カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

太陽の使者鉄人28号28話脚本:ロボットアニメだからこそ問われる「人間の行動」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

「太陽の使者鉄人28号」は、鉄人28号のアニメ第2作。
少年・金田正太郎は、父が遺した鉄人28号と共に、インターポールの一員として悪と戦う。
監督はゴッドマーズ監督の今沢哲男氏。

香港にて、金塊を積んだ輸送船が、カンフーを駆使する巨大ロボット(以下、カンフーロボ)に襲われ、金塊を奪われるという事件が発生。
ルパン三世2ndの高屋敷氏脚本に、香港を舞台にしたものがあり、偶然にも、ロケーションまで似通う。

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カンフーロボ使用者は、香港裏社会の闇将軍と呼ばれる陳リュウトウ。
大塚警部と正太郎は、事件を追うため香港へ赴く。
またも不思議な事に、太陽+航空機の画が他作品と似てくる。画像は今回、元祖天才バカボンルパン三世2nd演出、忍者戦士飛影脚本。

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大塚警部は、10年ほど前に陳を捕まえたことがあった。それを正太郎に自慢する姿が可愛い。
可愛いおじさん描写は、演出でも脚本でも、高屋敷氏の十八番。挙げればキリがないが、1980年版鉄腕アトム脚本と比較。

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香港に着いた正太郎と大塚警部は、香港ICPOの美人捜査官・恵蘭に会う。
ルパン三世2nd脚本の、香港を舞台にした話では春蘭という美女が出て来るが、キャラと名前が若干被る。こういった事も、同氏作品を追う楽しみの一つ。

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恵蘭によれば、陳は香港のスラムに潜伏しているという。
早速、正太郎と大塚警部はスラムに行くが、大塚警部は本場のラーメンが食べたくなったと言い出す(特徴:食いしん坊)。
ルパン三世2nd脚本では、銭形が本場香港のラーメンを実際に食べている。

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そんなお茶目な大塚警部だが、とある男を見つけ、それが陳だとすぐに見破る。特徴の豹変。ルパン三世2nd脚本でも、不二子の変装を見破り、盗聴機を見つけるなど、銭形が切れる男に豹変する事がある。

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逃げる陳を追いかける大塚警部だったが、それは陳の罠だった。
陳は、大塚警部が香港に来るという情報をキャッチし、大塚警部をおびきよせるため、わざと姿を晒していたのだった。敵側も知略を使うのも、高屋敷氏の特徴。

陳は、過去に大塚警部に捕まったことを汚点としており、彼に復讐するつもりでいた。
陳はカンフーの使い手を大塚警部に差し向けるが、大塚警部は得意の柔道で善戦。だが、力尽きてしまう。
ルパン三世2nd脚本でも、カンフー使いの敵が出て来る。

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正太郎と恵蘭が駆けつけるも、大塚警部はカンフーロボにより拐われてしまう。
正太郎と恵蘭は、鉄人でカンフーロボを追跡。大塚警部が発信機を持っていたので、追跡は容易に済む。
発信機ネタは、ルパン三世2ndや1980年版鉄腕アトム脚本でも出る。

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だが発信機は陳にばれて叩き壊され、陳は自身の巨大要塞で鉄人を迎撃する。
鉄人で要塞を粉砕しようとする正太郎だったが、巨大な大砲により、行く手を阻まれる。
そこで恵蘭の提案により、夜を待って要塞に侵入することにする。

敵が発信機を見つけて壊すのも、主人公側が夜を待って敵地に潜入するのも、1980年版鉄腕アトム脚本に出て来るネタ。この2作品は年代も近く、興味深い。

話を戻すが、正太郎と恵蘭は、夜にパラグライダーで要塞に潜入。
恵蘭は見事なカンフー技で雑魚を次々と倒す。ルパン三世2nd脚本の、香港を舞台にした話でも、春蘭が見事なカンフー技を披露している。中身は男だが、らんま脚本のらんまも、このカテゴリに入るかも。 

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正太郎と恵蘭は、巨大大砲にありったけの爆薬を仕掛け、発射と同時に自爆するようにする。
そして、正太郎達は大塚警部の救出にも成功。
更に、正太郎のコールで向かってくる鉄人を狙おうとした巨大大砲も、正太郎達が仕掛けた爆薬により大爆発を起こす。

崩れ行く要塞から、正太郎達は鉄人で脱出。要塞は跡形もなく粉砕される。
この作戦や他作品を見るに、高屋敷氏のロボットアニメでの仕事では、ロボットばかりに頼るのではなく、人間も知恵と体を使って戦う事を大事にしている感じがする。

一件落着かと思いきや、陳がカンフーロボを駆り、最後の戦いを挑んでくる。
カンフーロボはヌンチャクを使ってくるのだが、ルパン三世2nd脚本でもヌンチャクが出て来るし、らんま脚本でも、らんまが棍棒をヌンチャクのように扱う。 

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鉄人はヌンチャクを粉砕するが、カンフーロボは、ブーメランのような十字剣を使ってくる。
これも、らんま脚本で(原作通りだが)小太刀が使う、カミソリフラフープと被ってきて面白い。

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鉄人は十字剣に苦戦するが、恵蘭は、肉を切らせて骨を断つ作戦で、鉄人を突っ込ませようと提案。正太郎はその提案を受け入れ、鉄人を突っ込ませる。
傷付きながらも、鉄人は十字剣をキャッチし、それを使いカンフーロボを一刀両断する。

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正太郎達は、勝利を喜び合う。
大塚警部は腹がへったのでラーメンを食べたいと言い、3人は笑い出す。
またも「脚本」なのに不思議なことだが、演出時代と同じく、リアクションが可愛い。ルパン三世2nd・忍者戦士飛影カイジ2期脚本と比較。

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正太郎達は笑いながら、朝日を迎えるのだった(特徴:重要キャラとしての太陽)。はだしのゲン2脚本と比較。

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  • まとめ

前述した通り、香港が舞台ということで、ルパン三世2nd脚本の、香港を舞台にした話(43話)と多いに被る。
ただ、ルパン三世の方では、ルパンが報われず、お宝もゲットできないのだが、今回は正太郎達の勝利で終わり、作戦も痛快なもの。

ルパン三世2nd43話脚本は、あまりにルパンが報われないので特集を見送ってきたが、今回を見て、ルパン三世2nd43話を見ておいて良かったと思った。
もしかしたら、高屋敷氏自体、ルパンのリベンジのつもりで今回の話を書いたのかもしれない。

思えば、同氏作品は、原作付きであろうとオリジナルであろうと、作品を越えたつながりを感じさせることが多い。
特に、家なき子演出のビタリス生存ルートに見えるキートン4話脚本は良い:

MASTERキートン4話脚本:「天」が招く縁 - カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

作品を越えたつながりといえば、おんぶで心を通わせる展開も、1980年版鉄腕アトムはだしのゲン2・RIDEBACKマッドハウス版XMEN脚本で共通しており、感慨深い。(詳細はこちら)

また、ルパン三世・1980年版鉄腕アトム・太陽の使者鉄腕28号は、制作年も被っており、共通項があるのは自然とも言える。
共通項といえば、今回も、1980年版鉄腕アトムも、ロボットアニメなのに人間の活躍の場を用意しているのが興味深い。

1980年版鉄腕アトム脚本では、原作でアトムがやったことを、人間のヒゲオヤジがやったことに改変している場面があったりする。
また、オリジナルの名台詞を(人間の)オリキャラに言わせたりもしている。

こういった所や、今回の話を見るにつけ、ロボットアニメだからこそ、人間の活躍やドラマを意識的にクローズアップしているのではないだろうか。
もともとデビューがジョー1脚本なだけに、人間同士のドラマが得意なのかもしれないが。

とはいえ今回、ロボットの活躍もしっかり描かれ、ロボットアクションの作画も良い。どことなくGガンダムを思わせる。
本シリーズの同氏脚本の以前の回では、鉄人というより、自然の力(火山など)が活躍していたが、今回は鉄人の見せ場がある。

また、それに負けず劣らず、人間によるカンフーアクションの作画も良いし、正太郎達の作戦もうまく描かれており、バランスが取れている。
また、同氏作品によくある、「挫折を経験してからの勝利」も描かれており、カタルシスもある。

今回は、作品を越えてのつながりも楽しかったが、高屋敷氏の「ロボットアニメに対する姿勢」も、ほの見えた回だった。人間も、ロボットも、自然も、悪役も、主人公も、等しく活躍するのが同氏の理想なのかもしれない。