中による感情表現は、しばしば出る。ワンナウツストロベリーパニックグラゼニ(脚本)と比較。

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おバァはんの説く、食べる事とメンタルの重要な関係性は、おにいさまへ…グラゼニワンダービートS(脚本)などでも強調されている。高屋敷氏の並々ならぬ拘りが感じられる。

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一方、賭場に入り込んだテツは、近くにいた参加者のヤクザをどつき回して、賭場の仕組みを吐かせる。ハローキティのおやゆびひめ・カイジ(脚本)、ど根性ガエル(演出)、おにいさまへ…(脚本)など、味のあるモブは多い。

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賭場は、煎餅(原作ではビスコ)をチップがわりにする仕組みで、もし警察が来たら煎餅を見せてごまかす算段。カイジ(脚本)もそうだったが、高屋敷氏はルールのまとめ方・語り方が上手い。

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テツは、酒を飲んで寝ていた百合根を起こす。愛嬌のある酔っぱらい描写は結構ある。ガンバの冒険(脚本)、ど根性ガエル(演出)、カイジ2期(脚本)と比較。

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そして、テツと百合根はバカヅキで、カブ(花札のゲーム)で連勝する。大喜びで踊る二人が可愛い。おじさんの可愛さは、グラゼニワンナウツ(脚本)などでも目立つ。

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調子づくテツと百合根にイラついたヤクザ達は、二人に襲いかかるが返り討ちに。レイモンド飛田(地獄組組長)は、ほとほと参ってしまう。やられる側が気の毒になってくる話作りは、カイジ2期(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)など、多く見られる。

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レイモンド飛田は、ついに地獄組本部ビルの権利書を賭けてテツと大勝負しようとする。その時、包囲していた警察が賭場に突入を開始。小鉄(チエの飼い猫)とジュニア(百合根の飼い猫)も動く。ここは色々なキャラの行動がテンポよく捌かれていて上手い。

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レイモンド飛田は、負けた場合解散するとして、部下に今までの感謝の意を伝え泣く。アンパンマン(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)などでも、やられ役の悲哀が印象に残る。

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警察の突入を受けたヤクザ達は、テツの煽りを受けて抗戦を開始。レイモンド飛田も消火器で応戦する。高屋敷氏は、水ぶっかけに縁がある。らんま1/2カイジ2期(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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テツは、もうけた煎餅を抱えて逃げる準備をし、成り行きでミツル(テツの幼馴染で警官)を吹っ飛ばす。何かを回転させる動きは、ど根性ガエル(演出)でも目立っていた。もともと、高屋敷氏が共に仕事する事が多かった出崎哲・統氏が回転を好む。

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酔いから覚めた百合根は、状況が掴めずテツに自己紹介する(酒で人格と強さが変わる)。ここも可愛い。ワンナウツグラゼニ(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、おじさんの可愛さは色々な作品で出ている。

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ジュニアと小鉄の導きで、テツと百合根は雨どいをつたい脱出を図るが、刑事に見つかり揉み合いに。すると雨どいが倒れ、全員気絶。小鉄とジュニアは、惨状に目を覆う。RIDEBACKガンバの冒険(脚本)ほか、キャラの可愛さは数々の作品で引き出される。

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小鉄の導きにより、チエと、おバァはんはテツと百合根を、ラーメン屋から借りた屋台に乗せ、逃げ出すのだった。
ここも、各々のキャラの動向を捌くのが上手い。

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  • まとめ

本作は、事情がある場合を除き、徹底して原作に忠実な作り。なのに、不思議とスタッフの個性は出ている。また、「原作をなぞるだけの単純作業」とは一線を画しているのも感じられる。

これは、巨匠たる高畑勲監督のもと、原作の面白さを損なわないよう、管理が徹底されていたのではないかと思う。再三書いていることであるが、「原作に忠実」であるためには、かなりの技術力が要る。

あと、孤独の恐ろしさと“食”の大切さを説くのがポリシーである高屋敷氏が今回の脚本を担当したのは、縁を感じる。おバァはんが、食べることの大切さを説くくだりは原作通りだが、同氏が色々な作品で主張してきた事とシンクロしている。

勿論、縁だけでなく、原作からどこを強調したいかで個人差が出る。高屋敷氏の場合は、やはりメンタルと食の関係の重要性を前面に出したい意向があると考えられるし、そのための技術も、同氏は持っている。

それ以外の面では、やはりキャラの愛嬌が目立つ。演出をする場合も、キャラの可愛さが際立っていたが、脚本の場合も、不思議とキャラが幼く、可愛くなる傾向が、高屋敷氏にはある。

これは高屋敷氏が、演出面(芝居付けなど)からでも文芸面(台詞や話など)からでも、キャラメイキングに秀でるからではないかと考えられる。とにかく、同氏はキャラの掘り下げが上手い。

そして、複数のキャラの動向を捌く技術にも長ける。複雑な人間模様が展開される本作では必須なためか、この技術は本作でかなり磨かれた感がある。「チエ前・チエ後」で高屋敷氏の歴史を分けたい程だ。

これも何度か書いているが、高屋敷氏の「演出の師」が出崎統氏ならば、「脚本の師」は(本作監督の)高畑勲氏なのではないかと思っている。それくらい、本作が高屋敷氏に与えた影響は大きいと思う。あらためて、興味が尽きない。