カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ44話脚本:重要な一瞬

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:御厨恭輔氏、脚本:高屋敷英夫氏。

レイモンド飛田(元ヤクザ・地獄組の組長)が新設したボクシングジムのコーチに(半ば強引に)就任したテツ(チエの父)。レイモンド飛田は、そんなテツに、強力な元ボクサー・ワイルド蛮地をぶつける。

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レイモンド飛田(元ヤクザ・地獄組の組長)が新設したボクシングジムのコーチに就任したテツ(チエの父)はロードワークをするが、チエにゲタを投げつけられる。自転車転倒場面は結構出る。ど根性ガエル(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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チエは、前任者から職を半ば強奪したテツに怒っており、また、就職したというテツの話に騙され、テツに小遣いをやってしまった、おジィはん(チエの祖父)を責める。ここは台詞運びのテンポがいい。

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テツに翻弄されるレイモンド飛田は、元ウェルター級1位ボクサー・ワイルド蛮地を呼んだと、百合根(お好み焼き屋)やカルメラ兄弟(テツの弟分)に話す。ここも会話が軽快。この技術は、グラゼニ(脚本)の、殆ど台詞だけで進行する回などにも活かされている。

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何も知らないテツは、当の蛮地の特徴的なモミアゲをいじって挑発し、ケンカを売る。タイプが色々違うが、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、カイジ2期(脚本)など、キャラがうまく人を煽る場面は印象に残る。

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テツと蛮地は、スパーリングで対戦することに。チエやカルメラ兄弟、百合根、おバァはん(チエの祖母)は、流石にテツを心配する。
縁なのか、あしたのジョー2・はじめの一歩3期・F-エフ-(脚本)など、ボクシング要素は多い。

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スパーリングが始まると、テツは顔面にパンチをくらいながらも蛮地を一発KOする。ここも、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)のボクシング場面と比較すると、重なるものがある。

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テツの勝利に、百合根は歓声を上げる。ここも、あしたのジョー2・はじめの一歩3期・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)の、ボクシングの試合におけるギャラリーの反応と比べると面白い。

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後日。テツが家の入り口で自分を呼ぶので、店の売り上げ計算をミスしてしまったチエは苛立つ。宝島(演出)、あんみつ姫(脚本)など、子供の子供らしい所作は強調される。

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苛立ちながらチエがテツに応対すると、テツは(絡まれるのが嫌だからと)モミアゲを剃った蛮地を紹介する。グラゼニガンバの冒険(脚本)など、男同士の子供っぽい絡みは多く見られる。

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蛮地はチエに、テツの強さを力説するが、チエから、テツが普段何もせず、ヤクザをどついているという話を聞き驚く。テツは、そんな蛮地を椅子で殴る。ここも会話のリズムがよく、グラゼニ(脚本)の、殆ど台詞のみで展開される回を思わせる。

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テツが外をぶらつく一方、ミツル(テツの幼馴染で、警官)は、出産のため入院した妻が心配で、色々な人に電話をかけまくる。そんなミツルの相手をするタカ(ミツルの母)と拳骨(テツの恩師)は疲れる。ここも展開がスムーズで上手い。

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電話が無いからという理由で、拳骨がチエ宅に避難すると、チエと小鉄(チエの飼い猫)は店の売り上げの検算をしていた。
マイメロディ赤ずきんめぞん一刻(脚本)など、動物の可愛さは強調される。

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そこへ、おバァはん・タカ・ヨシ江(チエの母)が合流。皆で話しているうち、皆でノブ子(ミツルの妻)の入院している病院に行くことに。ここも流れるように展開され、色々と使われている技術が高度。

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たまたま、病院へと走るミツルを見かけたテツは、カルメラ(兄)に、ミツルを尾行するよう命令する。その後、テツが何かしら思いを巡らせる「間」がある。この「間」はアニメオリジナルで、良アレンジ。

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夜、病院に集まったミツルやチエ達は、ノブ子の出産を楽しみにする。赤ちゃんにまつわる印象深い話は、あんみつ姫グラゼニめぞん一刻・F-エフ-(脚本)など多数ある。

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その後、泣き声が聞こえてきて、ミツルは感極まって泣く。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ど根性ガエル(演出)ほか、感激で男泣きする描写は強調される。

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だが、赤ちゃんだと思われた泣き声は、テツによる泣き真似であり、テツは拳骨に叱られるのだった。ここも、おじさんの子供っぽい所作で、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ガイキング(演出)などにも見られる。

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  • まとめ

前回に引き続き、密度の濃い構成。
台詞だけで進行する場面も多いのに、リズムやテンポの良さで、視聴者をグイグイ引き込む手腕が素晴らしい。

また、高屋敷氏が脚本デビューした(無記名)、あしたのジョー1からの縁が縁を呼ぶのか、ボクシング要素が面白い。筆も乗っているように感じる。

細かい所の面白さもさることながら、ミツルを見かけた後のテツの「間」も見事。たったこれだけのアニメオリジナル要素で、「人情」を醸し出すことに成功しており、スタッフ全体の総合力の高さが出ている。

こういった、一瞬のアニメオリジナル場面が、話全体、ひいては作品全体に多大な影響を及ぼす現象は、F-エフ-・グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本・シリーズ構成)でも確認できる。原作には無い「微笑」の追加が、作品を深めている。

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そもそもからして、高屋敷氏はキャラや話を徹底的に掘り下げる傾向がある。
だからこそ、自然なキャラの動向や反応を、アニメオリジナルでも表現することができるのだと思う。

本作は、おそろしく原作に忠実だが、必要に応じたアニメオリジナル要素の上手さも光っており、やはり、ダラダラ原作を書き写しているだけではないのが、今回の「一瞬のアニメオリジナル」の場面からも窺える。

本作が名作たりえているのは、原作を「アニメ」という媒体に落とし込む作業を(全スタッフが)徹底的に行ったからであると考えられる。ここから見えてくるのは、(再三書いているが)ただ原作を写していくだけでは原作の面白さを表現できないということだ。

原作つきアニメの名作やヒット作は、原作通りにしろ、オリジナル多めにしろ、原作と真摯に向き合っており、その姿勢が画面に表れるものである。あらためてそれを考えさせられる回だった。