カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

F-エフ-19話脚本:自己を形成するもの

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテ/演出が澤井幸次氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

筑波FJ1600レース(参戦2回目)の予選にて、軍馬は驚異的なタイムを叩き出し、1年前の聖(軍馬のライバル)のコースレコードを破る。調子に乗る軍馬を諌めるタモツ(軍馬の親友で、メカニック)は、人知れず病と闘う聖のスカウトに応えるべきか、密かに迷う。
そして決勝開始前。観戦する聖に対し、軍馬はVサインを送るのだった。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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演出と作画の話になるが、冒頭の、予選開始前の緊張感を表すシーンが異様に凝っている。

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予選に挑む軍馬が太陽を背負う画が出るが、高屋敷氏の担当作には、よく出てくる絵面。グラゼニ脚本、空手バカ一代演出、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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予選の軍馬のラップタイムを見て、チームの皆は驚愕。ここで画面が回るのだが、色々な観点があるような状況でカメラを回転させるのは、高屋敷氏の監督作・演出作によくあった演出なので気になるところ。元祖天才バカボン演出/コンテ/脚本、カイジ2期脚本と比較。

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予選終了後、こんな速いタイムは理屈に合わないとして、タモツ(軍馬の親友で、メカニック)は軍馬に理由を問うが、軍馬は、自分の才能だとしか答えず。アニメオリジナルで、タモツが「教えてくれるまで離さない!」と言うが、「離さない!」的な台詞や抱きつきは、高屋敷氏の担当作に多い。監督作の忍者マン一平と比較。

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軍馬のタイムは、1年前の聖(軍馬のライバル)のコースレコードを破るものだった。これには、雑誌の取材で会場に来ていた聖(軍馬のライバル)も驚く。
驚くモブが「冗談ポイだぜ」と言うが(アニメオリジナル)、ルパン三世2nd脚本にて、ルパンが「冗談ポイよ」と言う場面があり、高屋敷氏の言い回しの癖が出ている。

調子に乗った軍馬は、他のレース参加者に飲み物を配り、(自分の)勝利を祝って乾杯しようと宣言、総スカンを食らう。
タモツは、他の参加者を敵に回してしまった…と軍馬の振る舞いを諌めるも、当の軍馬は、レースが始まったら皆、敵になることに変わりはない、と気にしない。
ここは原作もアニメも、軍馬の幼い一面と、勝負にシビアな一面のギャップが凄い。また、「豹変」は、カイジ脚本・シリーズ構成はじめ、高屋敷氏の得意分野。

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軍馬は更に、確執のある上位ランカー・砂井を挑発。それを受け、砂井は友人のレーサーと共に、軍馬を潰す計画を立てる。

一方、レーサーとメカニックは一心同体であるべきと考えるタモツは、軍馬とのズレに思い悩む(アニメオリジナル)。
一心同体…という精神は、高屋敷氏が演出参加した、ど根性ガエルのピョン吉とひろしを思わせる。

そんなタモツのもとに、ルイ子(聖の恋人)が現れ、(F3レースに向けての)聖の日程表を渡す(アニメオリジナル)。前回、聖が人知れず病と闘っていることを知ってしまったタモツは、軍馬と聖の板挟みになって更に悩む。

軍馬を応援するさゆり(軍馬の住むアパートの大家)は、「(天才だろうが凡人だろうが)最後は自分を信じて行くしかない」と口にする(アニメオリジナル)。ここは、高屋敷氏のポリシー、「自分を見つめ、自分で決めた道を行け」が出ている。

名言を言うお婆ちゃんは、めぞん一刻脚本の、ゆかり(五代の祖母)をはじめ、高屋敷氏担当作に多く出る。

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ちなみに原作では、さゆりはサーキットに来ていない。あしたのジョー2脚本にて、丈の最後の試合を、アニメオリジナルでドヤ街の子供達が見に来ていた事が思い出される。

決勝開始前、岸田(軍馬を慕うインテリ青年)が拾い集めた紙きれにより、軍馬がサーキットに自分用の小さな印をつけていたことが判明。これが、軍馬の驚異的なタイムのカラクリだった(岸田が目印を拾うのは、アニメオリジナル)。

紙きれが、軍馬のつけた目印だと当てたタモツに、軍馬は「マルッ!」と答える。この反応はアニメオリジナルで、監督作忍者マン一平(脚本・コンテも担当した回)にて、徳川先生が「二重マル~」と言う場面とシンクロ。

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印をつけるのは、他のレーサーもやる事があり、チームの皆は「脳みそはあるんだ」(アニメオリジナル台詞)と感心。ここも、監督作忍者マン一平(脚本・コンテも担当した回)にて、「脳みそあるのかしら」というフレーズがあり、それと重なる。

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タモツは、観客席にいる聖とルイ子に気付き、軍馬もまた、それに気付く。
そして、またしても太陽が意味深に映る。(いずれもアニメオリジナル)。
太陽は高屋敷氏担当作に、実に多く「出演」。らんま脚本、家なき子演出、蒼天航路脚本と比較。

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聖は雑誌の記者に対し、マシンの性能を引き出した者が勝つ、と答える。
ところで、観客の中にキャッツアイの瞳がいる(下記画像の右が本家)。

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キャッツアイは、高屋敷氏が数本脚本を書いており、ノベライズも担当していて、奇跡的な縁を感じる。

軍馬は聖に向かい、Vサインを送る(アニメオリジナル)。あしたのジョー2脚本にて、ホセ(丈のライバル)が報道陣にVサインで答える場面があり、それと重なる。
また、ルパン三世2nd演出/コンテ回にも、銭形がVサインをする場面がある。

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様々な思いが交錯する中、決勝が開始されるのだった。

  • まとめ

とにかく終盤の、聖にVサインを送る軍馬(アニメオリジナル)が印象深い。高屋敷氏の、あしたのジョー2(最終回を含む、脚本参加)への強い思い入れが感じられる。あしたのジョー2以降の高屋敷氏の担当作には、あしたのジョーのオマージュが数多く見られ、そこも面白い。

そして注目したいのは、さゆりのオリジナル台詞「最後は自分を信じて行くしかない」。「自分とは何かを見つめ、自分で決めた道を行け」は、カイジのシリーズ構成/脚本を含め、高屋敷氏が多くの作品で発するメッセージ。ここでも、それが直球で出ており、原作/オリジナル問わず、あらゆる作品にて自分のテーマを強く押し出す、同氏の姿勢が窺える。

それと関連するが、勝負(死闘)が始まれば周りは皆、敵になるのだから、どんなに憎まれようが構わないという軍馬の考えもまた、「自分で」考えたこと。

グラゼニ1期(シリーズ構成・全話脚本)最終回でも、「好きで選んだ道」という言葉が強調されており、自分で選んだ道を貫ければ上等…という高屋敷氏のポリシーが見られる。

こう見ていくと、「自分」という単語が重要なキーになっていることに気付く。
高屋敷氏は、「自分」を形成する「物」もクローズアップし、よく映す。例えば下記画像はグラゼニ(脚本)の一場面だが、ここでは、「年棒を気にするプロ野球投手」である夏之介を表す物として、印象深く映されている。

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そうなると、高屋敷氏の大きな特徴である、魂を持つような「物」のアップ・間や、鏡演出が多用される理由の一つは、「自己を形成する/客観的に見ているもの」だから、かもしれない。
本作にもそれは出ており、12話の下記場面などが挙げられる。

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この観点から見ていくと、あしたのジョー2最終回ラストで意味深に映るグローブ、本作の、軍馬のヘルメットやマシンなども、自己を形成する「物」であり、かつまた、持ち主から与えられた「魂」を持つものとして描かれているとも考えられる。
今回の、この場面も然り。

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本作はレースものであり、マシンには「魂」がある。そういった面も高屋敷氏には合っている…というか、同氏が着目し、ピックアップしている箇所ではないだろうか。丁度、グラゼニ1期最終回(高屋敷氏脚本)を見たばかりなので、益々そう思う。

その証拠に、グラゼニ1期最終回(脚本)では、夏之介は「僕には、野球しかありませんから」とボールを見つめる。

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F-エフ-では今後、こういった側面について、どういった描き方をされるのか興味深いし、楽しみである。