カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

まんが世界昔ばなし23B話演出/コンテ:独自世界の確立

『まんが世界昔ばなし』は、1976年~1979年まで放映されたテレビアニメ。タイトル通り、世界の童話をアニメ化した作品。
今回は『さるのきも』。脚本が首藤剛志氏で、演出/コンテが高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、まんが世界昔ばなしの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%BE%E3%82%93%E3%81%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%98%94%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%81%97

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  • 今回の話:

タイの民話。

妻の病気に効くと言われる猿の肝を求め、ワニはなんとか猿を騙して拐おうとする。

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昔、ある川のほとりに猿の国があり、そこで猿達は平和に暮らしていた。
その中には、しょっちゅう酒を飲んでいる猿がいるが、美味しそうに酒を飲む描写は多い。
ガンバの冒険カイジ2期(脚本)、宝島(演出)と比較。

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猿の国には、食いしん坊の猿もいる。食いしん坊描写や、美味しそうに物を食べる描写は頻出。RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニカイジ2期・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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食いしん坊猿はイタズラ好きでもあり、岩を他の猿に向かって転がす。
岩石を使った攻撃は、しばしば見られる。ルパン三世3期(脚本)と比較。

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次に、食いしん坊猿はイチジクの実を取ろうとするが、その最中に木から落ちる。
落ち方が、ルパン三世2nd(演出/コンテ)や宝島(演出)と共通。

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一方、川の中では、一組のワニの夫婦が暮らしていた。
このような光の射し込みはしばしば見られ、不思議なことに脚本作にも出る。
あんみつ姫(脚本)、家なき子(演出)、F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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ワニ夫婦の妻の方は病気で、夫は懸命に看病していた。
看病する場面は、ハローキティのおやゆび姫・カイジ2期(脚本)、宝島(演出)も印象深い。

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仙人から、妻の病気には猿の肝が効くと聞いたワニ(夫)は、猿の国に行き、何とか猿を騙して拐おうとするが失敗。
猿があかんべーをするが、同様の所作は結構ある。
ハローキティのおやゆびひめ・おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、めぞん一刻(脚本)と比較。

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次にワニ(夫)は、寝るのが好きな猿に声をかけるが、寝るのが至福だと言われ相手にされない。キャラが気持ち良さそうに眠る場面は、色々な作品にある。
ハローキティのおやゆびひめ・カイジ2期(脚本)、宝島(演出)、ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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そしてワニ(夫)は、酒好きの猿を、酒の話で釣るが、酒好き猿は妻に怒られ、ワニ(夫)の企みは失敗。ここは色々かわいい。高屋敷氏は、キャラの可愛さを引き出す。じゃりン子チエ(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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途方にくれるワニ(夫)は、食いしん坊の猿とぶつかる。食いしん坊猿は、落ちた食べ物をすべて食べる。ここも食いしん坊描写。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ストロベリーパニック・F-エフ-(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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ごちそうの話で釣り、ワニ(夫)は食いしん坊猿を連れ出す。ワニ(夫)から事情を聞いた食いしん坊猿は驚くが、何やら閃く。
閃きで状況を打開するのは、カイジ2期・ワンナウツ(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、MASTERキートン(脚本)などが印象的。

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食いしん坊猿は、肝は重いので今は持ってきていないが、猿の国に戻れば肝をあげる、とワニ(夫)を騙す。
ワニ(夫)は感謝し泣く。子供っぽく泣くキャラは、色々な作品で見られる。カイジ2期(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、ど根性ガエル・宝島(演出)と比較。 

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猿の国に戻った食いしん坊猿は、イチジクの実を、猿の肝だと偽ってワニ(夫)に渡す。ここの場面も色々可愛い。サイズ差を活かして可愛さを引き出すのは、宝島(演出)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)にも見られる。

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ワニ(夫)は早速、猿の肝だと思い込んでいるイチジクを妻に食べさせる。翌日、妻は元気になり、ワニ(夫)は大喜び。喜び方が可愛い場面は、数々の作品にある。
宝島(演出)、ハローキティのおやゆびひめ・ワンナウツ(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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妻の病に効いたのは夫の愛だった。ワニ夫婦は幸せに暮らす。
一方、猿の国はいつも通り。食いしん坊猿は蝶とじゃれる。蝶は結構出る(長年一緒に仕事した出崎統氏も好む)。
あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)と比較(監督は出崎統氏)。

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蝶を追ううち、食いしん坊猿は酒好き猿とぶつかる。怒った酒好き猿は、食いしん坊猿を追いかけるのだった。
幼い追いかけっこは、ルパン三世2nd・元祖天才バカボン(演出/コンテ)にも見られる。  

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  • まとめ

名前が無いのに、食いしん坊・酒好き・嫁思い…など、様々なキャラの個性がわかりやすくなっている。高屋敷氏はキャラを掘り下げることに長けるが、それが発揮されている感じがする。

そして相変わらず、キャラが可愛い、いや全体の雰囲気そのものが可愛い。
不思議だが、演出作でも脚本作でも、シリアスでもコメディでも、「可愛さ」のエッセンスが入っていることが本当に多い。

シリアスな作品においても、キャラの表情や所作に可愛さを付加することで、一種のオアシス的状況を作っていることがある。
どうにも、コメディが好きな面があるような気がする。

ルパン三世3期の高屋敷氏脚本回のサブタイトルが、山田洋次監督作品のもじりだったり、ガンバの冒険の同氏脚本回に寅さん的キャラが出たりと、同氏は山田洋次監督が好きなようだが、それが同氏のコメディ要素の元の一つかもしれない。

今回の話は、猿の肝を取る取らないなど、やりようによってはグロテスクにもシリアスにもできるわけなのだが、全体的に可愛い雰囲気になっているのは、やはり高屋敷氏の意向も入っていると感じざるを得ない。

また、色々な作品に度々出てくる蝶が気になる。洋画『西部戦線異状なし』の有名な蝶演出や、出崎統氏の影響と言ってしまえばそれまでだが、今回の蝶のような可愛い演出は、高屋敷氏らしさが出ていると思える(他作品では、シリアスなものもあるが)。

全体的な雰囲気にしろ、細かい演出にしろ、高屋敷氏の提供する「キュートさ」は非常に秀逸。シリーズものでは、それが大きな役割を果たすこともあり、独特なものがある。

そして、そういった「可愛さ」にはあざとさがなく、老若男女に適用されている。こういった所にも才能と技巧が見られ、独自の世界を構築する柱の一つになっている。とにもかくにも今回は、キュートな世界が確立されていた。