カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

『あしたのジョー2』30話脚本:「好み」の有効活用

アニメ『あしたのジョー2』は、高森朝雄梶原一騎)氏原作、ちばてつや氏画の漫画をアニメ化した作品(第2作)。風来坊の青年・矢吹丈がボクシングに魂を燃やし尽くす様を描く。監督は出崎統氏。

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本記事を含む、当ブログの『あしたのジョー2』に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%82%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC2

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  • 今回の話:

コンテ:出崎統監督、演出:竹内啓雄氏・大賀俊二氏、脚本:高屋敷英夫氏。

ハワイで、東洋太平洋タイトルを防衛した丈。その地で、世界王者のホセと接する。

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舞台はハワイ。開幕、(ダンスショーでの)火が映る。意味深な火の「間」は頻出。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ベルサイユのばら(コンテ)、家なき子(演出)と比較。

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東洋太平洋タイトルの初防衛に成功した丈は、レストランのファイヤーダンスショーを見ながら試合を振り返る。エキゾチックな場面を印象づけるのは、おにいさまへ…(脚本)、空手バカ一代(演出)にも見られた。いずれも監督は出崎統氏(空手バカ一代は岡部英二氏と共同)。

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ダンスショーを見ていた葉子(白木ジム新会長)と丈、段平(丈の属するジムの会長)だったが、葉子は丈を散歩に誘う。海辺までドライブして語らうのは、F-エフ-(脚本)のアニメオリジナル回にも見られた。

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丈は砂浜の砂をいじりながら、ホセ(バンタム級世界王者)と葉子が進めているというビジネスについて、葉子に問う。
手による感情表現は頻出。おにいさまへ…ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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ホセとのビジネスについて、葉子は詳しくは語らず。その後、丈は葉子の車を無茶苦茶に運転して遊ぶ。丈と葉子は素直に笑い合う(アニメオリジナル)。F-エフ-(脚本)のアニメオリジナル回でも、軍馬とユキ(ヒロインの一人)が無邪気に遊ぶ場面がある。

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一方、ホセは射撃を楽しむ(アニメオリジナル)。射撃場面は、アカギ(脚本)のイメージ場面やキャッツアイ(脚本)にも出てくる。

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丈はプールで泳ぎながら(原作ではシャワー)、ホセとはどういう人間なのか考える。ルパン三世2nd(演出/コンテ)のプール場面と重なるものがある。あと、出崎統監督はプール演出が巧みなので、それを活かしているのが感じられる。

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そこへ、ジャーナリストの須賀がやってくる。信号が映るが、意味深な信号描写は色々な作品に見られる。RIDEBACKグラゼニ(脚本)と比較。

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須賀は、丈がホセのことを考えているのをズバリ当て、ホセの動向を語る。須賀はアニメオリジナルキャラ。アニメオリジナルでジャーナリストを活躍させる展開は、RIDEBACK(脚本・シリーズ構成陣)でも目を引く。

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須賀に連れられ、ホセのいる乗馬クラブを訪れた丈は、馬での競争をホセに持ちかけ、ホセもそれに応じる(アニメオリジナル)。乗馬場面は、キャッツアイ・おにいさまへ…(脚本)などにもある。出崎統監督ともども、高屋敷氏は馬好きなのかもしれない。

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勝負はホセの勝ち。ホセは、勝負の途中で落ちた丈の帽子を拾って、丈に投げてよこす。手から手へのコミュニケーションは多い。MASTERキートン・F-エフ-(脚本)と比較。

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丈は須賀を通して、カーロス(丈の好敵手)をコケにするようなポスターについてホセに抗議。ホセは、プロモーターが勝手にした事だと弁明する。その後、須賀に感想を問われた丈は微笑する。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)ほか、原作に無い微笑は印象深い。

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その後、ホセの定期検診に付き合った葉子は、キニスキー博士に会う。彼は、パンチドランカーについて書いた自著を葉子に渡す。原作だとパンチドランカーの長い説明が一気に入るが、アニメは小出しで、テンポがいい。脚本技量が感じられる。

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須賀と共に夕陽を眺めながら、丈は、ホセと本気で闘える日が来ることを望む。
夕陽を眺めながら語るのが、宝島(演出)と重なる。

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その夜、葉子は、ホセの日本での試合の独占契約をホセと結んだこと、ホセの相手の第一候補が丈であることを丈に告げるのだった。巨大な像が映るが、像による「間」は多い。空手バカ一代(演出)、ストロベリーパニック(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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  • まとめ

前半の、海辺でのデートシーンのセルフオマージュが、F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)のアニメオリジナル回(7話)に見られる。高屋敷氏的に気に入っているのかもしれない。

以前書いた、F-エフ-7話についてはこちら:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/07/01/140728

また、「火」の意味深描写が続くのも興味深い。高屋敷氏の「火」へのこだわりは強く、まんが世界昔ばなしでは、いかにして人が火を使えるようになったかという話の演出/コンテをしているほどである。

高屋敷氏が演出/コンテを担当した、まんが世界昔ばなしの「火」にまつわる話について、以前書いたブログ記事:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2020/05/24/135518

あと、アニメオリジナルキャラである須賀を上手く動かす技術は、RIDEBACK(脚本・シリーズ構成陣)にも使われている(依田というアニメオリジナルのジャーナリストキャラがいる)。高屋敷氏は、記者という立場のキャラが好きなのかもしれない。

好きといえば、出崎統監督も、高屋敷氏も、馬が好きなのが窺える。いくら好きでも多少強引な気がするが、入れるならここ(今回)しかないといった気合が感じられる。

今回の、馬での競争シーンは、後にレースもののF-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)や、モータースポーツ要素があるRIDEBACK(脚本・シリーズ構成陣)にも活かされており、時代を追って比較するのも面白い。

あと今回は、ホセという人間を探る側面があるが、キャラの掘り下げは高屋敷氏の得意分野。1話内に、ホセの人となりや生活、人柄がよくまとまっている。また、原作よりホセが紳士的であるというアレンジも入っている。

ホセという人間を間近に見ることで、丈の闘志も静かに燃え、ファイヤーダンスショーの「火」と重なる、終盤の暗喩表現も上手い。「火」の描写に長年こだわってきた高屋敷氏のこだわりが感じられる。

こうして見ると今回は、高屋敷氏の好きなもの(火、記者、馬、夕陽など)で構成されている。しかしながら、ただ好きなものを羅列するのではなく、意味・意義のある構成になっており、やはりその技術に感心させられる。