カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

家なき子25話演出:「弱者」への愛

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

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  • 今回の話:

サブタイトル:「 ガロフォリ親方」

脚本:杉江慧子氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

パリでの仕事が見つからないビタリス(レミの芸の師匠)は、しばらくレミを、知人のガロフォリに預けようとするが…。

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パリでの仕事が見つからず、宿賃が底をついたビタリス(レミの芸の師匠)は、ひとまずレミを知人のガロフォリに預けることを決意する。
像が映るが、こういった表現は結構ある。カイジ(脚本)、空手バカ一代(演出)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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続いて、鳥が飛ぶ。状況と連動する鳥は頻出。おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-・マイメロディ赤ずきん(脚本)と比較。

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ガロフォリ宅前で、ビタリスは咳き込むが、心配するレミに大丈夫だと答える。
頭に手を置く愛情表現は、色々な作品で印象に残る。チエちゃん奮戦記・マッドハウス版XMEN・はだしのゲン2(脚本)と比較。

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ガロフォリは自宅におらず、暖炉の前に座る少年がビタリス達に応対する。ビタリスは、夕方にまた訪ねると言い、レミをガロフォリ宅で待たせる。
炎のアップがあるが、この表現は多い。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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暖炉の前の少年から、ガロフォリは、(雇っている子供達が勝手に飲まないように)スープの鍋に鍵をかけるような人間だと聞かされたレミは驚く。
子供の子供らしい所作は、高屋敷氏の得意分野。あしたのジョー2(脚本)、ガイキング(演出)と比較。

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そこに、アコーディオン弾きの少年が帰ってきて、全然稼げなかったと嘆く。
味のあるモブは、様々な作品で目立つ。F-エフ-・ストロベリーパニック陽だまりの樹(脚本)と比較。

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一方ビタリスは、サーカスを訪ねて仕事を探すが、冬は人を雇う余裕が無いと言われる。旗がはためくが、状況と連動する風の描写は多々見られる。おにいさまへ…ハローキティのおやゆびひめ(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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ガロフォリ宅には、アニー(ネズミで芸をする少女)が泣きながら帰ってくる。ここも所作が子供らしい。ど根性ガエル(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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アニーは、皿を割った罰として、ガロフォリから朝食を何日も与えられず、ネズミ用の餌を食べ、ネズミを弱らせてしまったと大泣き。
ガン泣きは、よく見られる。ガンバの冒険(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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レミは、たまたまポケットにあった、朝のパンの残りをアニーのネズミにあげる。ネズミは、パンをおいしそうに食べる。飯テロは多いが、極限状態での食事シーンも印象深い。1980年版鉄腕アトムはだしのゲン2(脚本)と比較。

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ネズミが復活したのを見て、子供達は喜ぶ。ここも子供らしい芝居づけ。
ど根性ガエル(演出)、はだしのゲン2・1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。

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そんな中、偶然にもガロフォリに雇われているマチヤ(パリでレミと意気投合した少年)が姿を現す。レミは再会を喜ぶ。「男の子」同士の微笑ましい友情は強調される。F-エフ-・RIDEBACK(脚本)と比較。

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一方、寒空の中、病で倒れ込んでしまったビタリスを見かけたシスターが、ビタリスに手を差し伸べるが、彼は何とか自力で立つ。
手による感情表現は頻出。宝島(演出)、忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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ビタリスに神の加護があるよう、シスターは十字を切る。十字を切る動作は、ルパン三世2nd・元祖天才バカボン(演出/コンテ)、1980年版鉄腕アトム(脚本)にもあり、気になるところ。

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ガロフォリ宅ではマチヤが、仲間達にレミを紹介する。ここも動作が子供らしい。あしたのジョー2(脚本)、ガイキング(演出)と比較。この画像すべて杉野昭夫氏が作監でもある。

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ガロフォリの素性をレミが知らないのを見かね、マチヤはレミの手を引っ張り、廊下に連れ出して、逃げた方がいいと忠告する。
ここも、手による感情表現。ベルサイユのばら(コンテ)、ルパン三世3期(脚本)と比較。

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そこへ、当のガロフォリが帰宅。すると子供達は、一斉に整列する。左右に人を並べるのは、ど根性ガエル(演出)、カイジ(脚本)にもあり、比較すると面白い。

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子供達は、ガロフォリに気を使い、機嫌を損ねないようにする。ここも所作が子供らしい。宝島(演出)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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ガロフォリは、子供達に今日の稼ぎを聞き、収支マイナスの者にはペナルティ及びツケを課していく。要は子供達を借金漬けにしてこき使っている。
カイジ2期(脚本)の、地下労働者を借金漬けにする大槻に重なってきて、比較すると興味深い。

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ガロフォリは、稼ぎの少ない者達に、まとめて罰を与えることにする。
厳しい環境下で生きる子供達といえば、はだしのゲン2(脚本)の原爆孤児達も印象的。

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ガロフォリは、稼ぎの少ない者達を並べて、鞭を打つ準備をする。
カイジ2期(脚本)では、弱者を搾取する側の悪辣な所業にカイジが怒る。ほぼ原作通りだが強調が見られ、高屋敷氏の怒りも乗っている気がする。

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間一髪、ビタリスがガロフォリ宅に来て、ガロフォリを止める。ビタリスは怒り、ガロフォリを一喝する。
カイジ2期(脚本)で、激しい怒りを大槻にぶつけるカイジの姿と比較すると感慨深い。

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ビタリスはレミの手を取り、レミをこんな所に預けるわけには行かないと宣言し、レミ、カピ(芸をする犬)を連れ出ていく。
ここも、手による感情表現。ガイキング(演出)、おにいさまへ・ワンダービートS(脚本)と比較。

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マチヤは椅子で窓を破壊し、レミ達を見送る。そして、文句を言うガロフォリに噛みつく。
カイジ2期(脚本)で、大槻に反逆するカイジに繋がるものがある(ほぼ原作通りだが強調が見られる)。

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マチヤとレミは、再会を誓う。再会を誓う熱い友情場面は、蒼天航路(脚本)もインパクトがある(蒼天航路の方は、今生の別れになってしまうが)。

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レミは、ビタリスがいて自分は恵まれていると口にする。
街灯が映るが、ランプの描写は多い。宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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だが、ビタリスは咳で倒れ込んでしまう。彼は何とか鉄柵につかまり、力を振り絞って立ち上がる。
ここも、手による感情表現。ワンナウツグラゼニ(脚本)と比較。

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その後ビタリスは古道具屋で、バイオリンとフルートを売ろうとするが、店主は二束三文の値をつける。
F-エフ-・カイジ2期(脚本)などと同様に、モブに存在感がある。

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レミは楽器に手を置き、売らないで欲しいと涙を流す。 物に優しく触れる手の描写は、よくある。RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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レミの涙に心打たれ、ビタリスは楽器を売るのをやめる。
厳しい寒さの中、ビタリスは、どんなことがあってもレミを守ろうと決意する。
悲しい顛末の前の、キャラ同士のふれあいは、はだしのゲン2(脚本)も印象深い。

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  • まとめ

 非常に悲しいことが起こる直前の回だけあり、重い話なのだが、それでも、子供の子供らしい芝居づけに並々ならぬ拘りが見られる。

 ガロフォリに酷使されている子供達も個性的で、キャラづけもしっかりしている。脚本側になった場合、高屋敷氏はモブに名前をつけることもあるくらい、モブへの愛が深い。

 そして、ガロフォリと、カイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)の大槻が重なってくるのが面白い。どちらも弱者を搾取するシステムを作り上げており、その汚さ・いやらしさがよく出ている。

 そんな「搾取側」に、今回の場合はマチヤとビタリスが、カイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)の場合はカイジが歯向かい、怒りをぶつける。この「怒り」の強調は興味深い。

 高屋敷氏は、子供キャラや中高年キャラの描写が上手いが、それはもしかしたら、「弱者」への愛情が深いからなのかもしれない(それとは別の、個人的な経験や感情などもありそうだが)。

 ベルサイユのばらでは、ストーリーに脚本ほど関われないコンテでの参加だが、パリの貧民街の人々の描写がよくできていた。こちらも「弱者」である。

 脚本の立場になると、はだしのゲン2の被爆者達、MASTERキートンのユーゴ戦争難民達カイジの債務者達など、高屋敷氏は、より具体的で細かい「弱者」の描写をするようになる。

 カイジカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)では、ほぼ原作通りであるが強者と弱者の構図がわかりやすく提示され、カイジはそれに激しく怒り、歯向かっていく構成になっている。

 MASTERキートン(高屋敷氏脚本)ではキートンが、カイジカイジ2期(同氏シリーズ構成・脚本)ではカイジが、虐げられし者の「ヒーロー」として活躍する。その背景には、高屋敷氏の「弱者」への愛、「弱者」を生み出すシステムへの怒りもあるのかもしれない。