カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ47話脚本:夢と現実

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:横田和善氏、脚本:高屋敷英夫氏。

チエと拳骨(チエの父・テツの恩師)は、テツとヨシ江(チエの母)のデートをこっそり見守る。

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腹巻き無しだと腹の調子が悪くなる事が判明したテツ(チエの父)は、弟分のカルメラ兄弟と共に、腹巻き無しで何分耐えられるかチェックする。原作だと、ここの前に別のシークエンスがあるがカットされており、テンポ重視の姿勢が窺える。

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一方、たまたま鉢合わせた拳骨(テツの恩師)、チエ、ヨシ江(チエの母)は談笑する。チエと拳骨が可愛い。太陽の使者鉄人28号・はじめの一歩3期(脚本)ほか、年の差がある微笑ましいコンビは目立つ。

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拳骨はチエ達を映画に誘う。チエは、ヨシ江が市川雷蔵のファンだという話をし、テツと市川雷蔵が少しも似ていないと、拳骨と共に笑う。それを聞くヨシ江の表情が変化するのは、アニメオリジナル。一瞬のアニメオリジナルの表情は、RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…(脚本)などでも確認できる。

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ヨシ江は、チエと拳骨だけで映画に行くように言う。それに従い、チエと拳骨はヨシ江と別れるが、テツを見かけ、テツとヨシ江が鉢合わせするのをこっそり見守る。
ここも拳骨とチエが可愛い。宝島(演出)、カイジ2期(脚本)など、やはり年の差コンビの可愛さは強調される。

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久々に二人きりになり緊張するテツをよそに、ヨシ江はどこか嬉しそうに笑う。
カップルの微笑ましいやりとりは、めぞん一刻(脚本)・ど根性ガエル(演出)ほか、数々の作品にある。

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チエと拳骨は、ヨシ江とテツの後をつける。拳骨は、二人の行動を予想し、“防空壕”という喫茶店に先回りする。ここはチエのモノローグ含めテンポがいい。今回は原作通りだが、高屋敷氏はモノローグの使い方が上手い。

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チエは、チョコレートパフェに舌鼓を打つ。飯テロは実に多い。
怪物王女カイジ2期(脚本)と比較。

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拳骨の予想した通り、ヨシ江とテツが“防空壕”に来る。テツが緊張する一方、ヨシ江はよく笑う。シチュエーションは違うが、ガイキング(演出)やアンパンマン(脚本)ほか、笑顔はクローズアップされる。

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その後、チエと拳骨は一応映画館に行き、内容だけチェックする。帰宅したチエとヨシ江は、お互い嘘八百の話をして談笑する。ここも、アンパンマンカイジ2期(脚本)などと同様、“食”と“笑顔”の重要性が出ている。

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小鉄(チエの飼い猫)とジュニア(お好み焼き屋・百合根の飼い猫)も、夕飯のおこぼれを美味しそうに食べる(アニメオリジナル)。ここも飯テロ。グラゼニ(脚本)、宝島(演出)、ガンバの冒険(脚本)と比較。

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しばらくして、テツがバテバテで帰宅。
夜、テツは「雷蔵の手紙」という寝言を言う。それを聞いた小鉄は、雷蔵の手紙とはラブレターの事かもと推理する。ここも可愛い。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ガンバの冒険(脚本)など、高屋敷氏はキャラの可愛さを引き出すのが巧み。

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後日。調子の上がらないテツは、好物のかりんとうをつまむ。ここも原作より具体的な描写の飯テロ。カイジ2期・ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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小鉄とジュニアは、やけに上機嫌なチエを目撃する。ここも、彼らに愛嬌がある。
アンパンマンガンバの冒険(脚本)など、コンビでの可愛さも強調される。

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レイモンド飛田(元ヤクザ・地獄組組長。現在ボクシングジム経営)はテツをボクサーにすべく、契約書を作成。チエにもそれにサインするよう説得してほしいと、おバァはん(チエの祖母)に頼む。ここも、グラゼニ(脚本)、宝島(演出)などと同様に、おじさんが可愛い。

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おバァはんは、チエは色々苦労してるから、契約書の類いは警戒するだけだとレイモンド飛田を諌め、契約書を破る。原作通りだが、F-エフ-・ワンナウツ(脚本)ほか、紙を破る場面は結構あり、比べると面白い。

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そこにチエが来て、テツがボクシングするところを見に行ってもいいと言う。
レイモンド飛田(とその部下)は喜び、テツにそれを知らせるべく走る。ここもワンナウツ・まんが世界昔ばなし(脚本)と同じく、おじさんの可愛さが引き立つ。

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おバァはんは、チエを家に上げ、回転焼きを出す。ここも飯テロ。おにいさまへ…・怪物くん(脚本)と比較。

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チエは、テツとヨシ江のデートを目撃したことを話す。それを聞いた、おジィはん(チエの祖父)は無邪気に喜ぶが、おバァはんに、きつめにたしなめられる。ここもおジィはんが可愛い。グラゼニ(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、やはり中高年キャラの愛嬌を出すのが上手い。

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おバァはんとチエは、テツがボクシングに負けて(少しは)現実を見るべきと思っており、テツを心配するおジィはんは、おバァはんに理不尽にいじめられる。ここも宝島(演出)やRAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)などと同様、中高年キャラの優しさ・可愛さが引き立っている。

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おバァはんは、夢ばかり見ている男性陣に呆れる。辛辣な事を言う女性の描写は、めぞん一刻・F-エフ-(脚本)など、印象に残るものが多い。

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おバァはんとチエは、テツにボクシングをするよう言い、チエは「雷蔵の手紙」というワードを出す。するとテツは動揺するのだった。
宝島(演出)、あしたのジョー2(脚本)ほか、高屋敷氏は、要所要所でしっかりしている子供の描写が上手い。

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  • まとめ

 前半は、テツとヨシ江を尾行するチエと拳骨が可愛い。また、テツとヨシ江の、どこか微笑ましい関係性の描写が丁寧に描かれている。

 互いに嘘八百の話をしながら夕飯を食べるチエとヨシ江の場面も情緒があり、高屋敷氏が重きを置く“食”と“笑顔”の大切さが前面に出ている。

 後半は、原作でも主張されている通り、夢ばかり見ている男性陣と、シビアな女性陣の対比が鮮やかに描かれている。
高屋敷氏はキャラの可愛さを引き出すのに長けるので、夢見がちな男性陣の愛嬌が一層引き立っている。

 推測ではあるが、高屋敷氏は、夢見がちな男性陣にシンパシーを感じているのではないだろうか。他の作品でも、「夢に向かって進む男」の魅力が強調されている節がある。

 それもあってか、現実路線の、おバァはんとチエが少し意地悪に見えてしまう。
勿論、どっちが良い、悪いという話ではないのだが、そう見えるのも、高屋敷氏がキャラに可愛さを付与するのが上手いからだと思う。

 高屋敷氏が脚本を担当した、まんが世界昔ばなしのガリバー旅行記でも、小人国の王様とガリバーの関係性が可愛く描かれているが、ガリバーは、小人国の食糧を、いつか自分が食い尽くすのではと危惧し、小人国を出る。これも、夢のような時間と、現実のせめぎ合いが描かれる。

まんが世界昔ばなしのガリバー旅行記(高屋敷氏脚本)については、以前書いたこちらを参照:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/06/14/135621

 それにしても、キャラが可愛く無邪気に感じられる現象は、本当に高屋敷氏担当作に多い。高屋敷氏の武器ともいえる。その“武器”を見事に使い分け、主張を出しているのも流石。

 一方、先に述べたように、「現実」を持ち出してくるシビアな面も多々あり、それが話を深くしている。
そういった面白さも感じられる回だった。