カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ43話脚本:培われたもの

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:三家本泰美氏、脚本:高屋敷英夫氏。

元ヤクザ・地獄組組長のレイモンド飛田は、カタギになってボクシングジムを開くことになったのだが…

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冒頭、悩んでいる素振りをしたのにチエにスルーされたと、テツ(チエの父)はいじける。ワンナウツ・F-エフ-(脚本)ほか、おじさんの愛嬌は強調される。

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テツは、先日行われた、鑑別所の同窓会で、自分は大物だと感じたと話し、人付き合いを見直すと宣言。そこにたまたま来たカルメラ兄弟(テツの弟分)をどつく。
ここの展開や台詞運びはスムーズでテンポが良い。

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一方、レイモンド飛田(元ヤクザ・地獄組組長)は、お好み焼き屋(テツの友人・百合根が経営)を訪れ、ボクシングジムを立ち上げたと自慢する。
お好み焼きが映るが、飯テロは頻出。グラゼニカイジ2期・コボちゃんアンパンマン(脚本)と比較。

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そこにカルメラ兄弟が来て、テツの“自分は大物”宣言について愚痴る。レイモンド飛田は、自分は大物だからテツに狙われる、と要らぬ心配をし、他の皆は呆れる。
ここも会話のテンポが軽快で上手い。

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一方、チエが店の前を掃除していると、ヒラメ(チエの親友)が来る。
掃除を手伝い、チエ達と一緒に遊びたがる小鉄(チエの飼い猫)が可愛い。まんが世界昔ばなし(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏はキャラの可愛さを引き出すのが上手い。

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ヒラメは、出来たばかりのボクシングジムを見学しないかと、チエを誘う。ここのやり取りも可愛い。ストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)ほか、女の子同士の仲の良さを表現するのにも、高屋敷氏は秀でる。

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ボクシングジムに向かうチエとヒラメは、レイモンド飛田(と、その部下)に偶然会う。テツを遠ざけたいレイモンド飛田は、ボクシングの恐ろしさを語り、チエ達を脅かす。
ガンバの冒険(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)同様、やはりキャラが可愛い。

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チエ達が退散すると、レイモンド飛田は喜ぶ。ここも愛嬌がある。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ワンナウツ(脚本)ほか、おじさんの子供っぽい可愛さは目立つ。

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レイモンド飛田の(デタラメな)恐い話を忘れるには体を動かさねばと、チエとヒラメは公園を走ることにする。ここもやりとりが微笑ましい。ストロベリーパニックあんみつ姫(脚本)ほか、やはり高屋敷氏は、女の子同士の友情表現の上手さが光る。

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テツはというと、“大物”になると寂しくなることを実感していた。そんなテツをよそに、チエとヒラメは公園を走る。
ど根性ガエル(演出)、おにいさまへ…(脚本)ほか、“孤独”の虚しさや悲しさは、色々な作品で強調される。

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後日、学校で、知らない人について行かないよう注意喚起されたチエは、下校時、まさに知らない人に話しかけられ逃げる。ここも流れるように展開されていくのが見事。

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チエは、丁度チエ宅を訪れていたミツル(テツの幼馴染で警官)に、事の次第を報告。ミツルは、チエに声をかけた人と話し、怪しい者ではない事を確認する。
ミツルとチエの会話が可愛い。ガイキング(演出)、めぞん一刻(脚本)ほか、大人と子供の微笑ましい関係は印象深い。

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一方テツは、結局寂しくなって、お好み焼き屋の前をうろつき、その様子を窺うカルメラ兄弟と百合根は笑う。ここも愛嬌がある。はだしのゲン2・あんみつ姫(脚本)ほか、朗らかな仲間愛は前面に出される。

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テツは、通りかかったチエをダシにして、お好み焼き屋に入る。意地を張るテツをからかうチエに、百合根とカルメラ兄弟は吹き出す。ガンバの冒険(脚本)、宝島(演出)ほか、皆で笑うことの大切さは、色々な作品に表れている。

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テツと話すうち、チエはうっかり、レイモンド飛田のボクシングジムの話をしてしまう。テツはカルメラ兄弟を締め上げ、詳しい話を聞く。ど根性ガエル(演出)、ガンバの冒険(脚本)ほか、スキンシップは強めに描かれる。

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夜、育児本をチエ宅に置き忘れたミツルが、チエ宅を訪ねてくる。チエとヨシ江(チエの母)は、もうすぐ生まれるミツルの子供を楽しみにする。コミュニティの温かさは、ど根性ガエル(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)などでも強調されている。

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そこへ、昼間チエに声をかけた人が挨拶に来る。彼は、ボクシングジムのコーチに就任予定だったが、ある人に負けて去ることになったと言う。ある人とは、当然テツなのだった。ここも会話や話運びが巧み。

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  • まとめ

殆ど会話で話が進んで行くのに、飽きさせない作り。この技術は、カイジグラゼニ(脚本・シリーズ構成)でも応用が見られる。特にグラゼニ17話は、ほぼ会話のみで進行し、場が殆ど動かないのに緊迫していて面白いという神回。

グラゼニ17話については、以前書いたこちらを参照:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/04/10/095344

また、相変わらず、キャラがいちいち可愛い。不思議なことだが、高屋敷氏が関わると、キャラが可愛く、幼くなる。高屋敷氏自身の好みもあるだろうが、キャラのどこを引き出せば可愛くなるかを心得ているのだと考えられる。

また、長年高屋敷氏が取り組んでいる“孤独”の問題も強調されている。今回の場合、(原作通りだが)笑って許して(?)くれる仲間がいるテツは、幸せ者と言えるかもしれない。

話の圧縮具合にも注目したい。約22分内に、原作2話分の話を目一杯詰め込んでいる。高屋敷氏は、話の密度を濃くする傾向があるが、本作では特に顕著。

この技術も、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)やRAINBOW-二舎六房の七人-・カイジ(脚本・シリーズ構成)といった作品に大いに活かされている。これらの中には、1話内に収まっているのが信じられない話もある。

何度か書いていることだが、本作は、高屋敷氏の持てる才能と技術が花開いた節目の作品に思える。本作の監督である巨匠・高畑勲氏の影響も大きかったと考えられる。

本作で培われた技術が無ければ、カイジワンナウツグラゼニのシリーズ構成・脚本を高屋敷氏が手がける事も無かったかもしれない。それくらい、高屋敷氏の歴史の中で、本作は重要だと思う。

ジブリ時代以降は、どこかワンマンなイメージがついてまわる高畑勲氏だが、本作では、色々なスタッフ(高屋敷氏含む)の個性を尊重しているように感じる。高畑勲氏を探る上でも、本作は見逃せないと思う。

高畑勲氏はよく、スタッフを使い潰したり振り回したりすると言われる向きもあるが、少なくとも、本作を通じては、高屋敷氏含め、色々な才能を育てたのだと、強く思うのである。つくづく、鬼籍なのが悔やまれる。