カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ41話脚本:数々の化学反応

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:御厨恭輔氏、脚本:高屋敷英夫氏。

夏も終盤、ヒラメ(チエの親友)は泳げるようになる。
また、勘九郎(テツの鑑別所時代の仲間)と、その息子のコケザルがチエ宅を訪ねてくる。

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海に行った際に、酒に酔って皆に迷惑をかけた百合根(お好み焼き屋)は、菓子折をチエに渡して詫びを入れる。ここはテンポがよく、情報がうまくまとまっている。

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一方、ヒマを持て余したテツ(チエの父)は、カルメラ兄弟(テツの弟分)を引き連れて散歩する(アニメオリジナル)。カルメラ兄弟は、屋台の場所を決める抽選会に行かねばならないと語る。流れるような長台詞は、らんま1/2・1980年版鉄腕アトム(脚本)ほか、しばしば見られる。

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その頃、マサル(チエのクラスメート)はチエにちょっかいをかけていた。チエはテツに扮してマサルを脅かそうとするが、代わりに、おジィはん(チエの祖父)を驚かせてしまう。ガイキング(演出)、あんみつ姫(脚本)など、高屋敷氏は子供の幼さを引き出すのが上手い。

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チエは、おジィはんを、おバァはん(チエの祖母)のもとに運ぶ。テツに扮したメイクを落とそうとして、チエは余計に顔を汚す。ここも幼い。宝島(演出)やガンバの冒険(脚本)ほか、子供の子供らしい描写は目を引く。

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チエは、テツが怖いからといって、小遣いをやって解決しようとするのは間違っている、と、おジィはんに釘を刺す。幼いだけでなく、時にしっかりしている子供の描写は、宝島(演出)や、あしたのジョー2(脚本)など結構ある。

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当のテツは、ヒラメ(チエの親友)に偶然会い、一緒に遊ぼうと誘い、カルメラ兄弟には、抽選会に行っていいと言う。ここは色々と原作と時系列が異なるのだが、アニメオリジナルを交えて、うまいことはまっている。

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ヒラメに冷やし飴をおごろうとするテツだったが、持ち合わせがなく、逆にヒラメにおごられる。宝島(演出)や太陽の使者鉄人28号(脚本)など、年の差があるコンビの可愛さは、強く打ち出される。

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ヒラメはさらに、残ったお金で回転焼きを1つ買い、テツに半分くれる。飯テロは実に多い。MASTERキートンカイジ2期(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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その後、帰宅したテツは百合根からの菓子折を見つけ、それをヒラメにあげに行こうとする。チエとの問答の末、ヒラメに色々おごってもらったことがバレて、テツはチエにどつかれる。MASTERキートン(脚本)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、可愛らしい親子関係も多く見られる。

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チエとテツは、ヒラメの母に菓子折を渡す。ヒラメの母は、ヒラメの泳ぎが上達したと語る。ここは原作と時系列が異なるのだが、うまくなじんでいて感心させられる。

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夕陽が見守る中、ヒラメはプールで懸命に泳ぐ(アニメオリジナル)。全てを見ているような夕陽の描写は頻出。あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)と比較。

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後日、勘九郎(テツの鑑別所時代の仲間)と、その息子のコケザルがチエ宅に来る。
コケザルは、チエにペテンをしかけようとし、チエに叱られる。ガンバの冒険あんみつ姫(脚本)ほか、子供の子供らしさは強調される。

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その頃テツはというと、拳骨(テツの恩師)の家で渉(拳骨の息子)を相手に駄弁っていた。カイジ2期(脚本)や宝島(演出)ほか、互いの立場や性格が全く異なるコンビの愛嬌は前面に出される。

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何でもお見通しのチエは拳骨の家に電話をかけ、テツを呼び出す。電話中、タバコを吸おうとしたコケザルを、チエは蹴飛ばす。児童喫煙を咎める場面は、はだしのゲン2・あしたのジョー2(脚本)でも印象深い。

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家に戻ったテツは勘九郎を歓迎し、生意気な口をきくコケザルをどつく。
グラゼニ・F-エフ-(脚本)ほか、スキンシップ多めの友情描写は多い。

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テツと勘九郎が話し込んでいる間、コケザルはチエに、一緒に詐欺行為をしないかと持ちかける。チエは、そんなコケザルをどつく。ガンバの冒険(脚本)、ど根性ガエル(演出)ほか、子供っぽい描写がやはり上手い。

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外に出たチエは、ヒラメに偶然会う。泳げるようになったヒラメは、チエに奢りたい気分だと言うので、二人は甘味処に入る(アニメオリジナル)。エースをねらえ!(演出)、おにいさまへ…(脚本)など、女の子同士の友情描写も、高屋敷氏は上手い。

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その後帰宅したチエは、ポストに投函して欲しいと、往復ハガキの束をテツから渡されるのだった(鑑別所の同窓会の招待状)。コボちゃん(脚本)、忍者マン一平(監督/脚本/コンテ)、ど根性ガエル(演出)など、破壊力のある文書は強調される。

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  • まとめ

原作と時系列を変えている箇所が複数あるのだが、それらが、アニメオリジナルを混ぜつつ、うまくはまっているのが凄い。かなりの技術を要する事だと思われる。

アニメオリジナルの箇所も、原作通りの箇所も、台詞運びや話運びがキレキレで、感心させられる。特に、抽選会についてカルメラ兄弟が長々と説明する場面(アニメオリジナル)は、テンポやリズムが見事。

また、テツとヒラメ、テツと渉、チエとヒラメ、チエとコケザルなど、キャラとキャラのかけあいが可愛い。とにかく高屋敷氏が関わると、不思議とキャラが可愛くなる。

高屋敷氏はキャラを深く掘り下げることに長けるが、その際に、どこを目立たせれば可愛くなるかを、同氏は把握しているのかもしれない。いずれにせよ、キャラを徹底的に分析する姿勢が窺える。

あと、季節の情緒を取り入れる、高屋敷氏の特徴も、今回表れている。夕陽の下、プールで泳ぐヒラメの場面(アニメオリジナル)は、徐々に終わり行く夏を表現しており、どこか詩的で素晴らしい。

詩的といえば、高屋敷氏が長年共に仕事した出崎統氏も、詩的な演出を得意としている。高屋敷氏は、徹底した計算が成される“高畑式”脚本技術を取り入れつつ、自身の“出崎統式”表現のアウトプットを本作でやっている。

これによる、“高畑式”と“出崎統式”のブレンドは、アニメ史的観点から見ても面白いと思う。今では実現不可能な組み合わせと言えるからである。これは、色々な所から才能をかき集める、当時の東京ムービー(現トムス)のスタイルが成しえたことだと思う。

このように、本作は、今となっては貴重な要素が多く、どんな観点から見ても面白い作品となっている。高屋敷氏による、積極的な“出崎統流”の持ち込みによる化学反応も、今後見逃せないポイントである。