じゃりン子チエ54話脚本:男同士の絆
アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。
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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:
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- 今回の話:
演出:御厨恭輔氏、脚本:高屋敷英夫氏。
テツ(チエの父)は、丸太(チエの親友・ヒラメの兄)に、どうすれば強く見えるか・ナメられないようになるかをレクチャーする。
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チエと一緒に店の掃除を手伝うはずが、遊んでしまった小鉄(チエの飼い猫)とジュニア(お好み焼き屋・百合根の飼い猫)を、チエは叱る。ガンバの冒険(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏は動物の可愛い描写が巧み。
そこへ、おバァはん(チエの祖母)が、店(ホルモン屋)の材料を届けに来て、テツ(チエの父)が先日のガラクタ市で売りに出したボクシンググローブを話題にする。ここは、都合により原作と少々台詞が異なるが、うまくまとまっている。
テツのボクシンググローブを買ったのは丸太(チエの親友・ヒラメの兄)。テツは、どうすればナメられずに済むか、強く見えるか丸太にアドバイスする。こういった師弟愛は、はじめの一歩3期・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)などでも色濃い。
テツによる、ナメられないためのコーディネートで、丸太は駅に立って度胸試しすることに。怖じ気づいてテツにしがみつく丸太が可愛い。微笑ましいスキンシップは、F-エフ-・グラゼニ(脚本)ほか多くの作品で見られる。
そんな中、ヒラメは偶然、丸太を目撃してしまう。彼女はその後、そのことをチエに相談。二人は確認のため駅に行くが、もう丸太の姿はなかった。ここも流れるように展開され、テンポがいい。
一方、テツがヒラメを見かけてトンズラした隙に、丸太はチンピラに絡まれ殴られてしまう。テツは仕返しを提案するが、丸太は拒否。テツは、自分の意見を言った丸太を褒める。夕陽が映るが、おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)ほか、全てを見守るような夕陽は頻出。
翌日。ヒラメは、やはり丸太の部屋に、テツがガラクタ市で売っていたボクシンググローブがあったと、チエに報告。チエとヒラメは、丸太の行動を確認するため、色々と準備することに。ここは、原作に比べて情報が増やされており、肉付けが上手い。
家から男物の服を拝借したチエとヒラメは、公園に着くと、それに着替える。
小鉄とジュニアは、偶然それを目撃。
紳士として、小鉄はジュニアの目を覆う。ガンバの冒険(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、やはり動物描写が可愛い。
チエとヒラメの作戦は、男装して丸太を監視するというもの。二人は変装を楽しむ。
おにいさまへ…・ストロベリーパニック(脚本)ほか、高屋敷氏は女の子同士の無邪気な友情表現も上手い。
変装を完了したチエは、小鉄とジュニアに凄み、二匹を驚かせる。
変装といえば、アンパンマン・ルパン三世2nd(脚本)でもおなじみ。
ジュニアは、チエ達が不良になったのではと危惧するが、小鉄は、それはないと冷静に判断する。血の繋がりは無くても、温かく見守ってくれるキャラは、アンパンマン・F-エフ-(脚本)など色々な作品で印象に残る。
テツは変装したチエ達の正体を見破れないが、丸太に絡んでこいと、チエ達を煽る。子供を可愛がる場面は、アンパンマン・めぞん一刻(脚本)などにもあり、微笑ましいものになっている。
「男になれ」と、テツは丸太を見守る。年下を温かく(?)見守るキャラは、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)ほか、色々な作品に見られる。
そこにミツル(テツの幼馴染で、警官)が来て、丸太、チエ、ヒラメは派出所に連れて行かれる。ミツルはミツルで、子供達に優しい。RAINBOW-二舎六房の七人-・マイメロディの赤ずきん(脚本)などでも、そういった優しい大人がクローズアップされている。
ミツルはすぐに事情を察し、自分もテツに言われて度胸試しをし、おバァはんに怒られた経験を語る。テツとミツルの親密さが窺える。F-エフ-・陽だまりの樹(脚本)ほか、微笑ましい男の友情は濃密に描かれる。
その後、チエから事情を聞いた、おバァはんは、テツをこらしめる必要があるとして、男装してテツをとっちめることに。
F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、元気なおばあさんは色々な作品で目立つ。
チエは、刑務所帰りのヤクザがお礼参りしたいと言っているとテツに嘘を言い、ガード下におびき寄せる。ここは、原作からいくつか台詞を削り、うまいことまとまっている。
テツは、おバァはんの男装に気づかず、おバァはんに勝ってしまう。チエから、それはおバァはんだと言われたテツは動揺し、逃げ出す。色々と偉大な母と、その子供の関係は、F-エフ-(脚本)、宝島(演出)などでも強調される。
- まとめ
テツと丸太の関係性が、可愛く描かれている。RAINBOW-二舎六房の七人-(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、ボクシングを教える側・教えられる側の関係が温かく描かれており、それを彷彿とさせる。
こういった、“師弟の絆”は、高屋敷氏のデビュー作である、あしたのジョー1(無記名脚本)がルーツと思われ、空手バカ一代45話(演出/コンテ)でも、まさにそれに焦点を当てている。同氏のこだわりが感じられる。
空手バカ一代45話(高屋敷氏演出/コンテ)については、以前書いたこちらを参照:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/04/29/140122
師弟関係だけでなく、とにかく年齢や立場が全く違う、男同士の関係は、様々な担当作で濃密に描かれる。アカギ・カイジ1、2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、それは色濃い。
宝島(高屋敷氏演出参加)でもそうで、序盤からして、ジム(主人公)とビリー(元海賊船長)の関係が丁寧に描かれており、インパクトが強い。どうも高屋敷氏は、「男同士の絆」に対する独特のこだわりがあるようだ。
以前書いた、宝島に関するブログ記事一覧はこちら:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6
これはあくまで推測だが、この「絆」の描写は、高屋敷氏の実際の人生で接してきた人々との思い出が、強く関係しているのかもしれない。とにかく同氏は、血の繋がりが無くとも、家族のように密接な、男同士の関係を描くのに長ける。
高屋敷氏のポリシーの一つは、「孤独は万病の元」であるが、これと、“男同士の絆”を描くことは、関係があるのかもしれない。そういった“絆”により、孤独でないことで、キャラが救われる場面も、色々な作品で印象深い。
1980年版鉄腕アトム39話(高屋敷氏脚本)には、「伝統とは血液ではないよ」というアニメオリジナル台詞がある。これにも、「血の繋がりが無くとも温かい繋がり」を主張したい、高屋敷氏の主張が見え隠れする。
1980年版鉄腕アトム39話については、以前書いたこちらのブログ記事を参照:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2017/12/11/144344
高屋敷氏の担当作では、この「繋がり」がキャラを救う場面が前面に出ている。それは、視聴者の心も救うことが多い。これは同氏の魅力の一つであり、強みだと思うのである。